アメリカ合衆国の特徴;"In this country, changes are always drastic !"からの対比で想うこと
今朝の日経新聞を読んで想い出したのは、アメリカ合衆国という国の特徴。
二大政党が大統領という最高権力を奪い合う。もちろん、議会でどちらが多数派かも重要だが、大統領は議会で可決された法案の拒否権も持つ。
大統領選挙において、民主党の候補者は(かなり極端にも思える)リベラル派の意向を無視できず、一方で共和党の候補者は(こちらも極端に感じる)保守派に逆らえば予備選で勝てないため、近年、両者はますます両極化した対立の構図になっている。
2009年に米国の大学を訪ね、材料工学系の先生たちと意見を交わした時のこと、超音波発信素子材料の開発を行っていた先生たちが嘆いていた。
この素子は、高周波電圧を加えると振動し、また、振動を受信することができるため、潜水艦用の超音波ソナーやセンサー、そして医療用の超音波診断装置に応用されている。
8年間続いた共和党のジョージ・ブッシュから民主党のバラク・オバマ政権に代わったところだった。
オバマ大統領は、軍事予算を削減し、蓄電技術やスマート送電網など、新たなエネルギー政策に大きくシフトすることを宣言した。
これに伴い、国防予算から安定的に資金を得ていたいくつかのプロジェクトが終了する、ということだった。
アメリカの工学系大学院生の多くは、政府系技術開発プロジェクトの予算から給料を得て研究を行っている。研究予算が突然打ち切られれば、教授たちは研究テーマの大転換を行うか、あるいはポスドク研究員や大学院生のクビを切らねばならない。
国家政策の大転換は、大学や国研の研究者にとって死活問題となる。
"In this country, changes are always drastic !"
「この国では、『変化』は常に『急激』に起こる!」
そんな状況である女性教授が私に言った、悲鳴にも似た言葉がこれだった。
大統領は行政府の長であり、就任と同時に、各省の上層部も入れ替える。特に重要なのは、『大臣』にあたる各省の長官に『プロ』を据えることだ。ここで『プロ』というのは、マネージメントのプロか、その分野の専門家、あるいはその両方を兼ねているような人物である。
大統領の意向を踏まえ、もちろん『プロ』と議論を尽くし、『変える』と決めた政策は徹底的に変えるのだろう。
予算を大幅に増やす領域もあれば、削減する領域もある。
これは太平洋をはさんだ某島国のシステムと対照的である。
その国では、
① 政権与党の顔ぶれがほとんど変わらない上、
② 各省のトップ(大臣)は与党国会議員を順繰りに充てる。
③ 与党国会議員は全国で万遍なく票を得て当選を続けるため、どの政策にも予算をばらまこうとする結果、予算を増やす領域はあるが、削減する領域はめったにない。
④ その結果、とてつもない赤字財政に陥っている。
①が問題だから、政権交代が必要だ、という人がいる。
でも、野党が政権を握った時も、②は変わらず、『変化』はあまり検知できなかった。
『素人』大臣はその国の強固な官僚システムに従うしかなく、官僚システムは『変化』を極端に嫌う。
『変化』しようとすれば、
《枯れ木に水をやれなくなる》からだ。
枯れ木に水をやり続けることで『票』を得る議員が一定数おり、枯れ木となった組織に天下りすることで退官後の収入を確保する官僚が一定数いる。
その島国では、先の言葉をこう言い換えるといいかもしれない:
"In that country, changes are always sluggish"
「その国では、『変化』はいつも『緩慢』である」
(あるいは…起こらない?)
『緩慢』自体が悪いのではなく、『緩慢』の結果、どうなっているのか、が問題なのでしょうね。
誤解があるといけないので付け加えると、アメリカ合衆国のシステムが対岸の島国のシステムより『優れている』と思っているわけではありません。
互いに『特徴』があり、『問題点』があります。
ただ、80年近く続いた島国のシステムを変えていく時期に来ているのではないかな、と思うのです。
おそらく、ほとんどの人が、
「このままでは立ちいかない」
と思っているはずです。