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「ワールドシリーズ進出に王手!」に見る『将棋用語』

この週末、将棋の最高峰『竜王戦七番勝負』第二局が福井県あわら温泉で開催され、藤井聡竜王と佐々木勇気八段が対局しています。
ABEMAでこのタイトル戦を見ているのですが、二日制の持ち時間各8時間のため、中盤の辺りは長考が続き、1時間越えも普通、時に2時間近くにもなる。
「ねえ、さっきから全然進んでいないじゃない、見たい番組あるから変えていいでしょ?」
「……はい」
素直に応じて、大画面ではなくノートPCで戦況を追います。

ところで一方、ワールドシリーズ進出をかけたMLBアメリカンリーグのドジャース対メッツ7連戦も観戦しています。
10/18にドジャースが勝利して3-1となった時、日本のニュースタイトルに躍ったのが、

ドジャース、ワールドシリーズ進出に王手!

おお、(見慣れているけど、改めて)将棋用語『王手』が自然に使われている!
(もちろん、米国では使われていないけど……)

この他、将棋と無関係な場面で使われる将棋用語には、
・成金
・1枚上手
・高飛車
・待ったなし

なんてのがあります。
プロ棋士はもっと頻繁に(一般人にはレアなものを含め)日常生活に将棋用語を使うと聴く。
例えば、
「このお店では生姜焼きが『定跡』でしょう」
── え? 『定石』の間違いじゃないかって?
発音は同じですが、『定石』は囲碁用語です。

でも、私が最も好きな言葉は、

・一局の将棋

これは、
『将棋で作戦の分岐点にさしかかり、どちらの手を指したとしても大きく有利不利が変わるわけではないけれど、もう後戻りできない道筋を辿る、それぞれまったく別の戦い方になる』
そんな時に、解説者が、
「どちらの手を指しても、それはそれで『一局の将棋』となります」
なんて言ったりします。
つまり、一方の道を選べば、もう片方の道をたどることはできないのです。

といっても将棋はゲームですから、今日の対局で作戦Aを採用し、明日の対局では作戦Bで行く、なんてことは可能なわけです。

でも、人生はそうはいかない。
大きな岐路に立ち、どちらの道を選んでも『一局の将棋』だけれど、どちらかを選ばなくてはならない ── ということは何度かある。
職業だったり、恋愛だったり。

そんな時、一応考えはするけれども、
「これはこれで『一局の将棋』」
とつぶやき、最後は直観的にどちらかに決める。

亡くなった米長よねなが邦雄永世棋聖は数々の名言を残していますが、その中に、

大事なことほど直感で決めなさい。
直観は過去の経験のエキスである。

があります。

決断をしなくてはならない時、どちらかが正しい、と思うと迷いに迷う。でも、
「どちらの道をとっても、それはそれで『一局の将棋』」
と考えると、心が軽くなります。

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