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末っ子の鰯

長男・サバに続いては、末っ子について語ります。
私自身は『長男かつ末っ子』であり、今後少子化が進むと、サバでありイワシでもあるニンゲンが増える一方ですが……。

会社に入って間もない頃、社内報(的なモノ)の編集で一緒だった先輩に連れられ、名古屋の中心部(松阪屋の隣のような一等地)にあったイワシ専門店に行きました。古い日本家屋で、ちょっとした料亭風でしたね。

イワシといえば、子供の頃は1日おきぐらい(は大げさにしても1週間に少なくとも2-3日)の頻度で夕食のおかずにメザシが出た記憶がある。母親がフルタイムで働いていたのでよく買い物に行かされたけれど、市場には魚屋とは別に乾物かんぶつ屋があり、メザシや干物はそちらで買いましたね。

そんな育ちのため、鰯専門店のメニューを見て、その高価なことに驚いた。
先輩は、
「魚というものは、『種類』ではなく、『鮮度』に金を払うものだ」
というようなことを言い、鰯料理のコースを奢ってくれた。
どれも美味しかったが、生の鰯を刺身で食べたのは、それが初めてだったかもしれない ── この小さな魚に対する見識を総入れ替えしなければならないほどの絶品で、価値観の大転換でしたね。

鰯大好き人間に、同居人はしばしば鰯料理を出してくれます。例えば……

生姜煮
梅紫蘇はさみ焼き

子供時代にこれでもかと食べさせられたメザシは、今はほとんど食卓に出ません。いや、メザシも悪くないですよ、でも、固くて歯に引っかかるし……。

日間賀島探検隊が篠島でいただいた絶品!シラス丼もそのほとんどはイワシの稚魚ですね。茹でたてのシラスは調味料いらず、そのままで天然の塩味があって美味かった!

篠島の絶品!釜から上げたてシラス丼!

三重県の答志島で、ボランティアとしてワカメ漁の手伝いをしたことがあります。
島内を歩いていると、シラス干しを見かけます。
漁師さんはチラと見て、
「これはあんまりようないな……」
なんてつぶやくことがある。
「え、どうして?」
── 尋ねると、
「ほれ、銀色のが混じっているやろ? サバ仔や ── 鯖が混じっとるシラスは値が落ちる」
確かに目を凝らすと、『異形』の稚魚が少数 ── 0.5%未満だと思うんだけれど ── 中に混じっている。
「別に食べても問題ないんでしょ?」
「まったく問題ない ── が、商品としては嫌がられるな」

網の中で ── 長男と末っ子の出会いがあったのですね……。

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