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買ったペットは、運転監視役トリケラトプス
このところ、食料品・飲料品を除けば自分の意志で買ったものがほとんどない。過去1年間考えてみても何も浮かばない。雑誌や本も除くが、それすらもあまり買わなくなった。
衣類は家族の勧めに従ったものばかりだし、たぶん1番高い買い物であるゴルフのパターでさえ、グリーン上をあまりに右往左往するので、
「いいかげん、新しいの買い直しなさいよ」
と言われるまま、15年ぶりに買い替えたものだ。
「コト」では消費するが、「モノ」では消費しなくなった(食べモノ、飲みモノは別デス)。
旅に出てもお土産はあまり買わない(地酒、地ビール、地ワインは例外)。
現役時代に海外出張などで現地の置物掛物などを買ってくると、同居人から、
「ゴミを買って帰るな!」
あるいは、
「(冷たく)しょうがない……アンタの書斎に置いてよね」
── で、ただでさえ狭い4畳間はますますゴミ屋敷化……。
そんな私が昨年、自分の意志で購入した(たぶん)唯一のモノが、トリケラトプスである。
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残念ながら(いや、幸いなことに?)本物ではない。
イオンモールの中で閉店したばかりのアパレルショップのスペースを数日間借りて、BOOK-OFFが中古のおもちゃ類を売っていた。
冷やかしで中を歩いていたら、ぬいぐるみの山の中で、私を睨みつけているヤツがいた。
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植物食恐竜トリケラトプスは、トリ=3、ケラス=角、オプス=顔で、顔に3つの角が生えています。
「よし、これを買おう!」
「やめて、やめてよ! そんなの、ダニの巣窟じゃない! どうせすぐに部屋の隅で埃まみれになるだけでしょ!」
(── なぜこいつは、1年にひとつぐらいしかない私の『買いたいモノ』に大反対をするのだろうか?)
「いや、買いたい。買う!買う!Cow!Cow!」
と3歳児のように言い張ると、
「じゃ、百歩譲って、新品を買いなさい。そんなの、既にダニの巣窟になってるよ」
「いやだ! 同じモノがあるとは限らない。これを買う!Cow!」
床を転げ回って手足をバタつかせてもいいのだが、相棒は、
(この人物とは何の関係もありません)
と去って行くだけだろう。
《同じモノがあるとは限らない》
これはまったく正しい判断で、後からアマゾンで『トリケラトプス*ぬいぐるみ』で検索したが、それこそ幼児に迎合したような、軟弱な顔つきの奴らばかりだった。
「じゃ、千歩譲って、帰ったらすぐに洗剤でしっかり洗いなさい! いいね?」
さて、家に帰って洗ったかといえば、まったく洗っていない。洗う必要なんてないのだ。
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そもそも、ぬいぐるみが忘れられて部屋の隅で埃まみれになるのは、『役割』が与えられてないからである。
私がトプスくん(と名付けた)に命じたのは、運転の監視役である。
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運転席からの視界を遮ることはない
彼は、運転席の私を監視し、常に安全運転を促している。
窓越しだがいくらかの紫外線が常に当たるので、ダニがいたとしても死滅するはずだ。
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うーむ、いい買い物をした!
さて、最後になりましたが、こんなに揉めた買い物、さぞかし値段は……とご心配の向きもあるでしょう。
消費税込みで、
……いや、驚かれ、というより、呆れられるので、非公開とします。