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イタコの《ITACO》(SS;2,800文字/エレクトロニック・ショート・ショート・カタログ)

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 今日は高校の入学式だった。式の後、いくつかのクラブに勧誘されたけど、その中に『心霊研究会』という、とっても怪しげなのがあった。
 アタシはおばあちゃんを思い出し、
「たいせつな人の霊を呼び出します」
 と書かれた、なんだか不気味なポスターが貼ってある部室に行ってみた。
 そこには白い和服を着たきつい化粧の上級生がいて、クラスと名前を書かされた後、
「誰を呼び出しましょうか?」
 と尋ねてきた。
「去年の暮れに亡くなった、アタシのおばあちゃん、お願いします」
 すると、部室の明かりが消え、その女の人(だと思う)がうなり始めた。間もなく、うなり声はしゃがれ声に変わった。
「マァ、サァ、ミィ、……おばあちゃん、だ、よ」
( ── バカみたい)
 アタシは思った。おばあちゃんは亡くなる直前まで地域のコーラス・グループでソプラノを担当していたくらいで、普段から透き通った高音だった。
「みん、な、達者、で、暮らして、いる、かい?」
「うん。でも、おばあちゃんが死んでから、おじいちゃんが元気無くて、困ってるのよ。外出もほとんどしなくって、おばあちゃんの写真ばかり見てるの」
「そうかい……そりゃあ困ったねえ。あたしゃ、極楽で幸せにやってるから、おじいさんに元気出すようにって、マサミから言ってくれないかねえ」
 それで終わりだった。アタシはサービスで、
「キャーッ! すっごーい!」
 と感激したふりをしてから家に帰った。

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