いけない指先(SS;2,000文字/エレクトロニック・ショート・ショート・カタログ)
ある夜のことである。
眠りにつこうとした私は、いつものように右手の人差し指を付け根から外し、充電プラグを差し込もうとして、ふと思いたった。
隣には、結婚して15年の妻が、地響きのようないびきをあげている。このところ、私より必ず早く寝て、起床は規則正しく遅いという習慣を身に付けた女である。蒸し暑さの中、大の字になり、パジャマの前をはだけた、実に豪快な寝姿を見て思わずため息が出た。
妻の胸の上に人差し指を置いてみた。右手の中指以下を曲げると、汗でぬれた肌の上で人差し指も同期して曲がった。
「なるほど、こんな使い方もあったのか」
右手の指を屈伸すると、離れた人差し指は芋虫のようにもぞもぞと動き、胸の谷間をゆっくりと這い始めた。
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