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居酒屋の昔話にかつての感性まで掘り起こされたこと

1週間前、ジジイ4人の飲み会がありました。共通項は大学入学時に同じクラスだったことですが、うちひとりは2か月ほどで退学し、米国 Ivy league の名門 Brown大に留学しました。他のふたりはまったくの偶然ながら私が卒業した高校の1年先輩でした。彼らは浪人したため、追いついた、というわけです(その後、私だけ留年したため、卒業は結局、1年遅れましたが……)。

4人のうち3人が同じ高校であり、かつ、Brown大に行った1人は紆余曲折の末、名古屋で教授をしていたので、
「その高校の卒業生、ウチの大学にけっこういるよ」
なんてことから、校風の話になりました。

今月初めの記事で触れた『ストリーキング事件』について、想い出しついでに話すと、先輩二人は卒業した翌年なので当然知らず、
「まあ、あの学校ならありうるよな……」
そんな反応でした。

── というのは『前振り』で(悪い癖です)、本題は『亡くなった同級生』です。
最近病死した友のことから遡り、
「そういえば、高校時代にもひとり……」
と先輩ふたりが顔を見合わせました。
「あ、それ、たぶん……僕も憶えていますよ」
「あ、そう? 少し派手な感じの女の子だったなあ……いろいろ悩んでいたらしくて……」
「飛び降りたんだよね……」
「……ああ……」
「え、タニくん、1学年下なのにその子のこと、知ってたの?」
と尋ねられ、
「いや、ほとんど何も知りません……ただ、今思い出したんです ──『翼をください』── を
「……ああ、あれか……」

それは、たぶん高校1年の文化祭だったと思う。体育館のステージでバンド演奏や演劇を行う。クラブ活動が優先で、空いた時間はあらかじめエントリーしたグループの発表に割り当てられる。

その時、舞台には50人強、ひとクラスよりやや多いくらいの生徒が上がった。2年生だった。
そして、リーダーらしき人が、若くして命を絶ったクラスメイトについてきわめて簡明に語った。
内容は憶えていないが、その学校らしく、繰り言めいたことは一切なく、彼女はいろいろ考えた末にその道を選んだのだろうこと、今はもういない彼女のためにそのひとが好きだった歌をみんなで歌う ── それだけだった。

そして、ピアノの伴奏で合唱が始まった。

壇上で歌いながら、泣いている女生徒もいた。

当時の私は、自分は感傷的な人間ではない、と信じて生きていたけれど、観客席で目が絞れるような状態になった ── ことを想い出した ── 彼女のことを何も知らないのに。

過去の事実を想い出すことはある。
でも、どう感じたかを想い出すことは ── これほど強くは ── あまりない。

おそらく、先輩ふたりもそうだったろう、と思う。

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