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う 『うどん』
本当にベタな話で恐縮だが、香川の製麺所のうどんを初めて食べたときは世界が変わった。マジか、この食べもの、って思った。でも、あのブームがうどんの多様性を奪ったことも確かで、よく言われるように、「コシ信仰」みたいなものによって切り捨てられたうどんの側面があるのも確か。稲庭うどんには稲庭うどんの、きしめんにはきしめんの、伊勢うどんには伊勢うどんの良さがあるのだ。デンプンを固め損ねたかのような太い棒が、赤味噌にどっぷり浸かっている伊勢うどんを三重へのツーリングで初めて食べたときは度肝を抜かれたが、あれはあれで中毒性がある。あれはたぶん「中和するためのネギを食べる食べもの」だと僕は思っている。解釈が間違っているかもしれないが。
家で食べるうどんで最強のものは、カレーうどんだと思っている。僕はカレーうどんを作るのが上手い。子どもの食べものの好みの都合で、我が家でつくる機会は減ったが、がっつりとカレーを作った翌日に僕がつくるカレーうどんは店で提供されるそれに負けないと密かに思っている。特に気の利いたことをしているのではないけれど、作り方をここに開陳しよう。まず、材料として揚げ玉、七味(または一味)、刻みネギ(細ネギより太ネギがベター)がマストだ。他は卵でもお揚げでも、適当にアレンジしてくれれば良い。
1.冷凍さぬきうどんをゆでる
2.別でお湯を沸かしておく
3.めんつゆ:お湯を1:5で割っておく
4.うどんを入れる
5.昨日のカレーをぶっかける
6.揚げ玉と刻みネギを惜しみなく載せる
7.七味をかけて食らう
マジでシンプルだ。
たぶんクックパッドで一位に出てくるレシピとさほど変わらない。大上段から振りかぶったらへなちょこカーブだったみたいな話だ。特大ホームランで返される。でも、僕は思うのだ。時々、カレーうどんを店で頼むと、うどんの上に直接カレーがかかってるだけのときがある。それは違うだろう、と。カレーうどんは出汁でしょう、と。出汁とカレーと揚げ玉が渾然一体となり、それをネギの清涼感で中和するのが良いんでしょう、と。これじゃ、「カレーライス」のライスを本当にうどんにしただけじゃないか、と。カレーうどんに対する解釈が間違ってる、と。だから僕は自分でつくるカレーうどんが一番安心して食べられるのだ。やったことない人はぜひ、試してみてほしい。
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