ひ 「飛行機」
飛行機が好きか嫌いかというと、愛憎半ばする。飛行機に乗ること自体はわりと好きだ。遠くに行けるというワクワク。機内で何の本を読もうか、どんな映画を見ようか、機内サービスをどうしようか、そんなことを考えるのは楽しいし、足が異様に浮腫むことを除けば不満はない。でも飛行機に乗るということは、あのイミグレーションを通り、あの手荷物検査を通過するということを意味する。
座席は常にエコノミークラス、そしてANAやJALやスターアライアンスのプレミアムメンバーでもない僕は、優先ゲートから搭乗することもないしプレミアムラウンジも利用できない。手荷物を検査しては列に並び、列に並んでは手荷物を検査し、その間にインド人やフィリピン人やインド人やインド人に囲まれながらシートに座って何かを待つ。それを何度も繰り返していると、だんだん頭がぼーっとしてきて、あれ、ここってどこだっけ、みたいな気持ちになってくる。
2001年9月11日以前の世界って、もうちょっと気軽に飛行機に乗れたはずなんだけどな。あれから23年間、数々のテロやエボラやSARSやコロナや新型インフルを経て、いろんな理由で飛行機に乗るための、手間という意味の「コスト」はどんどん高くなり下がることを知らない。このまま「ゲート」が増え続けると22世紀の人類は飛行機に乗っている時間より検査している時間の方が長くなっているかもしれない。「相互不信社会のコスト」は、いつも市井の小市民が支払うことになる。
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