意味のないところに意味は宿る
その日は風がぬるくて、ただ走ってるだけで気持ち良かった。
枯葉がたくさん舞ったその時、僕はなぜか思った。
僕はここで、3人でかけっこするために生まれてきたんじゃないかって。
――――アルミン・アルレルト(『進撃の巨人』第137話)
▼▼▼『進撃の巨人』3周目▼▼▼
『進撃の巨人』のアニメーションを、
第一話から最終話まで、
シーズン1からシーズン7までを、
Amazonプライムで全部見た。
それも、3周目だ。
すべてを三回、繰り返し観た。
筋トレ前のウォーミングアップでエアロバイクを漕ぎながら、
寝る前に寝転がってタブレットで。
いろいろやりながら三周目を観た。
三周目にもいろいろな発見があった。
凄い物語だ。
叙事詩(サーガ)だ。
『進撃の巨人』はちなみに、
円環構造になっている。
エレンが泣きながら目を覚まし、
丘の上の木の下で、
「なんだか長い夢を見てたみたいだ」
とミカサに言う。
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その「長い夢」とは、
「未来の記憶」を持つ進撃の巨人のエレンが、
王家のヒストリア・レイスと接触したことで、
「人類の8割が地鳴らしで死ぬ以外に
巨人を駆逐することができない」
という、始祖ユミルの「決定論的未来」に閉じ込められ、
過去も未来も現在も「ひとつ」であるところの、
「道」で見た記憶だと思われる。
少年のエレンは、
自分がもたらす壁外人類8割の虐殺と、
その結果としての巨人の消滅、
そしてそれを完遂するのが、
なぜか分からないがユミルに選ばれたミカサであり、
それゆえにミカサに殺される最期を夢で見た。
その夢を見たゆえにエレンは泣いている。
それが第1話。
『二千年後の君へ』という第一話のタイトルは、
二千年間の「呪い」から解放してくれた、
「自由の奴隷」少年エレンと、
それを完遂してくれるミカサに対して、
始祖ユミルが向けた言葉だ。
これが最終話で明かされる。
そういう「円環構造」が進撃の巨人だ。
丘の上ではじまり、
丘の上で終わる。
エレンが観た夢は、
中国の故事「胡蝶の夢」にも似ていて、
僕たちが『進撃の巨人』という長編作品を観るとき、
それは第一話でエレンが見た長い夢を見ているのだ。
僕たちはエレンと同じように、
丘の上で目覚めた瞬間、
つまり全話を見終わったとき、
なぜか分からないが涙を流している。
あの丘の上で、あのマフラーを巻いた、
あのミカサが目の前にいるのだ。
涙を流すに決まってるじゃないか。
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