ぬ 「塗り絵」
塗り絵が好きだった。小学校就学前か低学年か忘れたけれど、僕は一時期、塗り絵に熱中した。主にキン肉マンの塗り絵をひたすら塗っていた。キン肉マン、テリーマン、ウォーズマン、ロビンマスク、バッファローマン。昔は肌色と呼ばれていた色、つまりペールオレンジの色鉛筆が、いつもすぐに短くなった。キン肉マンなんて肌色もといペールオレンジと、唇の赤(少量)でほぼ完結しますからね。
僕はキン肉マンの絵を模写することも大好きで、最初は「うつし紙」と言われる、透けて上からなぞれる紙を使って塗り絵をなぞっていたのだけど、だんだん白紙と塗り絵を並べて白紙にキン肉マンを模写するようになっていった。けっこう上手に書けるようになったけれど、その能力がいったい何に生かされてきたかはまったく分からない。獣医師の時代は結構病理標本や骨格をスケッチすることがあったのでもしかしたら役に立ったかもしれないけど、今はそんなことは皆無だ。
娘を授かり、塗り絵を30年ぶりぐらいに眺めている。娘はアンパンマンに始まり、ディズニープリンセスとかちいかわとか、すみっこぐらしとか、そんな塗り絵を「無の表情」で塗っている。ああ、そうか。塗り絵って安心するんだ。ある種の精神安定剤になっていたのかもしれない。僕はHSP傾向があるので脳がすぐに消耗する。特に社交による消耗が激しい。そんなとき塗り絵は「アクティブ・レスト(積極的休養)」みたいな感じで、ただ何もしない以上に脳の特定の分野を沈静化してくれていたのかもしれない。
子どもを眺めることで僕は自己発見をする。じゃあ、今の僕にとってのアクティブレストって何だろう。塗り絵はしていない。ジグソーパズルとかクロスワードパズルをする趣味はないし、スマホゲームもしない。スマホ持ってないし。やはり筋トレということになるんだろうな。僕は時々「無の表情」で筋トレをしている。
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