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ミネルヴァ映画会 2024年4月26日金曜日開催 解説③





怪物


鑑賞した日:2023年6月9日 2024年3月14日 家でもう一度鑑賞
鑑賞した方法:豊橋のユナイテッドシネマで鑑賞(1900円)

監督:是枝裕和
主演:安藤サクラ、瑛太
公開年・国:2023年(日本)
リンク:
https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/

▼140文字ブリーフィング:

昨年の6月に、豊橋の映画館で見ました。
そのときのことは去年、note に書きました。

▼参考記事:映画『怪物』を見た
https://note.com/shunjinnai/n/n3f18ff1c432e

この映画は、昨年の「陣内が観た映画年間ベスト10」の、
第1位にもしました。

▼note有料音源:『プレミアム放送 2023年版 陣内が今年観た映画ベスト10』
https://note.com/shunjinnai/n/n84cdef28b40e

そんな『怪物』です。
私は是枝監督がとても好きで、
多分これまでの映画はすべて観ています。
去年までは、私の中の、「ベスト是枝映画」は、

1位 万引き家族
2位 誰も知らない
3位.そして父になる
4位 三度目の殺人
5位 空気人形

ぐらいな感じだったのですが、
『怪物』が今は1位、と変わりました。

この映画はとても多義的で、
テーマがいくつもあります。

1.「真実」は複数ある(羅生門エフェクト)
2.家族とは何か(親子関係)
3.現代の学校教育(モンスターペアレント問題など)
4.性的マイノリティをとりまく社会の課題

どの切り口でも面白いと思いますが、
カンヌ映画祭で本作が「クイアパルム賞」を受賞したことを考えると、
「4」を主軸に見るのがもっとも素直な見方になると思います。
多くの人が指摘していましたが、
本作が日本で公開されるにあたり、
「クイア(LGBTQ+を扱った)」という側面が、
ほとんどまったく触れられていなかったのはとても不自然で、
配給会社や広告代理店がそちらに「ミスリード」した、
といわれています。

クイアを前面に打ち出すことが、
興行的に不利に働くと判断されたのでしょうが、
それって、映画をメッセージとして考えたとき、
とても変なことだと思います。
『タイタニック』を、
恋愛映画として宣伝したら売れないから、
「船舶事故と航海技術の映画」として宣伝したとしたら、
それはミスリードというものです。

異性愛の恋愛映画なら真正面からそう宣伝し、
クイア映画はその部分を敢えて隠さねばならない、
という日本のような社会への異議申し立てとして、
「クイアパルム賞」というものがあることを考えると、
日本が非常に倒錯した状況だというのがよく分かります。
(海外では『怪物』は普通に「LGBTQ+の映画」として宣伝されたそうです)
なにせ、昨年の「LGBTQ理解増進法」に、
「差別の禁止」という文言を入れることすら、
保守勢力によって阻止されるような国ですから。
先行きは険しいと言わざるを得ない。

とにかく本作は名作です。
大ヒットドラマを数多手がけた、
脚本家の坂元裕二さんが入ったことが、
大ヒットの理由と多くの人が言っていますが、
確かにそうなんですよね。
是枝監督だけの脚本だと、
ラストはあの展開にならないでしょうから。

とにかく子どもたちの演技が素晴らしいし、
映画として「面白い」。
そして、鋭すぎる批評性。
「怪物だーれだ?」という印象的な台詞があります。
怪物とはスクリーンの前の「社会」と、
その「無理解」だ、
というのがエンドロールでズドンと来る。

『誰も知らない』の頃から、
是枝監督はずっと変わっていない。
社会から忘れられ、辺縁化された、
「寄る辺ない声なき存在」の視点から、
社会をまなざすのです。
そして「問い」を投げかける。

その「問い」が、
願わくば社会を変えると良いのですが。
少なくとも、本作を観た後で、
「LGBT理解増進法なんて必要ない」と言える人は、
よほど読解力が低いか、本物の「怪物」だけではないでしょうか。
(1434文字)



市子


鑑賞した日:2024年3月8日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:戸田彬弘
主演:杉咲花、若葉竜也
公開年・国:2023年(日本)
リンク:
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CVVTQHG4/ref=atv_dp_share_cu_r

▼140文字ブリーフィング:

この映画、マジで凄いです。
ちょっと度肝を抜かれましたね。
日本に推定1万人はいると言われる、
「無国籍者」を扱った映画です。
そういう意味では完全に「社会派」の映画なのですが、
映画としてのエンタテインメント的面白さで、
完全にその社会派的側面を忘れるほど引き込まれました。

そういう意味では是枝映画に通ずるところがある。
とにかく主演の杉咲花さんの演技がとてつもないのと、
「謎」でひっぱるプロットは見事です。

凄い作品でした。

因みになぜ無国籍者が生まれるのか、
ということについて、
本映画のパンフレットにも文献として記載されている、
『無国籍の日本人』という本に詳しいです。

『無国籍の日本人』を読んで私は本当に驚きました。

「民法772条」という、
明治の「イエ制度」「封建的家父長制」に基づく法律が、
戦後にも温存されたことによってこの不合理は起きます。

民法772条はこういうものです。

民法772条(嫡出の推定)
1.妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2.婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消もしくは取り消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

、、、女は男の「持ち物」で、
女性には自己決定権はなく、
男性には妾が認められるが、
女性が貞操を守らないことには「罰」で報いる、
という、おぞましいほどの男尊女卑に基づく法律が、
令和の日本にも温存されています。

不合理な制度によって自らが、
「無国籍児の母」となり、
自らも国会議員として民法772条改正に動きだした、
井戸まさえさんが『無国籍の日本人』に書いているのですが、
この法律を変えたくない、
「いつもの保守勢力」は言います。

曰く「権利とか人権とか言いながら、
 自分たちのわがままを通す人の意見を聞いていると、
 それが『アリの一穴』となって、
 この国の伝統的家族像が崩れちゃう」のだと。

は?

何言ってんの?

いつも思うんですけど、
彼らはいったい、何を守ろうとしているのでしょうか。
国(制度)のために人がいるのか、
人のために国があるのか。
イエス・キリストに学んで来い、と思いますね(マルコ2:27)

とにかく『市子』、
めちゃくちゃ面白いです。
今ならAmazonプライムで無料で、
入っている人は必見です。
(900文字)




カードカウンター


鑑賞した日:2024年3月7日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(500円)

監督:ポール・シュレイダー(プロデューサー:マーティン・スコセッシ)
主演:オスカー・アイザック
公開年・国:2023年(アメリカ)
リンク:
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CK5B16RV/ref=atv_dp_share_cu_r

▼140文字ブリーフィング:

ポール・シュレイダーという監督は、
めちゃくちゃ大御所の監督らしく、
本作は期待して観ました。
とても「ウェルメイド」な映画でした。

出所した犯罪者が計算能力を活かしてカードゲームで荒稼ぎする、
というところから話しは始まります。
「カード・カウンティング」という「裏技」で、
ゲームの勝率を上げることができるのです。

あー、ギャンブル映画ね、
と思ってると、後半はまったく別の映画になっていきます。
「グァンタナモ収容所」のような拷問を、
米軍が組織的にどう「隠蔽」するのか、
ということとこの映画は関係しています。
古今東西、人間の社会は似ていて、
「最も責任がある人」は、
「あまり責任がない人」に、
すべての責任をなすりつけて逃げます。
「とかげの尻尾切り」というやつですね。
今も日本で岸田首相や森喜朗や二階俊博が、
絶賛実施中のやつですね。

これによって切られた「尻尾」が、
「頭」に復讐する、
という風に話しが展開していく。
前半と後半がまったく別の映画になっていくのが、
面白いと感じるのか、
二本の映画に分ければ?と感じるのか、
それは鑑賞者次第かな。
(459文字)




ナワリヌイ


鑑賞した日:2024年3月2日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(500円)

監督:ダニエル・ロアー
主演:アレクセイ・ナワリヌイ、ユリア・ナワリヌイ
公開年・国:2022年(カナダ、ロシア)
リンク:
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8S9HQ9H/ref=atv_dp_share_cu_r

▼140文字ブリーフィング:

アレクセイ・ナワリヌイ殺害のニュースが流れたのは、
たしか2か月ほど前でした。
彼はロシアにおける「反プーチン」の象徴的存在で、
ヒーローでもあります。
本作はドキュメンタリー映画ですが、
彼が何度もプーチンに殺されそうになるところを、
本当に内部から映像に収めています。
信じられないような映像が一杯出てきますが、
ロシア当局が否定する「毒殺未遂の動かぬ証拠」が、
劇中で示されるシーンは鳥肌が立ちました。
今のロシアは天安門の中国と同じで、
人を戦車でせんべいにしても、
止められなくなってるんだというのがよく分かります。
そんな中、口をつぐむ人を、
臆病な小市民の私たちには責められませんが、
しかし、ナワリヌイは真の英雄だと思います。
彼のような人がいたことを世界は忘れてはいけません。
誰もが「心の中のナワリヌイ」を奮い立たせるべきときが、
人生にはあると私は思うからです。
(325文字)


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・5枚限定での販売ですので参加希望の方はお早めに。
 もし決済方法などでnoteでは買えないが参加したい、
 という方は直接メールなどでご連絡いただけますと幸いです。
 STORESでの販売も現在検討中で、
 またはメールでの直接連絡による販売も対応できますので、
 参加したいけど決済などの理由で参加できない、
 という方はご連絡いただけますと幸いです。

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