何も起きない日々を抱きしめる
面白きこともなき世をおもしろく
―――高杉晋作の辞世の句
▼▼▼僕の人生には事件が起きない▼▼▼
僕の人生には事件が起きない。
いや、明日何かの事件に巻き込まれるかもしれないし、
トラックにひかれるかもしれないし、
村上春樹の小説のように妻が失踪するかもしれない。
それはそうなのだけど、
基本的には、人並み外れて平凡な日々を生きている。
会社勤めとかしていれば、
4月には人事異動があるから、
3月ぐらいから皆がソワソワし始め、
「これは確かな筋の情報なんだけど……ヒソヒソ……」
とか、「事情通」が活動し始める。
もっと本業で活動すれば良いのに、
と思いながらそういった人々を横目に見る。
4月1日に辞令が出て、新しい上司がイスに座る。
新人がやってきて、新人の風を吹かせる。
「今の若者のLINEって、こういう顔文字とか使わないらしいよ」
取引先の新しい担当が顔見せの挨拶に来る。
新人に電話の取り方を教える。
上司にコピー機の使い方を手ほどきする。
そういった人間模様の躍動が、
僕の人生には一切ない。
組織を離れて生きるというのは、
そういう「季節のない毎日」に突入することでもある。
そんなわけで僕の人生には事件が起きない。
だからつまらないかというと、
そんなことはない。
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