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や 「山羊」


山羊は目が怖い。獣医として比較解剖学的に言えば山羊の目の構造は牛と似ていて、瞳孔が横長になっている。ちなみに猫は瞳孔が縦長で人間はまん丸だ。これにもそれぞれ理由がある。構造は同じなんだから牛も山羊と同じぐらい怖くていいはずなんだけど、牛は愛らしく、山羊は怖い。今度動物園に行ったら山羊をよく見て欲しい。目が怖いから。

20代のとき食肉処理場で働いていた。獣医師として食肉衛生検査という仕事をする。一日800頭の豚、50頭の牛が屠殺される。生体検査、内臓検査、枝肉検査という大きく三つの検査を解体現場でした後、微生物検査、理化学検査、病理学検査などの「研究室内の検査」がある。午前が現場で午後が内勤。午前中は血まみれ、午後は白衣で顕微鏡。そんな日々だった。

年に何回か、豚と牛以外の家畜が運び込まれることがある。そのひとつが「山羊」だ。山羊は注意が必要で、ものすごくジャンプ力があるから柵を跳び越えるのだ。上司から「山羊は目を離すなよ」と言われた。僕がいた6年間で山羊が搬入されたのはそれでも2回か3回だったと記憶している。山羊は反芻動物なので内臓は牛をミニサイズにした感じで、検査自体は特に難しいことはない。あの枝肉はどこに売られたのだろうか。沖縄料理屋とかかな。沖縄で本場の山羊汁をいつか食べてみたいな。

あと、山羊は目が怖い。


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陣内俊
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