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オープンダイアローグから創造する新しい医療(1)オープンダイアローグとは。

 学生時代に、斎藤環先生のオープンダイアローグに関するご講演を拝聴した時、オープンダイアローグはこれから新たな潮流として確実に広まっていくであろう手法、思想であると、確信めいた思いが生まれました。

 既に日本でも精神科医療として実践していらっしゃる方々はいますし、手法こそ違えど同じく対話に重きをおいた取り組みは幾つもあることと思います。私もまたオープンダイアローグの講演を聴いて、関連書を読んで勉強しているような段階なので、あくまで素人意見ではありますが、オープンダイアローグの手法をこういった場面で使ったら面白そうじゃない?こういうニーズがあるんじゃない?という提案や現状の医療の問題点などを数回に分けて記事にまとめていこうと思います。

そもそもオープンダイアローグとは

オープンダイアローグとは何か、wikipediaを参照しましょう。

 統合失調症に対する治療的介入の手法で、フィンランドの西ラップランド地方に位置するケロプダス病院のファミリー・セラピストを中心に、1980年代から実践されているものである。「開かれた対話」と訳される。統合失調症、うつ病、引きこもりなどの治療に大きな成果をあげており、発達障害の治療法としても期待されている。
 
 現在統合失調症等の精神疾患に限らず会社、組織、家族等あらゆる場面において 個々の生き方やその環境に置いての過ごし方をスムーズにする目的で利用され始めている。
引用 (wikipedia:オープン・ダイアローグ)

 オープンダイアローグについての書籍としておすすめは、オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)共同代表、精神科医の斎藤環先生、漫画家水谷緑さんの著書、「まんがやってみたくなるオープンダイアローグ」が分かりやすく、まさにやってみたくなる内容となっています。

 オープンダイアローグとは、上記の説明の通り、統合失調症の急性期の治療介入として開発されたもので、フィンランドのケロプダス病院で発祥しました。従来は薬物治療や入院治療が必須と考えられていた統合失調症を、オープンダイアローグ、つまりは対話の力によって、薬物治療も入院治療も最小限に抑え、更には、再発率の低下、社会復帰率の上昇などまでもたらしています。

治療成績についてwikipedia参照で恐縮ですが、

この治療法を導入した結果、西ラップランド地方において、統合失調症の入院治療期間は平均19日間短縮された。薬物を含む通常の治療を受けた統合失調症患者群との比較において、この治療では、服薬を必要とした患者は全体の35%、2年間の予後調査で82%は症状の再発がないか、ごく軽微なものにとどまり(対照群では50%)、障害者手当を受給していたのは23%(対照群では57%)、再発率は24%(対照群では71%)に抑えられた。
(参照:wikipedia オープン・ダイアローグ)

 にわかに信じがたいこの良いこと尽くしの手法が、高度な精神医療によってではなくある原則に則った対話を続けていくという至ってシンプルなものだから驚きです。

オープンダイアローグの具体的な方法

詳細は、上記の書籍やODNJPホームページからガイドラインがダウンロード出来るのでそちら参照していただけると幸いです。

 治療者はチームで2人以上、そしてクライアントの関係者、つまり患者だけでなく家族やパートナーなどを交えてお話をします。対話の目的は、「変えること」「治すこと」「何かを決定すること」ではなく、あくまで、対話を続けること、広げること、深めることを目指します。

「議論」「説得」「説明」をしない、「正しさ」「客観的事実」よりも「主観を共有する」場として対話を続けていきます。
(話していて楽しい人ってそもそもこういう対話が出来る人ですよね…)

解釈せず、傾聴と質問を続けて、時折、リフレクティングを行います。

リフレクティングというのがオープンダイアローグならではのちょっと変わったフェーズですが、「患者さんや家族の訴えを聞き、当事者の目の前で専門家同士が意見交換し、それに対して患者や家族が感想を述べる」という手法です。
「今からリフレクティング、私達だけで話すので聴いていてください」と前置きして、専門家同士の会話を始めるわけです。一見、不自然な状況ですが、クライアントからすると専門家達のカンファレンスの場に立ち会うような形になるので自発性を促したり、あぁ先生は自分の訴えをこう感じたのか…と考え気づく時間として対話を深める要素があるようです。

こうしたリフレクティングをはさみながら1時間くらいお話をする。というのが粗方の方法です。私も実践している場に立ち会ったことはなく、書籍や講演からうかがった内容なので参照ばかりの内容ではありますが…

またオープンダイアローグの7つの原則というものもあるので、ご紹介します。

オープンダイアローグの7つの原則

1.immediate help
:即時対応
2.Asocial networks perspective
:社会的ネットワークの視点を持つ
3.Flexibility and mobility
:柔軟性と機動性
4.Responsibility
:責任を持つこと
5.Psychological continuity
:心理的連続性
6.Tolerance of uncertainty
:不確実性に耐える
7.Dialogism
:対話主義

それぞれの意味として、
1.必要に応じてただちに対応する。
2.クライアント、家族、つながりのある人々を皆、治療ミーティングに招く。
3.その時々のニーズに合わせて、どこでも、何にでも、柔軟に対応する。
4.治療チームは必要な支援全体に責任を持って関わる。
5.クライアントをよく知っている同じ治療チームが、最初からずっと続けて対応する
6.答えのない不確かな状況に耐える。
7.対話を続けることを目的とし、多様な声に耳を傾け続ける
それぞれの考え方、まず目指すこともガイドラインに記載があるので詳しくはそちらを参照ください。


ここまで読んで、そんな簡単で凄い方法なら日本でもどんどん取り入れていけばいいじゃん!とお思いの方も多いかとは思いますが、そんな思いにもwikipedeiaは応えてくれます。

日本への導入
 オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)が中心となって普及を進めている。保険適用外(2018年現在)であることや、従来の薬物療法中心の精神病治療の考え方を変える必要があるなど、国内での普及には大きな壁があるが、書籍などを通じて学ぶことで、家族が実践することも可能である。オープンダイアローグ対話実践のガイドライン(第1版、2018年3月)が公開されている。
(参照:wikipedia オープン・ダイアローグ)

フィンランドで1980年代から実践し経験と成果を蓄積してきた経緯があってのオープンダイアローグなので、国も制度も違う日本ですぐに導入するのは難しそうです。国民皆保険制度で成り立っているといっても過言ではない日本では、保険適用外であることは大きな障壁になってしまいます。もちろん、原理原則を日常外来や入院治療の中に取り入れている先生や、ガイドラインに基づいて行えば専門家でなくても出来るのがこの手法の圧倒的強みなので草の根的に広まっていく事が予想されます。

(既にここで実践されているよ、もう取り入れられているよ、という情報ある方教えていただけると幸いです。)

オープンダイアローグの応用例

 上記の説明の通り、現在統合失調症等の精神疾患に限らず会社、組織、家族等あらゆる場面において、個々の生き方やその環境に置いての過ごし方をスムーズにする目的で利用されています。では、本題の原理原則を守った上で、どんな形で日本で普及していくのか、オープンダイアローグの手法をこういった場面で使ったら面白そうじゃない?こういうニーズがあるんじゃない?という提案や現状の医療の問題点などについて、考えていこうと思います。ですが、Noteも長くなってしまったので、今回はこの辺で切り上げようと思います。連載は続きます。

ざっくり今後のお話を箇条書きで書いておきますので、興味がある話があったら引き続き読んでいただけたら幸いです。例えば…

・もしも、入院中心の救急精神をオープンダイアローグで変わったら、どんな影響があるか。救急医療に関わった経験からの話。
・精神科医が従来の外来で手一杯ならば誰がオープンダイアローグを推し進める?
・医師、看護師、心理士、ソーシャルワーカー、そして宗教者もオープンダイアローグに参入したらどうなる?
・各地域に駆け込み寺のようなオープンダイアローグの場があったら…
・日常の生活を豊かに守る対話の場としての、畑、寺、カフェ
・精神科専門医のいない地域医療でオープンダイアローグが活躍しそう?

そんなお話を今後は続けていくつもりです。では、今回はこの辺で。
オープンダイアローグの説明だけで4000字近くなってしまいました…。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。

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ShunIshikawa
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