川端俊一

ジャーナリスト。北海道生まれ。早大卒。1985年、朝日新聞社入社。那覇支局員や社会部員、同次長として沖縄の米軍基地、安保問題などを担当。90年代、交流人事で沖縄タイムス社へ。東日本大震災の被災地にも駐在。2020年退職。著書に『沖縄 憲法の及ばぬ島で』、共著に『新聞と戦争』など。

川端俊一

ジャーナリスト。北海道生まれ。早大卒。1985年、朝日新聞社入社。那覇支局員や社会部員、同次長として沖縄の米軍基地、安保問題などを担当。90年代、交流人事で沖縄タイムス社へ。東日本大震災の被災地にも駐在。2020年退職。著書に『沖縄 憲法の及ばぬ島で』、共著に『新聞と戦争』など。

最近の記事

「馬毛島」をめぐる市長と市民の苦悶――軍事基地建設で揺れる鹿児島県西之表市で《八板俊輔市長インタビュー》

   鹿児島県・馬毛島の基地建設問題で2023年1月12日、防衛省が現地での「本体工事」に着手したが、地元・西之表市の八板俊輔市長はこの日も賛否について明言はしなかった。基地建設に向けた実質的な工事は以前から行われており、地元自治体の意向が考慮されない状態が続いている。この状況をどう受け止め、今後どのような方針で臨むのか。市の住民説明会が行われた昨年11月、八板市長に話を聞いた。  1、判断材料引き出す  Q 現段階でも「同意」「不同意」を言える状況ではないとお考えです

    • 「馬毛島」をめぐる市長と市民の苦悶――軍事基地建設で揺れる鹿児島県西之表市で《後編》

       鹿児島県・馬毛島の基地建設問題が争点になった2021年1月の同県西之表市長選挙は、基地は「失うものが大きい」として不同意を掲げた八板俊輔市長が再選を果した。しかし、わずか144票差という「薄氷の勝利」。同日の市議会議員選挙は賛否両派が拮抗する結果となる。決して盤石ではない2期目の八板市長の足元を見透かすように、その意向にお構いなく、防衛省は次々に手を繰り出し、市長を追いつめていく。 1、難しい市政運営  再選後、八板氏は、市長選で民意が示されたとして防衛省に対し、海上ボ

      • 「馬毛島」をめぐる市長と市民の苦悶――軍事基地建設で揺れる鹿児島県西之表市で《前編》

         この地で今、起きていることをほとんどの国民が知らずにいるのは、どう考えてもおかしいと思う。「基地」をめぐり、沖縄同様のニッポンの現実が、ここから見えているのだ。「鉄砲伝来」で知られる鹿児島県・種子島。その沖合にある馬毛島――。その島がほぼ丸ごと、自衛隊とアメリカ軍が共同使用する巨大軍事基地にされようとしている。2023年1月12日、防衛省は基地の島での本体工事に着手した。一方、基地反対を掲げて当選した市長は計画への賛否を明確に表明せず、反対派の市民らは厳しく批判。昨年末には

        • 沖縄県知事選で語られなかったもの――「ミサイル要塞化」をめぐる先島との温度差とは・・・

           9月11日に投開票が行われた沖縄県知事選挙で、現職の玉城デニー氏が再選を果たした。自民・公明両党の推す佐喜真淳氏に6万票以上の差をつけての勝利。最大の争点ともいわれた名護市辺野古での米軍新基地建設について、反対を貫く玉城氏の政治姿勢が県民の信任を得た形だ。一方、知事選の投開票と同じ日、石垣市議会議員選挙の投開票が行われた。沖縄島から400キロ近く離れた石垣島の選挙と県知事選。それぞれで語られたことは、何がどう違ったのか。   ■「辺野古」を訴える  8月25日、県知事

        • 「馬毛島」をめぐる市長と市民の苦悶――軍事基地建設で揺れる鹿児島県西之表市で《八板俊輔市長インタビュー》

        • 「馬毛島」をめぐる市長と市民の苦悶――軍事基地建設で揺れる鹿児島県西之表市で《後編》

        • 「馬毛島」をめぐる市長と市民の苦悶――軍事基地建設で揺れる鹿児島県西之表市で《前編》

        • 沖縄県知事選で語られなかったもの――「ミサイル要塞化」をめぐる先島との温度差とは・・・

          ある「右翼」の問いかけ――「沖縄の米軍基地を東京へ引き取る」という劇薬

           6月22日に公示された参院選の東京選挙区で、「右翼」の女性が立候補した。中村之菊(なかむら・みどり)氏。「沖縄の米軍基地を東京へ引き取る党」代表。選挙戦で掲げる主張は党名の通り、沖縄の米軍基地を東京へ引き取る、こと。日米安保体制の下で、米軍基地を押しつけている側が押し付けられている側にばかり、がんばらせるわけにはいかない。だから「自分(本土)もがんばる」。何が彼女を決意させたのか。そして私たちが受け止めるべき「問いかけ」とは――。選挙戦開始までの道のりをたどった。 1、官

          ある「右翼」の問いかけ――「沖縄の米軍基地を東京へ引き取る」という劇薬

          「日本一幸せあふれるまち」にミサイル部隊がくる――沖縄・石垣島でおきていること《市長選・後編》

           紆余曲折の末、旧来の「保守」勢力と、石垣初の「保・革共闘」による対決となった石垣市長選。結果は、「保守」が推す現市長の中山義隆(なかやま・よしたか)氏が、「保・革共闘」の砥板芳行(といた・よしゆき)氏に2454票差をつけ、4選を果たした。投開票日までに島で何があり、市民はどんな思いで見つめたのか。選挙戦に沸いた石垣島から、沖縄と日本の「今」を考えてみたい。結びに砥板氏のインタビューを収録する。    1、 何が語られたのか  「一部の声しか聞かない独善的な市政を終わらせ

          「日本一幸せあふれるまち」にミサイル部隊がくる――沖縄・石垣島でおきていること《市長選・後編》

          「日本一幸せあふれるまち」にミサイル部隊がくる――沖縄・石垣島でおきていること《市長選・前編》

           陸上自衛隊のミサイル駐屯地建設を認めるか否か――。それ自体はもはや争点ではなかったが、政治的立ち位置を見定めるためには依然、重要な指標であった。2022年2月27日に投開票が行われた沖縄県石垣市長選で、自民・公明が推す現職の中山義隆(なかやま・よしたか)氏が4選を果たし、配備に関する住民投票の実施を訴えた前市議会議員の砥板芳行(といた・よしゆき)氏は及ばなかった。島の将来を左右しかねない「陸自ミサイル部隊」問題は、この選挙でどう問われ、どんな意味を持っていたのか。そこには日

          「日本一幸せあふれるまち」にミサイル部隊がくる――沖縄・石垣島でおきていること《市長選・前編》

          「日本一幸せあふれるまち」にミサイル部隊がくる――沖縄県・石垣島でおきていること《市議会編》

           2022年2月27日に投開票が行われた沖縄県の離島、石垣市の市長選挙で、自民・公明が推す現職の中山義隆(なかやま・よしたか)氏が4選を果たした。争点の一つは、島内への陸上自衛隊ミサイル部隊の配備計画に関する住民投票の実施。前市議会議員の砥板芳行(といた・よしゆき)氏は投票実施を掲げ、現市政を「独善的」と批判して挑んだが、及ばなかった。建設中の新駐屯地は来春には開設され、南西諸島全体の「ミサイル要塞化」は完成に近づくことになる。これらの部隊配備の意味するところは何か、万一、戦

          「日本一幸せあふれるまち」にミサイル部隊がくる――沖縄県・石垣島でおきていること《市議会編》

          島々を日米同盟の「盾」にする要塞化計画――鹿児島県・馬毛島で何が起きているのか

           九州南端から台湾近海まで連なる南西諸島の島々で、自衛隊の駐屯地が相次いで建設され、部隊が配備されている。鹿児島県西之表市・馬毛島(まげしま)でも、防衛省が新たな自衛隊基地の建設計画を進めようとしている。アメリカ海軍の空母艦載機による「陸上離着陸訓練(FCLP)」や自衛隊の訓練を行うための基地だが、全体の構想を見ると、ひとつの島をそっくり丸ごと「軍事要塞」にするという異様なものだ。そんな基地はこれまで日本では例がない。騒音や環境破壊はもちろんだが、本当に完成すれば、かつてない

          島々を日米同盟の「盾」にする要塞化計画――鹿児島県・馬毛島で何が起きているのか

          対中国の「ミサイル要塞」にされていく南西諸島――国民を「捨て石」にする戦争を繰り返してはならない

           南西諸島の島々に、陸上自衛隊のミサイル部隊が配備されつつある。有事の際、相手国の航空機や艦船をミサイルで攻撃して食い止めようという作戦で、「仮想敵」は中国人民解放軍だ。背景には、中国を「国際秩序に挑戦する唯一の競争相手」として警戒するアメリカの構想がある。しかし、こちらが撃てば、相手も撃ってくる。「ミサイル要塞」にされた島に住む人々が、弾雨にさらされない保証はない。国民の安全はどうやって守るのか。4月、菅義偉首相とバイデン大統領は首脳会談後の共同声明で台湾の問題に言及し、日

          対中国の「ミサイル要塞」にされていく南西諸島――国民を「捨て石」にする戦争を繰り返してはならない

          「安保」によって起きた事故を「全国紙」はどう扱ったか――沖縄国際大米軍ヘリ墜落事故報道の遅すぎる検証

           あれから16年になる。2004年8月13日、沖縄県宜野湾市にある沖縄国際大学の構内に、隣接する「アメリカ海兵隊普天間飛行場」を離陸した大型輸送ヘリが墜落した事故。沖縄のアメリカ軍基地がいかに危険であるか、を示す証左として今に語り継がれている。その重大さ、深刻さは言うまでもないが、私にとっては同じ日の出来事が、今も消し去れぬ悔恨として記憶に刻まれている。その日、新聞社内での会議の席上、「トップ獲得」の競り合いで敗れたこともそのひとつだが、それ以上に、私自身がこの事故で問うべき

          「安保」によって起きた事故を「全国紙」はどう扱ったか――沖縄国際大米軍ヘリ墜落事故報道の遅すぎる検証

          沖縄から眺望できる「国民的思考停止」という病の風景 ~~辺野古米軍基地建設とは何なのか

           新型コロナウィルスの緊急事態宣言は解除されたが、なお多くの人々が困窮にあえいでいる。未知の感染症が落とす影は依然大きく、私たちの社会を暗然と覆っている。だが、そこで見えた数々の問題も含めて、この国の本当の「病」は、感染症とは別のところにある。  この春、新聞社を退職した。社会部デスクだった期間を含め、記者生活は35年になるが、1990年代半ばに勤務した沖縄で、「米軍基地問題」という、この国の「病」に気づかされ、記者として取り組むテーマとなった。その後の歳月は、この国にはびこ

          沖縄から眺望できる「国民的思考停止」という病の風景 ~~辺野古米軍基地建設とは何なのか

          権力と「3密」になる意味と記者としての矜持 ~賭けマージャン問題って何なのか~

           信じ難いようなむちゃくちゃな閣議決定で定年延長されて問題になっていた東京高検検事長・黒川弘務氏が、朝日、産経両新聞社の社員、記者らと賭けマージャンに興じていたことを「週刊文春」が報じた。黒川氏は辞表を提出したが、人々の怒りはおさまらず、マスコミと権力の癒着を指摘する声も上がっている。朝日は早々と土下座し、社員を1か月の停職処分にした。産経も謝罪した。だが、この出来事には、おわびや処分では決着がつかない、記者は権力にどう関わるべきかという、ジャーナリズムの根源的な問題を含んで

          権力と「3密」になる意味と記者としての矜持 ~賭けマージャン問題って何なのか~