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AI活用記録(1)学校全体で使う前に個人的にやっていたこと。

↓これの続き

1.0はじめに

実は生成AIを全校で導入する前から、自身でも個人的に生成AIを色んな用途で試してきた。といっても担当者としての責任というよりは、ただただ興味があっただけである。授業での導入事例云々の前に、ここでは、どんなことが生成AIに出来たのかという事例をいくつか紹介していきたい。

1.1道具としての生成AI

誰かが言っていた。「生成AIは人工知能といいつつ、頭の中の肉体労働を代わってくれるツールである」と。「頭の中の肉体労働」とは言い得て妙だと感じた。なぜなら私自身の実感として、生成AIが得意とするのは、考えることというよりも、考えを目に見える形に生成しなおすことだと感じているからである。

色んな人を見る限り生成AIに初めて触れる人は、初めは文章やイラストが生成されるスピードに驚き、そしてその精度に驚く。それは想像していた機会が自動で出来ることを遥かに超えてくるからだ。しかし、だいたい30分もすればその驚きは覚めてしまう。細部の粗が目に見えるようになるからである。この辺りは実際にイラストを描いてみるとよく分かる。最初のうちはそれっぽいイラストが出てきて楽しいが、細かい要望を叶えようとするとなかなか伝わらず、結局「使えない」となる。(逆にそれを使って面白く見せようとするYouTuberもいる。)

この辺りはプロンプトエンジニアリングと言ってプロンプトの工夫をすれば精度は上がるし、そもそも出来上がったイラストを自分で修正すればいいだけのことである。特に背景などを描く際に、木々の一本一本を描くのは甚だめんどくさい。もちろん芸術作品のようなこだわりを追求した作品ならば別であるが、多くの場合そのコンテンツの製作にはそこまでこだわらない。そういうところに使う道具として使えばいいだけである。

そう視点で生成AIを見てみれば、日常的なタスクであるほど、便利で実用的であることを体感する場面が多い。業務効率化などというが、本当に煩雑な作業にこそ使える道具である。道具として機能する場面をいくつか紹介して行こう。

まず、最も気軽に活用できる場面として、メールの文面作成が挙げられる。学校業務では関係者とのメールのやり取りが頻繁に発生する。限られた時間の中で、毎回適切な文面を考えるのは手間がかかる。状況によっては早急な対応が必要な場合も少なくない。そのような場面で、生成AIに要件を入力し、文面を生成させることで、時間を大幅に節約できる。(最近友人に紹介したら、友人は義母という微妙な距離感の相手とのやり取りをするのに使っていて、感動していた。考えされることはあるが、そういうところでストレスも減るならだいぶ有用だろう。)

例えば、説明会の案内や企画書など、定型的な内容を生成AIに提案させ、その内容を元に適切な調整を加える。そうやって作られたものを様々な場面で利用している。もちろん生成された文面が完全にそのまま使えることは少ないが、ゼロから書くよりも圧倒的に効率が良く、特に短時間で内容を仕上げなければならない場面で役に立った。ちなみにDXハイスクール関連の書類は全てこの方法で作成している。おかげであの煩雑な書式を短時間で書けたし、何より採択された。

さらに、文面作成以外にも、生成AIはイラスト作成やデザインの補助としても役立った。例えば、学校の行事や特定のプロジェクトの際に、簡単なデザインやロゴの案が必要な場合や、専門のデザイナーに頼むほどではないが、見栄えの良いビジュアルが求められる場面で、生成AIに依頼することで多くの時間を節約できる。

また自身のPCにはAdobeが入れてあるので、IllustratorやPhotoshop、InDesignを使うことがあるとはいえ、自分は専門知識を持っているわけではない。そのためビジュアルコンセプトを自分で形にするのは非常に困難なことである。しかし、こういう時もイラストを作る道具として、生成AIは使うことができる。生成AIを使うことでいくつかのアイデアをラフな形でビジュアル化し、その中から選んだり微調整を加えることで、簡単にイラストを用意できるのである。

特に時間の制約がある場合、生成AIが短時間で複数のビジュアル案を生成してくれる点の業務の効率化として最たる例だろう。さらに教員としては無味乾燥なプリントやスライドに彩りを与える“余裕”を作るものとして非常に便利な道具であると言える。

1.2生成AIで作業を自動化する

これらの一般的な用途での活用を通じて、生成AIの使い方というのを少しずつ覚えていったが、ある時ふと日常的な業務効率化だけでなく、より高度なタスクや複雑な業務にも応用できるのではないかと考えた。よくプラグラマーがやっている業務の自動化というのもやろうと思えばできるのではないかと。

というのも、自然言語よりプログラム言語を生成する方がより真価を発揮するという話を聞いていたからである。とはいえExcelの関数すらまともに覚えていない自分には全く関係ないことである。そう思っていたら、その力を借りる時は突然やってきた。

 学校説明会の参加フォームを作ってくれという依頼が舞い込んできたのである。普通に参加フォームを作るだけなら簡単に作れるが、規定の収容人数に達したら自動的に締め切られるような仕様にしなければならない。もちろん去年度まで使っていたものがあるので、それを再利用すればいいだけである…と思っていたのだが、とんでもない罠が潜んでいた。

 前年度までのものはコロナ禍仕様のもので、去年は同伴は2人までという制限を設けてたのでたる。基本的に学校説明会は親子でやって来る。だから回答数×2と参加人数で大きくズレることはなかったのである。しかしコロナ禍もあまり気にされることがなくなってきたので、2人までの制限も取っ払って参加人数で停止が出来るようにしたい。そういうわけで、既存のフォームを作り直すことになった。

作り直す上で新たに参加人数が420人に達した時点で自動的に停止できるようなプログラムを構築しなければならない。そこでGoogle App Script(以下GAS)を使えば、何とか出来そう…というところまでは分かっていたので、これに書き込むスクリプを作成するのにChatGPTを使うことにした。

GASとは、Googleが提供するスクリプト言語のことであり、Googleの各種アプリケーション(Googleスプレッドシート、Googleフォーム、Googleドキュメントなど)をプログラムで操作し、カスタマイズすることができる。これにより、Googleフォームの自動化やデータの集計、自動通知システムの作成など、様々な学校業務の効率化が可能になる。特に、複数のアプリケーション間でデータをやり取りするプロセスや、手動で行うと時間がかかるタスクの自動化において、GASは強力なツールである。しかしJavaScriptベースで動作するため、Webアプリケーションやスクリプトの作成が比較的簡単に行えるが、基本的なプログラミング知識が求められる。これまでならば、この時点でお手上げである。

簡単にChatGPTにコードの修正を依頼してみたところ、AIは非常に分かりやすく要点を説明し、どの箇所を修正すべきかを的確に指示してくれた。

このようにして、生成AIを活用してGASを調整し、最終的には参加人数に基づいてフォームを自動停止させる機能を実装することができた。生成AIが単なる質問応答だけでなく、実際にプログラミングのサポートまで行ってくれることに驚いた。複数回の修正と試行錯誤を繰り返したものの、最終的には約3時間程度でプログラムを完成させることができた。この経験を通じて、生成AIは初心者でも実用的なツールを作成できる力を持っていることを実感した。これは学校現場でもかなり使えるのではないか。

1.3その他にも

その後、個人的な試みとして、古典資料をAIで翻訳・解析できるかを試す機会があった。

生成AIの翻訳結果は、単純な逐語訳にとどまり、比喩的な部分の理解は十分ではなかったが、追加のプロンプトで背景情報や比喩に関する指示を与えると、AIはそれに基づいた解説を生成してくれた。完全な理解には至らなかったものの、生成AIを活用することで翻訳のヒントを得ることができた。このプロセスを通じて、生成AIは複雑な古典資料の解析にも一定の貢献ができる可能性を感じた。古典資料をAIに流して概要をつかみ、その後に詳細な調査を行うことで、読み解くスピードを向上させることができるのではないかと考えた。

1.4小結

生成AIは単に業務効率化のツールとしてだけでなく、知識の補完役としても様々な分野で活用できる力を秘めている。教育現場においては、今後さらに多様な用途で生成AIが活躍することが期待される。例えば、文章作成支援やプログラム自動化だけでなく、歴史資料の解析や翻訳など、これまで教師や専門家が多大な時間を費やしてきた作業も、生成AIの導入により効率化できる可能性がある。生成AIの活用によって、教師はより創造的な指導に時間を割けるようになり、生徒に対しても新しい学びの形を提示できるようになるだろう。

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