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現代人の「自己」の生き方

ヘルマン・ヘッセの詩

日本の森の渓谷で風化してゆく古い仏陀像

やわらげられ やつれて 多くの雨と
多くの霜にさらされ みどりに苔むして
あなたの穏やかな頬 あなたの大きな
伏せられたまぶたは 静かに目標に向かって行く
すすんで朽ち果て 無に帰するという目標に
一切の中に 形のない無限の中に
消えかかっているその身振りは今も告げている
あなたの王者としての使命の高貴さを
そしてやはり早くも求めている 湿り気とぬかるみと土の中に
形にとらわれぬ身振りの意味の完成を
明日は根となり 木の葉のざわめきになる
水となって 空の清浄さを映し
蔦になり 藻になり 縮れた羊歯となる
この仏陀像こそ永劫不変の統一体の中での一切のものの変転の象徴だ

古来から日本人の心を育ててきた仏教、勝海舟も山岡鉄舟も西郷隆盛も夏目漱石も坐禅をした。勝と西郷の会談の際、お互いに「あなたにおまかせします」と話し、江戸無血開城が達成された。お互いに「無私曲為公」(永平大清規)という私の利益ではなく公の事、日本の事を考えている事が分かった(肚の内が分かった)から信頼して相手に全てを任せられたのだと思う。
現代は「仏道をならうというは、自己をならうなり」(道元禅師)すべてを学びつつ、他に依存せず、「自己」の生き方を大切にするのが正しいと思う。「他に依存する者は動揺す」、「自己の拠り処は自己のみなり」、「犀の角のごとくただ一人歩め」(仏陀)アポロン神殿の古代ギリシャの格言「汝自身を知れ」。グループ呆けからシュッケイ(出家、失敬)して自分一人になることが坐禅である。(澤木興道師)所属する組織や社会や会社の中に「自己」が埋没していると、何が善か悪か分からなくなってしまったり、周囲の雰囲気に流されて軽はずみな行為をしてしまったり、多数派の悪の側についてしまったり、、、そうして「自己」の生き方がない。
永劫不変の自然の生命の中で、森羅万象や自己は変転(無常)しつつ毎日を生きているが、生きながら、永劫不変の自然の生命(無、空)に帰する行が、坐禅である。「自己をならうというは、自己を忘れるなり」(道元禅師)
現代科学に欠けているものを埋め合わせてくれる宗教があるとすれば、それは仏教である。(A・アインシュタイン) 自然科学が生まれたのは、大自然の中の「神の栄光」をあらわしたいという願いからだったというが、現代科学もそうであってほしいと願う。科学がどれだけ発展しても、その素材、材料は自然から授かっているのであろう。歴史的•世界的視野に立って、日本においては風化してゆく仏教の、現代においても大切にしなくてはならない点、言葉、意味(王者としての使命の高貴さ、目標)を探究し、明らかにして、世界中の人のQOL(クオリティ・オブ•ライフ)の向上に役立ちたいと強く願う。


ヘルマン•ヘッセ 人は成熟するにつれて若くなる V・ミヒェルス編 岡田朝雄訳 より引用

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