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機械仕掛けのコウノトリ 19
「それでは担当の者の準備ができましたらお声掛けいたします。そちらのソファで少しお待ち下さい」
私たちは少しだけ会釈をして、手を向けられた場所に歩いた。
ソファに腰を降ろすとシルバーや白に覆われた四角いこの空間が、私の情緒を置き去りにしていくように感じる。
無数に飛び交う声が、この空間の無感情な推進を後押ししていくように、鋭利な角にまで埋まるように広がっていく。
夫を見ると熱心に話を聞く先約者たちの姿をじっと眺めていた。
夫の目には私のような違和感への恐れなどなく、むしろ、この場所の中でより冷たくここじゃないどこか先を見ているようだった。
普段生活をしていても時々そういう目を見ることがあった。
その度に私は彼をどこか遠い人に思えて怖くもあったが、優しい表情を見る度に安心していた。
受付よりもさらに濃い紺のスーツを着た女性が受付と話をして、こちらに向かってくる。
そして、私たちの前でしゃがみ、挨拶をした。