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長い夜を歩くということ 82

 同棲を始めて最初のうち、彼女は家の曲がり角で体をぶつけ、ちょっとした段差につまづくなどして、彼は気が気ではなかった。

しかし一ヶ月もしないうちに彼女は普通に歩き、普通に生活をして見せた。

 彼が家に帰る時、彼女は内職をしながら待っているか、疲れてテーブルにうつ伏せで寝ていた。

その度に彼は彼女を抱きかかえベッドに運んだ。

彼にとってその瞬間は自分に戻れる時であり、幸せそのものだった。

その時が何万回でも繰り返されることを望むほどに、彼女の存在は彼そのものを開く鍵となっていた。

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