長い夜を歩くということ 111
「ねえ、先生。先生は当たりなんですか?それとも外れなんですか?」
自由な難解で質問に、私は少しばかり考えて、そして、諦めて、彼女と同じように外の景色を眺めた。
「さあ、どうでしょう。それはこれからのお楽しみにしてください。次の撮影までの暇潰しくらいにはなるでしょう」
活けられた黄色い花が風に揺れて微かに甘い香りがした。
彼女は口に手を当てて、深い森に駆け回るリスのように可愛らしく笑っていた。
「当たりみたいですね」
彼女は掛け布団を剥いで私の方に足を下ろした。
服からはみ出す白い足は、血管の青さが透けるほど繊細で、一歩立ち上がったら、罅が入り割れて崩れてしまいそうだ。
「それは良かったです」
私は彼女の問診票を見てそう言った。
自分でも不思議なくらいに、目の前の国民的女優に対して、なんの気負いも不安も感じない。
それは確かに彼女にとって正解だったのかもしれない。
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