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左手に金の滝が打つ 6
第1話
前話
「役所から宏人のお母さんについての連絡が来たんだよ」
父は封筒をひらひらと画面の中で振り、笑顔を浮かべている。
全く予想外の話に私は「はあ」と息を漏らすしかなかった。
「何でも子供の扶養資格が回復したから宏人を迎い入れる準備をしているということだそうだ」
その言葉が私の腰に張り付き、背中へゆっくりと上がる。それは液体が物体に沿いながら侵食していくようにしつこく、粘ついている。
「でも、子供には別に暮らしてきた五年間の生活があるから、どうするかは子供の判断でということらしい」
こちらに選択肢があるということで一安心した。張り付く母の粘つく手を払うように言い放つ。
「期限等は書いてあるでしょうか?」
父親は「いや、特にはない。ただ一度面会を希望しているとのことだよ」と言って、書類を置いた。
「わかりました。では、検討をして遅くならないうちにお父さんに回答いたします」
はっきりと伝えると父は笑いながら「わかった」と言い、定期面談を終えた。