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左手に金の滝が打つ 9
第1話
前話
さらに下を読んでいくと、調査報告の義務とこの件について黙秘することなどが書かれ、調査報告の確認後、二百万円が手渡されることが書かれていた。私はその文字列に負の感情などはなく、裏返った虫の死体を見ることと変わらないくらいにしか感じることはなかった。
それよりも私は、より強く才能を与えられたという喜びと感謝が心臓を血が通る度に流れ込む温かさがあった。
金が目的であろうとも、私にとってはこの身の中に確かに人よりも優れた、より世界を多く深く探究できる才能が与えられたという事実が何よりも勝る喜びだったのだ。
だから警察がうちに乗り上げてきた時、大した驚きはなかった。
ああ、バレたか裏切られたのだなと、
ちょうどその時はユングか何かを読みながら思っていたはずだ。
窓の外からパジャマ姿で連れて行かれる父親の姿をチラリと見るとすぐにまた本に視線を戻した。