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≪ラ・ボエーム≫解説 No.2〜時空を操る魔法〜

 こんにちは。≪ラ・ボエーム≫の特集も2回目となります。今回は、総合芸術と呼ばれるオペラの中で、プッチーニがどのように時間や空間を巧みに操っているのかを、解析していきたいと思います。  プッチーニの譜面は極めて細かい指示が書かれています。「速い」「遅い」のパラメータで語られることの多い表情記号ですが、プッチーニの場合それは空間(劇)についての指示である場合がとても多いのです。  ritardandoはイタリア語のtardareを由来とし電車の遅延など時間が遅れる・伸びること

    • 世界史から見た≪ラ・ボエーム≫

      今までは基本音楽のことを中心として解説を書いてきましたが、心機一転して原作が作られた当時の社会状況や、オペラ台本から伺えるボヘミアンたちの話などをしてみたいと思います。推測だらけですので、お気軽にお読みください…(笑)。  時を遡り、1789年からブルジョワジーを中心としたフランス革命が勃発、体制の変化を繰り返してナポレオン・ボナパルトが皇帝の座に就きます。領土拡張のためイギリス・ドイツ・ロシアを敵に回したナポレオンは敗れ、島流しとなりました。1814年に開かれたウィーン会

      • ≪ラ・ボエーム≫解説① 〜ライトモチーフの匠・プッチーニ〜

        8/18(日)に行われる東大歌劇団≪ボエーム≫公演。本ノートでは公開用のパンフレットには掲載するには難しい内容を、譜例を活用しながら説明していくことにする。 今回は<ライトモチーフ>について。R.ワーグナーが確立した示導動機は、特にオペラにおいて動機を使うことにより音楽だけでドラマを示すことができるという便利な道具なのである。 調はド-ミ-ソのC-durなのだが、冒頭1小節はaufTaktになっていてアクセント・強勢があるのはFの音なのだ。「交響的奇想曲」の動機を転用した

      ≪ラ・ボエーム≫解説 No.2〜時空を操る魔法〜