J3 第8節 レビュー【鹿児島ユナイテッドFC vs 藤枝MYFC】変化
2021.5.15 J3 第8節
鹿児島ユナイテッドFC vs 藤枝MYFC
こんにちは。
今回もご覧いただき、ありがとうございます。
今週は藤枝戦。藤枝はここまで6試合1勝4分1敗。
ドローの多さが気になりますが、決して悪いチームではありません。
ありません。
ありませんが、仕事終わって0-3の結果を確認した時は流石に驚きました。
さらには、雷雨で中断に次ぐ中断。
特に現地組の皆さんには重くのしかかる敗戦だったのではないかと思います。
しかし試合内容を見ると、パパス監督はマイナーチェンジを所々に用意しており、次の形態に進化するにあたってターニングポイントになり得る試合でした。
試合のレビューというより、鹿児島の変化への考察が多くなりますが、振り返っていこうと思います。ご笑覧ください。
0.スターティングメンバ―
まずは鹿児島。
CFグスタヴォ、トップ下萱沼、DHには中原・八反田、右SHに三宅が入りました。三宅は後ほど。萱沼についてはトップ下出来るとは言ったけど、言ったけども!案件でした。
なんにせよグスタヴォの加入と、最前線に飛び出していける萱沼のメリットを最大限に活かそうという意図があったはずです。
その萱沼は、思惑通りビルドアップに貢献していましたが、相手のプレーに影響を与えられないサポートをすることも見られました。もっと出来る。
さらに、GKは白坂がリーグ戦初先発。
セービングでは好セーブを何度か見せましたが、ビルドアップではミスや急ぎすぎな場面ががちらほら。GKの競走はまだまだ続きそうです。
続いて藤枝。
前節からは、左SB19番穂積→24番那須川、左SHだった15番杉田が7番鈴木惇に代わりDHへ、左SHには33番河上が入りました。
予習で一番目に付いたのが7番鈴木惇だったので、出ないんかい!とツッコみましたが、途中交代してからはボール奪取やビルドアップ~崩しまで輝いていたと思います。
特に鹿児島右サイドでは、彼のポジショニングとプレスで上手く前進出来ない場面が多く見られました。後半、左サイドでの組み立てが主だったことの一因でもあったと思います。
そんなスタメンで始まった今節。
まずはセットDFの陣形が変わっており、明確な意図を感じました。
1.セットDFの変化
これまでセットDF時は、トップ下が上がって4-4-2になっていた鹿児島。
今節は、陣形そのまま4-2-3-1で行っていました。詳細は下図。
藤枝ビルドアップの場面。
CB4番秋山にはグスタヴォがアプローチ、32番金は米澤が牽制し、サイドへの展開を阻みます。それでも右SBへ展開されたら、そのままプレスバックで解決していました。
三宅にも同じタスクが課せられていたかもしれませんが、右サイドにはDH15番杉田が4番秋山の左脇に降りる状況。最前線での数的不利は受け入れ、後方のスペースを埋めることで、24番那須川を管理する役目が多かったです。
そして、もう一人のDH5番岩間は萱沼が監視。
そのことで、後方ではDFライン4枚とDH2枚の計6枚vs藤枝前線4枚という数的有利の構図を生み出すことが出来ています。
また、結果的に米澤が高い位置を取ることになり、ポジトラ準備としても有効な状況が発生していました。
なぜこのような形にしたのかについては、藤枝のDH列落とし対策・ロングボール対策などあると思いますが、今後もう少し注視していきたいところです。少なくとも今節、この狙いが奏功していた時間帯は、セットDFにてある程度の余裕を持って対応出来ていたのではないでしょうか。
一方、前進が思うように行かない藤枝。
状況を変えたのは右SHの16番枝村でした。
枝村は5番岩間脇・米澤後方のスペースまで降りていきます。
このことで砂森の管轄からは抜け、米澤には枝村か22番久富かの選択を迫ることが出来ており、そのズレから前進していました。
この辺は、経験豊富な枝村の素晴らしい機転だったと思います。
2.SHの配置
続いて、SH問題に触れていきます。
今節は右に三宅、左に米澤が入りました。鹿児島のサッカーを考えれば、SHは順足の配置で縦に突破しやすくするのがセオリーですが、今節は双方とも逆足の配置。
特に三宅は逆足に配置されたことで、カットインが主になったり、コントロールのミスが生じたり、率直に言って試合を通じて貢献出来ていたとは言えませんでした。
ちなみに、三宅の天皇杯でのプレーは得点とアシストくらいしか確認できていませんが、アシストはともかく得点についてはアピールという意味合いで、熟成させる必要のある現段階のチームに組み込む理由にはならないはずです。
左で勝負出来れば輝けると思っていますが、その魅力を奪ってでも米澤を左に置くというのには意図があるはずです。
その一つが、ネガトラ対策。
砂森がビルドアップでインナー・前方に位置するために、トランジションにて留守にするSBの定位置を狙われることがあったかと思います。そんな場面で米澤のスプリントでなんとかしようという意図が考えられます。
実際に今節にも、45:40頃にはその狙いが見えてくる場面もありましたし、これまでにもそのような場面はあったかと思います。実際、米澤の凄さを感じ取れる一幕なのですが、恐らくチームの構築通りではあります。
さらには今節、米澤がインナー・砂森が大外を滑走する場面が増えました。
その際にも、藤枝のDHやSB・CBをピン留めすることで砂森のプレーを自由にしつつ、自ら突破する場面もあり、貢献しています。
その意味では、砂森とのユニットの優位性を優先しているとも取れます。
しかし、熊本戦・福島戦に引き続き山谷の投入後は、素直に左山谷・右米澤の配置に変更したので、その線は薄いかなと思っています。
尤も山谷は、帰陣の意識が高く守備では貢献しており、パパス監督からは左サイドに置かれるだけの信頼を勝ち得ている選手です。
もう少しボール保持にて存在感を示せれば、ファーストチョイスになることも考えられますが、現状は米澤と野嶽惇の2人が最も効果を発揮出来ています。
個人的には山谷の成長に期待したいところです。
3.ビルドアップの立ち位置
前半をスコアレスで終えた鹿児島。
後半からはビルドアップの立ち位置を変えていました。主人公は田辺です。
これまでCB2枚のままかCB+DH1枚で数的優位を作って前進を図っている鹿児島。
後半からはDHが降りた後、田辺が明確に左SBの定位置に位置取り、4-2-3-1を再構築することで、藤枝プレス陣を混乱させました。図の例では、5番岩間はインナーに入る砂森か萱沼か、選択を強いられています。
また、懸念だった左SBの定位置を埋めることで、トランジションにて狙われることへのリスクヘッジの意味合いもあったと思います。
一方この時、後方に降りようとした萱沼が、砂森に前線にいろ!とジェスチャーしている一幕も見られました。他の場面にも、中原に同じような指示をされています。この辺の降りる・降りないの判断は今後精度を高めていきたい萱沼でした。
また、ここからさらにDHの片割れが降りて流動性を高める場面もありました。その場合に、萱沼がすぐさまDHの定位置まで降りてくるスムーズさは良かったです。全体的には、トップ下の萱沼は合格点だったと思います。
4.80分の交代
75分には三宅裏を突かれクロス→目線を2度変えられ、マークに追いつかなくなり失点。あるある失点ではありますが、そろそろ何回それでやられんねん!と言いたくもなります。
とにもかくにも点が必要になった鹿児島。一気に4枚替えを行います。
前述の通り、素直に左に配置された山谷・右の米澤に加え、CF薗田・トップ下三宅・DHに酒本と野嶽寛・右SB衛藤という構図になりました。
右サイドで躍動出来ない三宅・それに伴い推進力を高めたい右SB、SHのテコ入れは頷けましたが、中原・八反田は決して悪かったと思わないので、交代の意図には疑問符を付けざるを得ません。
そして、その直後に2失点目を喫してしまいます。
この交代が裏目に出てしまった失点でもありました。
場面は藤枝のクロスが逆サイドに流れ、砂森が8番岩渕に対応したところから始まります。
この時、空いたハーフスペースを28番松村が狙っています。前述の通り、帰陣意識の高い山谷はこのリスクを察知し、消しに行きました。しかしそれにより、後方で空いた22番久富にパスが送られ、フリーでクロスを放られたところから失点を喫しています。
山谷の長所が裏目に出てしまったと共に、本来28番松村にはDHが対応すべきところですが、中央に留まっており、対応が浸透していない様子が窺えた失点です。
尤もこの失点に限らず、4枚の交代はユニットの優位性を失った交代でした。
ボール保持においても、後半からのビルドアップの機微を野嶽寛が感じ取れていなかったり、山谷と薗田のポジショニングが被っていたり、などの場面が散見されています。
交代の責任を問うべきか、チームの底上げ不足を嘆くべきかは分かりませんが、頭を悩ませる展開だったのは間違いありません。
5.あとがき
それでも、両SHの順足配置を活かしたり、酒本の技術からチャンスが作れたのもまた事実です。特に87:30のような、エリア内でのチャンスを多く作れれば得点にも近づくはずです。
裏を返せばそれまでの時間には、逆足SHの無理・藤枝の配置などからファイナルサードの崩しはあまり奏功していませんでした。
チーム構築の問題・怪我人の問題などもありますが、個人的な感覚としては新たな生みの苦しみのフェイズに入ってきたなという印象です。
現実的な勝ち点も必要ですが、今年から構築し始めたことを今更嘆いても仕方ないので、待つしかないですかね。
次節は2週間後のアウェイ長野戦。
難しい試合になりそうですが、次節もよろしくお願いします。