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アメリカのCDCが年内でPCRをやめる!?

「アメリカのCDCが年内でPCRをやめる。CDCがPCRを否定した」

と一部で騒がれている。

はあ!? CDCがPCRをやめるってどういうこと? 

PCRが死んだウイルス断片を拾うことがあるというのは事実だとしても、じゃあ「生きたウィルスと死んだウィルスを確実に判別する」という技術ができたという話もない以上、限界を認識しつつも極めて有力な手段であることに変わりはないでしょう。

この話、Googleだと検閲されて出てこないが、Bingで検索するとひっかかる。「デマ」と言っている人もいる。

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ここでの結論は残念ながら「デマ」ということです。

「CDCの開発した、新型コロナのみを検出するPCR検査キットの承認を取り下げます」(理由はたぶん、インフルエンザと同時に調べられるようになっていないから)ということであって、「CDCがPCRの検査をやめる」とかいった話ではない。

はい、解散、解散。

ーーーここからは詳しいことを知りたい人向けーーー

概要

●CDCの取り下げるのは、自らの開発したPCR検査法の一つ(検査キット)。PCR検査法が無効とかいう話ではない。
●CDCは検査法を2種類開発。どちらもPCR検査。今回承認を取り下げるのは、新型コロナのみ検出できるもの。新型コロナとインフルエンザが同時にPCRで検出できる方については、取り下げていない
●CDCが「今後は別の検査を使って」と言っているのもPCR検査。現在251種の検査がFDAで緊急承認されているので、1つ取り下げられて、250になるだけのこと

CDCの発表は一検査法の取り下げ

CDCの発表を読んでみた。

2021年7月21日:検査所への注意:SARS-CoV-2検査用のCDCのRT-PCRに関する変更

 2021年12月31日以降、CDCは、SARS-CoV-2のみを検出するために2020年2月に初めて導入されたアッセイ法であるCDC 2019-Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-Time RT-PCR Diagnostic Panelの米国食品医薬品局(FDA)への緊急使用許可(EUA)の申請を取り下げる。CDCは、臨床検査機関がFDAに認可されている数多くの代替品の中から1つを選択して導入するための十分な時間を確保するために、この事前通知を行っている。
 認可されたCOVID-19診断方法のリストについては、FDAのWebサイトにアクセスしてください。 FDAリファレンスパネルを使用したFDA認可の分子法の性能の概要については、このページにアクセスしてください。
 この変更に備えて、CDCは、CDC 2019-nCoV RT-PCRアッセイを使用している臨床検査室と検査所に対して、FDAが承認した別のCOVID-19検査への移行を開始することを推奨している。 CDCは、SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスの検出と識別を容易にすることができる多重化された方法の採用を検討することを検査所に奨励している。 このようなアッセイは、インフルエンザとSARS-CoV-2の両方の継続的な検査を容易にし、インフルエンザの季節に向かうときに時間とリソースの両方を節約できる。 検査所および検査サイトは、臨床試験を開始する前に、施設内で選択したアッセイを検証および検証する必要がある。

 ここで出てくる「CDC 2019-Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-Time RT-PCR Diagnostic Panel」というのは、CDCの開発した新型コロナ用実時間PCR診断検査キットのことだ(後述)。

実際、CDC Diagnostic Tests for COVID-19(CDCによるCOVID-19の診断検査)というページに、CDCの開発した2種類の検査法が紹介されている。

CDCは、COVID-19の原因となるウイルスであるSARS-CoV-2を特定する2種の臨床検査法を開発した。 この2種の検査の新しい方は、インフルエンザAおよびBウイルスも検査する。 3つのウイルスすべてを同時に検査することで、公衆衛生当局は、不足する資源を節約しながら、これらウイルスの市中蔓延を減らすために必要な情報を得られる

で、この2種の検査法が以下の2つ。

1.CDC Influenza SARS-CoV-2 Multiplex Assay(新しい方。新型コロナとインフルエンザA,Bを同時検出可能)
2.CDC 2019-nCoV RT-PCR Diagnostic Panel(下の写真が検査キット。新型コロナのみを検出。近く緊急承認を取り下げ

CDC 2019-nCoV RT-PCR Diagnostic Panelの説明を読むと、

2020年の初めに、CDCは、SARS-CoV-2の患者検体の検査に使用する最初の臨床検査キットを開発した。 この検査キットは、CDC 2019 Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-Time Reverse Transcriptase (RT)–PCR Diagnostic Panel(CDC 2019新型コロナウイルス(2019-nCoV)実時間逆転写酵素-PCR診断パネル)と呼ばれる

In early 2020, CDC developed its first laboratory test kit for use in testing patient specimens for SARS-CoV-2. The test kit is called the CDC 2019 Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-Time Reverse Transcriptase (RT)–PCR Diagnostic Panel.

検査キットと書いてある。なので、PCRをやめるのではなく、この検査キットをやめるということだ。

この検査キットの写真もある。

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箱に”CDC 2019-nCoV Real-Time RT-PCR Diagnostic Panel”とあるのがわかると思う。これが年末に承認を取り下げるもの。

一方、承認を取り下げない、新型コロナとインフルエンザを同時に検査できるものは、CDC’s Influenza SARS-CoV-2 Multiplex Assay and Required Supplies(CDCによる、インフルエンザとSARS-CoV-2の多重アッセイと必要な備品)のページに説明があるが、PCRを依然として使っている。

CDCインフルエンザSARS-CoV-2(Flu SC2)多重アッセイ法は、上呼吸器または下呼吸器検体について、SARS-CoV-2、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBのRNAを検出・区別する実時間逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査です。 このアッセイ法は、感染の急性期にある患者からの検体を評価するための、高感度の核酸ベースの診断ツールである。

今後代わりに使ってほしいという検査もPCR

で、「今後はFDAで承認されている別の検査法を使え」のFDAで承認されている検査法だが、In Vitro Diagnostics EUAs(緊急承認された試験管内検査)に承認されている検査法の表へのリンクがある。

その中のMolecular Diagnostic Tests for SARS-CoV-2(新型コロナウイルスの分子診断検査)というリンクを開くと、以下のような表が出てくる。後で述べるが、この分子診断検査というのが、PCRを含む検査法である。

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上の赤枠で囲ったのが、年末に緊急承認を取り下げるという検査法。他にもたくさん分子診断検査法があるのがわかる。

この表の終わりには、251個のうち、1番目から25番目を示しているとあるので、251種類「分子診断検査法」があるのがわかる。

つまりは、今回1種類PCR検査が取り下げられるが、残りの250種類のPCR検査は引き続きFDAに承認されているということになる。

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分子検査とは、PCR検査のこと

FDAの「新型コロナ検査の基本」という文書があり、その中に各種検査の説明がある。

Molecular Test(分子検査)の説明で、「診断検査、ウィルス検査、分子検査、核酸増幅検査、RT-PCR検査、LAMP検査」としても知られているとある

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まとめ

ということで、CDCの言っているの雑にまとめると、

「ウチが初期に開発した検査法があるけれど、それは新型コロナの検出にしか使えない。それについては、年末で承認を取り下げるけれど、他にもいっぱいPCR検査法があるから、他の検査法に移行してほしい。できたら、インフルエンザを同時に調べられる検査できるのにしてもらえるといいね」

ということだ。

なので、「CDCがPCRをやめることに決めた。その背後にはビルゲーツなどがいたりして…」というのはデタラメでしょう。

はい、解散、解散。

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