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ごくごく私的な2020年本屋大賞!

芥川賞、直木賞、メフィスト賞、このミステリーがすごい!大賞・・・。
本に関する賞レースは数多あるが、中でも「本屋大賞」が最重要な賞の一つであることは間違いないだろう。

「書店員の投票によってのみ」選ばれるこの賞は、忖度が介在する余地はなく、本屋さんで働く我々と同じ本好きの人間の熱き想いが結集したものなのだ。プロ作家の視点ではなく、本好きのアマチュア(という言い方が正しいかは不明だけど)が選ぶということは、我々と近い感性で選ばれる賞ということができる。

とは言え、確かに毎年大賞に選ばれる作品は名作と呼ばれるものが多いが、候補作の中には思わず首を傾げてしまうような作品が入っていることも多々ある。

まぁ個人個人が好みで投票するならばそのような事態になることは当然と言えるが、それなら実際に自分も候補作を読んでみて、「ごく私的な」本屋大賞を発表してしまおうというのが今回の企画。

なお、本屋大賞の仕組みについては公式ページを参照いただきたい。

選考にあたって

本屋大賞は一次投票→二次投票→大賞決定という流れになるので、二次ノミネート作10本を読んだんだけど…。いやーしんどかった。ほぼ2月の1ヶ月間で全て読みきったから読書疲れがひどい。

とは言え、明確に好き嫌いは別れた。あくまで主観的に好きか嫌いかで順位を付けていったので、後から見返してみると自分の好みがはっきり読み取れるのが面白いところ。

ちなみに、自分の読書属性(という表現あるのかな?)は以下の通り。
・読むのはほとんどメジャー作品ばかり
・とは言え、あまりにもベストセラーになると敬遠することもあり
・読書ペースは平均で月に2〜3冊
・繊細な悩みや生きにくさみたいなものを描いた作品は苦手
・いわゆる女流小説は苦手
・殺人ミステリーものは苦手

つまり、いわゆるミーハーで、読書は昔から好きだけど活字中毒ってほどではなく、海外ドラマやゲームにハマる時期は全然読まない、みたいな感じ。

そんなパンピー目線で、徹底的に「好み」だけで順位を付けてみた。

大賞:「線は、僕を描く」砥上裕將(著)

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・ストーリー好み度;★★★★★
・文章読みやすさ;★★★★★

大賞はこれで決まり。候補作の中で、ずば抜けて好きだった。そして、候補作の中で一番「本屋大賞らしい」作品だと思う。
水墨画をテーマに、才能と努力、周囲の人との関わりが描かれる。過去の本屋大賞で言うと「蜜蜂と遠雷」や「羊と鋼の森」の雰囲気に近いかな。登場人物がみんないい人で好きになっちゃう。「蜜蜂と遠雷」は読んでいると音楽が聞こえると評されていたけど、本作は読んでいると水墨画が見えてくる。

公式ページには書評も載ってるし、作品中の水墨画についての解説もあって読み応えあり。
講談社ノベルズのページでは作者インタビューやメフィスト賞受賞時の選考座談会が読める。
こちらのページにも作者のインタビューあり。
こちらでは作者のエッセイが掲載。

2位:「ライオンのおやつ」小川糸(著)

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・ストーリー好み度;★★★★★
・文章読みやすさ;★★★★★

この作品はとにかく「優しい」。全てのページに優しさが詰まっていると言っても過言ではない。
ホスピスを舞台に、残された時間を精一杯生きる主人公を描いているが、悲壮感はまったくない。この作品のことを考えるだけで本当に優しさに包まれた気分になる。くどいくらいに「優しい」と言っているが、読めばその理由が分かるはず。

公式ページ。めちゃめちゃ推してる。
好書好日。作者のトークイベントの模様を紹介。
ダ・ヴィンチ。作者インタビュー。
Real Soundブック。作者インタビュー。
作者のオフィシャルページ

3位:「店長がバカすぎて」早見和真(著)

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・ストーリー好み度;★★★★★
・文章読みやすさ;★★★★★

ライトな読み心地で、すごく爽やかな後味を味わうことができる作品。タイトルを見た時点では、おバカコメディかと思ったけど、コメディと感動のバランスがすごくうまい。
書店で働く主人公と周囲の人々との関わりが不思議な感動を呼び起こす。店長のなんとも言えないキャラクターが魅力的。

小説丸。作者インタビュー。
BookBang。作者と角川春樹の対談。
ダ・ヴィンチのレビュー

4位:「流浪の月」凪良ゆう(著)

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・ストーリー好み度;★★★★☆
・文章読みやすさ;★★★★★

深いトラウマを抱えた人たちのドラマ。こういうのって本来は嫌いなジャンルなんだけど、この作品は読み始めからスッと入っていけて、最後まで心地よく読めた。読後感もすごくいい。設定の面白さと文章力の賜物だろうなぁ。
恋愛ではなくて、もっと根源的な部分でお互いを求め合う姿が心に迫る。

公式ページ。せっかく本屋大賞の候補作になったんだから、もっと力を入れて宣伝してあげてほしい…。
好書好日。作者インタビュー。
文藝春秋BOOKS。作者インタビュー。

5位:「medium霊媒探偵城塚翡翠」相沢沙呼(著)

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・ストーリー好み度;★★★☆☆
・文章読みやすさ;★★★☆☆

4位までは「すごく好み」で、ここからはそうじゃなかったもの。「ヒロインがかわいい」みたいなレビューを見ちゃって、しかも表紙イラストがラノベっぽいから、なんとなく抵抗感を持って読み始めたけど、ミステリーとしてちゃんと面白かった。
でも、伏線になる前半(というか8割くらい?)のキャラクター描写があまりにも好みじゃなくてしんどかったからこの順位で。

講談社ノベルズの特集ページ。ここは推し方が熱くていい。
好書好日。作者インタビュー。
講談社BOOK倶楽部。作者インタビュー。

6位:「ノースライト」横山秀夫(著)

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・ストーリー好み度;★★★☆☆
・文章読みやすさ;★★★☆☆

お恥ずかしながら、横山秀夫作品はこれが初めて。横山秀夫といえば警察小説っていうイメージだったけど、これは警察小説ではない。丁寧に描かれるストーリーはとても重厚で、さすが横山作品!という感じ(読むの初めてだけど)。
とは言え、なんとなく最後までお話に乗り切れなかったんです…。ただしこれは完全に世界観の好みの問題なので、作品にはまったく罪はなし。

新潮社のサイト。レビューやインタビューあり。
小説丸。作者インタビュー。
好書好日。作者インタビュー。

7位:「むかしむかしあるところに、死体がありました。」青柳碧人(著)

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・ストーリー好み度;★★☆☆☆
・文章読みやすさ;★★☆☆☆

日本昔ばなしに出てくる物語にミステリー風味を利かせるとこうなる、という作品。そのアイデアはすごいと思ったし、けっこう期待しながら読んだんだけど、すごく読みにくかった。もちろんそれはこちらの好みの問題で、事件の謎解きミステリーものってあんまり好きじゃないからである。別に誰が犯人でもいいじゃんって思っちゃうし、伏線回収とか言われてもそもそもそんなこと考えながら読んでないし(台無し)。

8位:「ムゲンのi」知念実希人(著)

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・ストーリー好み度;★☆☆☆☆
・文章読みやすさ;★★☆☆☆

いやーこれは完全に相性の問題。文章は読みやすいんだけど、世界観がどうしても好きになれないんだよなぁ。入り込めない。そんな自分が嫌だ、とは思うんだけど。

9位:「熱源」川越宗一(著)

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・ストーリー好み度;★☆☆☆☆
・文章読みやすさ;★☆☆☆☆

うーん、第162回直木賞も受賞してるんだけど・・・すみません、すごく読みづらいし何が面白いのかワカリマセンデシタ。あくまで個人の好みの問題ですが!

10位:「夏物語」川上未映子(著)

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・ストーリー好み度;★☆☆☆☆
・文章読みやすさ;★☆☆☆☆

これこれ、これなんですよ。自分が一番苦手な女流小説。いわゆる「女性ならではの視点」で女性ならではの問題や辛さを抱えながら生きていく、みたいな。すごく苦手。
でも、だからこそ逆にそういった作品が好きな人にはめちゃくちゃ刺さるんだとも思う。

終わりに

不思議なことに、候補作同士で似通ったものがなかった。それだけ人によって本の好みは違うということなのだろう。

前半にも書いたけど、全部読むのはかなりしんどかったけど、順位づけはまったく迷うことはなかった。大賞はダントツ、2〜4位はすごく好き、5〜7位は好きでも嫌いでもない、8〜10位は嫌いという感じか。

ただ、これはあくまで自分自身の現時点での好みである。好みというものはそれまでの経験やその時に置かれている環境や状況によって変化することはよくあるから、数年後に自分でこの記事を読み返すとまったく違う順位になるのかもしれない。

一つ言えるのは、自分が好きじゃないからといってその作品のレベルが低いと評価しているのではないということ。どの作品も熱烈なファンがいてもおかしくないと思うし。

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