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7/11 酒とレコードと調和の夜


4月初めに菊池寛通りのFLビル二階にオープンした「燦庫」というライブハウスがある。ミュージシャンのライブ、DJイベント、ナイトマーケットなどの幅広い活動のスペースになる、香川の新しいサードプレイスだ。


先日そこで「手放せないレコード/CD」という企画を、常連の喫茶店の半空が開催した。思い出のレコードやCDを持ち寄り、半空のマスターと共に話すという企画だ。皆が様々な音楽を持ち寄った。ジェイムズ・メイソン、中島みゆき、サニーデイサービス、ボビー・コールドウェル、ラッキーオールドサン。スピーカーからは縦横無尽にあらゆるジャンルの音楽が流れ、それぞれの思いを音に乗せて語り、夜の一角にキラキラとした空間を作っていた。


音楽はあらゆるコンテンツの中で、最も「味わうものとの調和」ができるものだと思っている。思い入れのある音楽を聴くと、いつでもそれを楽しんでいた瞬間に戻ることができる。映画や小説でもそれは可能だが、映画は短くても90分。小説ならものによっては読破に1ヶ月ほどかかる場合もある。音楽ならたった4分。アルバム一枚を丸ごと聞いても70分ほどで、作品を自分の血肉に変え、一生を共にすることができてしまう。「あらゆる芸術家の中で音楽家こそが最も愛される存在だ」とフラン・レボウィッツが言っていたが、僕は完全に同意する。


僕はノラ・ジョーンズのデビューアルバムを持っていき、代表曲の「Don't know why」と「The long day is over」をかけてもらった。何度も聞いてきたアルバムだが、レコードで再生されると、彼女のさざなみのような声と、アコースティックな演奏がより側に寄り添ってくれるように感じる。


クラフトビールを片手にしながら「長い一日が終わった」と歌う彼女の声を聴くと、こんな場所が街のどこかにあるということが、どれだけ多くの人にとって安らぎになるだろうと感じる。いい音楽を聴きながら口にする酒は、体の淵に活力を与え、生きるための大切な余白の素晴らしさを教えてくれる。


ただ僕はあまり酒が強くない。酔った勢いでマスターとかなり熱弁していたが、元来早口なので観客が聞き取れていたかどうか、この文章を書きながら、ふとそれが心配になった。

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