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読み比べコロナ本2020

                       2021/1/11記
 コロナ関連の新書新刊2冊。
 こういう本を買うとまず、検査についてどう書いてあるかを見る。検査についての理解がしっかりしていて、それをわかりやすく述べていれば合格。そうでなければ、その本はエピソードは読むが論理は追わない。
そいうわけで、

峰宗太郎・山中浩之「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」(日経プレミアシリーズ)
黒木登志夫「新型コロナの科学 パンデミック、そして共生の未来へ」(中公新書)
読み比べ。
 
 「新型コロナとワクチン」は、「知らないと不都合な真実」という副題がなぜかそこはかとなく怪しい。こういう題名には、こんな事実をしらないでしょうという(ボクがよくやる?)陰謀論的なものが多い。そう思って、PCR検査のところを開く。
・・・良い!!
 事前確率のことまで含めて、キチンと説明して、社会的検査や大量検査が意味ないことを明らかにしている。偽陰性のことはもちろんだが、事前確率の低さからくる偽陽性の問題も大きく触れているし、偽陰性については何度も検査すれば大丈夫じゃないかという議論にも反論している。ボクはこれについては、コストの問題だと思っていたのだが、峰によると偽陰性になる人は基本偽陰性になりやすい人なので検査のくり返しは意義が薄いということであり、初めて知って納得させられた。
 このような話が読みやすいのは、ひとえに山中のインタビューが素晴らしく、検査では山中が大量検査主張者の論理をいくつかにまとめて質問し、そのそれぞれに峰が反論する形になっていることである。
 山中は日本経済新聞の記者でもあるらしいが、科学畑ではない。なのに、ここまで勉強して筋を追っているの、すごい。見習え、科学部、と思ったのだが、よく考えると純粋に科学で考えているからおかしくなるのが今回のコロナ・パニックだ。科学と社会の両者を見渡せなければならないはずだ。

 その点で、残念なのが、「コロナの科学」である。感染症の歴史や対策の動きを織り交ぜて、あたかも社会的な目配りをしているように見えるが、それらがすべてエピソードに終わっている。あぁ、自然科学的頭脳には歴史や社会もこういう風に見えるのだなと嘆息する。
 ただ、エピソードはオモシロい。天皇がPCR検査の創始者であるマリスにあった時、マリスがガールフレンドとドライブしていた時に思いついた技術だと聞いて、天皇は横にいた女性に彼女とですかと尋ねる。マリスが、別のガールフレンドだというと、天皇がではもう一度大発見ができますねと答えたらしい。エビデンスを確かめようとしたら出典は記されていないのだが。
こちらは検査については、事前確率という肝心要の基礎を理解していないようで、経歴をみたらガンの専門医であった。ガンの専門医は自分のところにくる患者はすでに事前確率が十分高まっている状態なのでそれを考慮する必要がなく、検査は白黒を決定できるものという頭があるのだろう。

 どうりで、あの山中伸弥が推薦しているわけだ。ノーベル賞というのは直感(マリスも!)のたまもので論理力ではないのだな、とこの人のコロナやマスクについてのトンチンカンな発言をみるたびに思う。
 そういうわけで、これから前者「新型コロナとワクチン」を読んで「不都合な真実」を知ろう。

 この人の今回の核酸ワクチンに対する姿勢は、ワクチンはおそらく評価できるものであり期待するが、医学製薬界がまるごと前のめりになっていることに危惧するというスタンス。なので、中国が不活性化ワクチンを同時開発していることを評価している。確かに、欧米日の資本主義のもとでは難しいことだろう。


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