<正常>を救え
アレン・フランシス「<正常>を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告」
この人、以前「精神医学」で訳者の大野裕と対談しているのをFBでも紹介した。
(https://www.facebook.com/shunsuke.takagi.79/posts/pfbid021EYVK1qKfGZNVotjdJ4QcuFReb9zhMPg676eiBRr6z5JV84cJtWiSGy3UZMsTb26l)
パラパラめくってみると、思ったほど過激な内容はなく、穏当。DSM-Ⅲの頃から妥当性と信頼性をめぐる矛盾や学会の政治性を追ってきた私としては、目新しい見解は何もなさそうである。
ただ、この翻訳が講談社から出ていることの意義は大きいであろう。
「精神科の治療の最も残酷な矛盾は、それを必要としている人がたいてい治療を受けず、治療を受けている人がたいていそれを必要としていないことである」(カウチ・サイカイアトリーと揶揄されるアメリカの状況をやや誇張しすぎていて日本では必ずしもそうではないようにも思うが・・・)
「専門家は専門家らしく、身の丈にあったふるまいをしなければならない。精神科医はみずからが最も得意とするものにーまぎれもなく精神科の問題をかかえた人たちの治療にー専念すべきであり、この分野を拡大して健康だが不安を感じている人たちをとりこむべきではない。そういう人は自力でうまくやっていけるはずだ。・・・製薬企業は、薬よりも毒になる製品を無責任に売り込むという麻薬カルテルじみた所業をやめなければならない。・・・メディアは医学の過大な要求を暴くべきであり、無分別にそれを広めてまわるべきではない」
ちなにみに、著者の主張はサイエントロジーを中心とした俗流独善的カルト的反精神医学派に引用されることが多いが、その誤解を解くのも本著の目的であるという。