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「元○○」という肩書きをプロフィールから外した理由

ふと思い返した時に、だんだん当時のことを忘れていることを気づき、備忘録として記しておきたいと思ってnoteを書きました。

2020年6月末で、前職である米スタートアップの日本法人代表職(いわゆるカントリーマネージャー)を退任し、自分の会社を設立しました。それまでの20年弱もの社会人人生は全て会社員として雇用されてきたので、いわゆる会社の看板、資金、ブランドといったものはこの日を境に突如としてなくなった、ということになります。

ありがたいことに、前職に在職中からB2B営業に関する発信や #旬トレ という名の営業トレーニングを外部に対して実施してきたこともあり、営業のアドバイザーとして仕事をします!と公言した時に色々な方々からご依頼を頂くことができました。

純粋に僕の営業としての経験に基づくアドバイスを求めてくださる企業もいる一方で、当然ながら前職のモバイルアプリ業界の経験(というか人的ネットワーク)を活用したいという思惑でご依頼頂くケースも少なくありませんでした。
自分にはどのような価値が提供できるのか未知数であったのもあり、頂くご依頼は全てお受けしてきましたが、僕の前職の肩書きの影響によって頂くお仕事というのは、少なからず今の僕のやりたいこと・やるべきこととはズレが生じていました。
もちろん1つ1つのお仕事には常に全力で向き合いますし、目の前のクライアントが少しでも前進することだけを考えて議論し、問いを投げかけ、時には厳しいフィードバックをしてきました。

ウェビナー登壇やクライアントのご紹介を頂く際、「元○○の向井さんです」と紹介され、相手からするとわかりやすいし、紹介する側からすると「他に言い方ないじゃん」というのは理屈としてはよくわかるのですが、感情としては僕の中では何とも言えないむず痒さや恥ずかしさを感じていました。「今」の自分には適切な肩書きが無いのか、と。

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Twitterのプロフィール、名前の横に「元外資代表」と入れ、自分のタグとして少しでも信用度を担保するためにこの僅かな資産にすがることはどこかで切り離さないとずっとこのままだろうな、と思っていました。

素敵なご縁により前田ヒロさん率いる ALL STAR SAAS FUND の営業領域におけるアドバイザー/メンターに就任させていただき、数多くのSaaSスタートアップ企業と関わる機会が増え、Twitterのフォロワーも増えていきました。オフラインのイベント等に顔を出すと「Twitter見てます!」と声をかけて頂く機会が増え、体感としてSaaSスタートアップ業界の中で少しずつ認知されてきたかな?と思うようになりました。

それをふとした時に感じたのは、都内某所で行われたスタートアップ業界の営業の集まりの時でした。30-40名程集まったその会には知り合いは少なく、元々人見知りで大人数が苦手な僕は端っこの方で知り合いの方とお話していました。
それを見かねたのか、幹事のマツリカ中谷くんが色々な人を紹介してくれたのですが、その時の紹介の仕方が「SaaSスタートアップ界隈の営業といえば向井さんですよ」というものでした。僕は存じ上げなくても、多くの方々は「知ってますよ!」という反応で、そこから話に花が咲きました。僕の過去の経歴や肩書きではなく、今の僕に対するタグを表現してくれて、とても嬉しかったのを覚えています。

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2021年4月から、社会構想大学院大学という大学院で、実務教育研究科という比較的新しい領域で学んでいます。この科は、実務経験によって得られた情報や知識を、学術的に体系的に整理し、再現性のある「形式知」として実務の世界に循環させる、ということを狙った科ですが、僕は暗黙知が多く属人化している領域が多い営業に関して「実践的な営業の知」を構築することを目的にしています。
元々お勉強が超絶苦手で嫌いだった僕はたくさんの本を買い、2023年1月目処で専門職学位論文を仕上げる目標に向けて頑張っています。

この大学院の入学は、勝手に一方的に師匠化しているスケダチ代表の高広さんに勧められて、1ミリも疑わずに即断即決したのですが、なぜ何の不安もなく即決できたのか、願書を出すときに改めてこう思ったのです。

過去の経験を切り売りして細っていくことは無いようにしよう

良くも悪くも、実務経験が20年近くあると、自身の経験に基づく意見や主張が正当であるというバイアスがかかります。なぜそういうバイアスがかかるのか、ということを考えると、おそらく、「自身の過去の経験を否定すると存在価値がないと思ってしまうから」ではないかと。
過去の経験は否定するものでは決してないけど、それを後生大事に持ち続け、それを自身の基盤として今後の理論を構築してしまうと、文字通り「古臭い」ものになってしまうと思っています。

昨今バズワード化している「アンラーニング」は、言うのは容易いけど、実際に行動に移すのは難しいと思っています。アンラーニングできている人からすると、「こうやればできるよ」とか「なぜできないの」と思ってしまうと思いますが、これらは強者の理論です。マネジメントでも起きがちですね。
このあたりは、他者から言われること、つまり外発的な要因は作用しないと思っています。思想や価値観、思考パターンにアプローチするには内発的な要因を促していくことがとても大事だと思っています。
僕自身の振り返りで言うと、ポイントは「危機感(というか不安)」でした。

繰り返しますが、自身の頑張ってきた経験、それによって得られた実績、それらを第三者が理解しやすい形に整理したことは否定することでも目を背けることでもないと思います。
ですが、僕で言うと、所詮20年・4社の経験です。井の中の蛙もいいところ。新たな情報、新たな知識、新たな思想、新たな価値観に出会い、考え、それを知識として伝えていくことが自分のアップデートに繋がり、それが僕の周りにいる人たちにより大きな気付きや示唆になるという好循環を生むと思っています。

そういう考えがあり、元外資代表、という肩書きを2021年6月をもって取り外し、向井俊介、という個人としてリスタートした、というわけです。

おわり。

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