【読書メモ】たった一人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング
(自身の読書メモを折角ならばということでnoteでシェアしています)
既に成熟したスマートニュースの事業成長角度を更に上に押し上げた立役者である西口さんの書籍について。
【著者】
西口一希さん
1990年大阪大学経済学部卒業後、P&Gジャパン マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターとして、『パンパース』『パンテーン(PANTENE)』『ヴィダルサスーン』『ヴィックス』『プリングルズ』などのブランドマネジメント担当。日本初のECRプログラム導入のマーケティング担当、日本と韓国においてショッパーマーケティング部門を創設。2006年にロート製薬に入社、執行役員マーケティング副本部長を経て本部長として、『肌ラボ』『OXY』『オバジ』『50の恵』『デ・オウ』『メンソレータム』ブランドのリップクリームと日焼け止め、ロート目薬ブランドなど40以上のブランドマーケティングを推進。2015年4月よりロクシタンジャポン 代表取締役社長として従事し2017年5月からはスマートニュースでシニア・ヴァイス・プレジデント/執行役員 マーケティング担当を務めている。
全体の所感
マーケティング活動において「答えは現場にある」と考えているマーケターは多いと思いますが、その現場におけるインサイトを事業戦略にまで昇華させられる人はそう多くはないんじゃないでしょうか。また、様々な定量データを取得しておきながらも宝の持ち腐れになっているだけ、というのも企業あるあるかと思います。この書籍はN1インタビューから得られた定性データを起点に定量データを活用しながら仮説検証し、プロダクトとコミュニケーション戦略へと繋げていくセオリーが体型的に語られている貴重な書籍だと感じました。(スマニューの戦略が赤裸々に語られていて、それもこのセオリーに強力な説得力を付加しています)
本書籍で述べられているセオリーはスタートアップのPMFフェーズ、そして競合を意識しながらの拡大フェーズどちらにも適用できるセオリーだと思います。
真に差別化要因をもたらせるのは「プロダクトにおけるアイデア」であり、マーケターが「コミュニケーションにおけるアイデア」のみを守備範囲だとするのはナンセンスであるというのが非常に腑に落ちました。そういう意味で今、マーケターには全社的なコミュニケーション・エグゼキューション力が求められる時代になっていると改めて思いました。
さて、ここからは自身が特に心の残った点を書き残しておきます。
「顧客から考える」とは?
・一人の顧客を起点に商品やサービスの新たな可能性を見つける概念である
・一人の顧客を徹底して理解することから有効な打ち手を導き出して拡大展開し、対象とする顧客セグメントの人数や構成比の動きを見ることで、マーケティング投資の効果検証まで行う
たった一人の顧客の意見を聞くこと=「N1分析」
人の心を動かせる商品・サービスの魅力や訴求=「アイデア」
と定義する
「顧客ピラミッド」のフレームワーク
ビジネスの対象とする顧客を5つに分解する「顧客ピラミッド」(別名「5セグマップ」)
顧客ピラミッド作成のための調査ツリー
更にブランド選好度(次回の購買意向の有無)の軸を加え顧客全体を9つに分解する「9セグマップ」
右へのセグメント移行が販売促進戦略、上への移行がブランディング戦略
顧客起点マーケティングの運用フロー
1.顧客ピラミッド作成
-簡単な調査で顧客を5セグメントに分解
2.セグメント分析
-行動データと心理データから描くセグメントの基本的な顧客特性を分析
3.N1分析
-セグメントごとのN1顧客にインタビューして認知や購買のきっかけと深層心理を分析、セグメント間で比較することで「ロイヤリティが上がるきっかけ」を分析
4.アイデア創出
-N1分析を元に、その顧客の行動と心理状態を変える「アイデア」を考案
5.アイデア検証
-「アイデア」を定量的調査でポテンシャル評価・実践した後に顧客ピラミッドの変動を評価
マーケティング「アイデア」とは何か
・独自性と便益の四象限で表すことができる
・プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアに分けられる
・コミュニケーションアイデアだけでは限界がある
・プロダクトアイデアがあってこそ本当の差別化が実現できる
・プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアを掛け合わせる思考性が必要
顧客ピラミッドで考える5つの戦略
1.ロイヤル顧客のスーパーロイヤル化
2.一般顧客のロイヤル化
3.離反顧客の復帰
4.認知・未購買顧客の顧客化
5.未認知顧客の顧客化
自社と競合のオーバーラップ分析
このセグメント間のギャップ分析を競合と合わせて実施・継続運用することでより競合を意識した戦略構築が可能になる。
今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。