コロナで変わる米国の消費――地場の品アピールする好機に
記事・書籍の執筆や企業の広報支援を本業にしている筆者だが、2020年から個人的にインターネットでの物販事業に乗り出した。メインは米アマゾン・ドット・コムを通じた米国EC(電子商取引)市場での販売だ。
「日本の良品をもっと世界に知らしめたい」との思いから、というのも確かにあるが、コロナで本業がヒマになり、何かできることを探して始めた感じもある。
米国のEC市場規模は2019年に69兆円(記事掲載当時)と日本の2.7倍もある。2億7000万人超が利用し、世界中の商品を「飲み込むように消費」する。米EC市場の動向は「ものづくり日本」のこれからにも影響すると見て、筆者はトライアンドエラーを繰り返している。
年率10%以上で堅調に拡大してきた米EC市場も、新型コロナウイルス感染症の拡大で変調をきたし始めた。20年3月13日にトランプ米大統領が非常事態を宣言してからは、消費者の行動も大きく変わった。4月上旬にはアマゾン自体が感染リスクに配慮して物流業務を一時ストップした。
同年3月以降の米国で、どんな消費動向の変化が起きていたのか。小売調査会社のスタックライン(米ワシントン州シアトル)がまとめた興味深い調査結果がある。3月に米国の全ECサイトで、1年前の2019年3月に比べて、どんな商品が急激に売れ出したか、逆に売れなくなったかをまとめたデータだ。
伸び率で最も大きかったのは「使い捨て手袋」で、前年同月の7.7倍となった。これはコロナへの対応としては当然だろう。ほかにも保存可能な食品や衛生用品の販売額は急拡大した。
注目したいのはコロナ後の生活変化を感じさせる商品の伸びだ。例えば同7.5倍に増えたホームベーカリー。これは在宅の時間が増え、外出してパン屋で買うのが難しいことなどもあったろう。
ウエートトレーニング機器は同4倍強に、フィットネス用品も同2・7倍売れた。ジムに通えない事態が続いて需要は高まったのだろう。「卓球用品」が同1.9倍に拡大したのも面白い。
在宅ワーク関連製品も伸びた。パソコン用モニターは同2・7倍に、オフィス用デスクは同1・9倍となった。自家用発電機も同3・1倍になるなど、自宅で仕事の環境を整えたいとの意識が働いたようだ。
逆に何が売れなくなったか。首位はスーツケースで同77%減。スマートフォン普及の影響もあるだろうが、カメラも同64%減となっており旅行関連商品の低迷が著しい。
女性の結婚式向けドレスは同63%減に、紳士用フォーマルスーツは同62%減に、イベント・パーティー関連用品も同55%減になるなど、皆で集まって過ごすイベントの需要減退を反映した。
このほかサングラス(43%減)、キャンプ用品(39%減)、ゴルフクラブ(33%減)などレジャー関連商品も軒並み低迷した。
「自粛しない権利」を求めたデモの広がりや、ミネソタ州で白人警官による黒人暴行死事件を発端に暴動が起きた米国には波乱要因が充満し始めた。混乱が深まれば消費経済全体に影響を及ぼしかねない。
海外輸出が大企業の仕事と考えられてきた日本でも、徐々に個人の海外輸出ビジネスが拡大し始めている。個人がセレクトした日本やアジアの商品をSNSなどを通じて海外に発信しながら売ることは、青森県内を含めて世界中どこにいても簡単にできるようになった。
少子高齢化で縮む国内需要を補うには、インバウンドを拡大して海外観光客に売るか、海外の成長市場に日本製品を直接届けるしかない。コロナ禍が長引きインバウンドの回復が見込めない今、気軽に利用できるアマゾンのようなECプラットホームを活用すれば、地域の製品をもっと海外へとアピールする経験を積むチャンスにもなる。
まだ「小遣い稼ぎ」程度の規模だが、将来は郷里・青森の産品を売れるような事業者になれないか、とも夢見ている。
(初出:2020年7月7日付「デーリー東北」紙:為替レートや社会や経済の状況については掲載時点でのものです)
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