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【日経リスキリングから③】「ホカホカを売るしくみ」井村屋、肉まん・あんまんが始まり(ヒットの原点)
日本経済新聞社の日経電子版にある「日経リスキリング」(掲載時の名称は「NIKKEI STYLE」)に書いた記事です。この日経リスキリングに残っている、ロングセラー商品の歴史的な背景を探る「ヒットの原点」シリーズからご紹介していきます。
北国で雪の便りが聞こえ始め、寒くなってくる初冬の頃になると、コンビニエンスストアなどの店頭で存在感を放つ「肉まん」「あんまん」などの、いわゆる中華まん。その発祥が、三重県津市に本社を置く食品メーカー、井村屋だ。
記事は2021年12月21日と28日に公開。寒くなるタイミングで取材した。
冬の風物詩的な商品となっている「肉まん」や「あんまん」。実はアツアツの蒸したてを店頭で食べられるよう、スチーマーで蒸して提供する方法を考案し、最初に売り出したのは、津市に本社を置く食品メーカーで、氷菓「あずきバー」でおなじみの井村屋だ。「冬のファストフード」として日本人を温めてきた井村屋の「肉まん・あんまん」はいつ誕生し、どうやって広まったのか。秘密を探った。
寒い冬の日に店先でアツアツの加熱済みフードを食べられる――。「肉まん・あんまん」で知られる井村屋(津市)が広めたこの売り方はコンビニエンスストアの台頭とともに全国に広がった。その過程では食べ物の「店頭加熱」を阻んでいた規制の打破にも取り組んだ。おでんや唐揚げといった「コンビニ食」は今では当たり前の存在だが、誕生の陰には、規制緩和を呼び込んだ井村屋の奮闘があった。
小売業界で「コンビニエンスストア」という新しい業態が発展していった時流に乗り、あたたかい肉まん・あんまんなどは全国に広がった。その後も「ピザまん」「カレーまん」など新商品の開発で各社が競い、市場が広がっていった商品だといえる。
井村屋といえば夏の季節には「あずきバー」が看板商品だが、その夏のヒット商品が冬には売れなくなる。その「売れなくなるアイスクリーム商品の流通経路を、どうにか活用したい」との思いから、考え出したのが店頭で売る肉まん・あんまんだったという。
(了)
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