また死体が見つかるあの街に

”運命”を信じるかと問われたら、私は信じたいと答えると思う。

消しゴムを拾う時に手と手が重なるとか、道でぶつかった瞬間に恋に落ちるとか、運命ってよくわからないけれど、多分信じてる。

駅のホームですれ違った彼は、きっと私のことは覚えていない。だけど、私は彼のことをはっきりと覚えていたりする。

渋谷駅22時54分発の湘南新宿ライン。ボックス席の窓際。東京の夜を見たかった。

渋谷駅の工事はいつ終わるのか。ホームが一箇所になるとか再開発とか。2020年までに終わらせるのかな。そんなことを考える。きっとずっと東京は動いてる。でも原宿竹下通りはタピオカやさんがしまったら人がいなくなるのも知ってる。

眠らない街とかって言うけれど眠らないんじゃない、寝られないの。誰かが言ってた。きっと私が好きな人もそこに住んでいて、寝られない。なんでこんなに醜くて美しいの、東京。憧れなんかじゃない。でも私も寝られない街の住人になって見たい。

きっと死ぬまで他人として生きて行く、でも私は忘れない。光る蛇に乗っかって、眠れない街。ホームでうずくまるサラリーマン、時計を気にしながら階段を駆け下りて行く女性、顔を赤らめてべったりのカップル、ネオンの街には孤独が転がって、誰かを殺してく。

眠れない街さよなら。イヤホンから聴こえてる音楽の音量を上げた。曲名は知らない。そこに立っている、朝、駅のホームですれ違った人。運命信じたいって言ってたじゃん。全部嫌いだ。優しい街が。人間のドロドロしたものが集まるあの場所の方が心地いいのはなぜなのか。またあの街のホテルで死体が見つかったらしい。そんなのばっかり。みんなきっとどこかで孤独を求めてる。あの人の笑顔が嫌い、態度が嫌い、見た目が嫌い。そんな単純な理由。

ああ心がギュってなる。この感覚。きっとあの街にまた向かう。誰かと同じ孤独を求めながら。あの街には運命ってものがどれくらいあるんだろうね。

42分間の蛇の旅は終わって私は優しい街に帰ってく。夢なんかわからないし、氷が少しずつ溶けていくみたいに、自分が減っていく。何もわからないのに、どうにかしたくてきっと私はまたあの街へ行くの。また、死体が見つかるあの街に。

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