第49回読書会レポート:野上弥生子『真知子』(感想・レビュー)
(レポートの性質上ネタバレを含みます)
バタバタしており、レポートが遅れてしまいました汗。
(この間にお陰様で無事に挙式を終えることができました^^)
3月24日に開催した読書会のレポートがやっとできましたのでアップします!
9名の方にご参加いただき、そのうち3名の方が初参加の方でした\(^o^)/
絶版本を課題本にしてしまい、人が集まるのか不安でしたが、無事に沢山の方にお集まりいただき、とにかく盛り上がりました!
本当に『真知子』を選んでよかった♪
読み込むほどこの作品を絶版にする意味がわかりませんヽ(`Д´)ノプンプン
強く復刻を望みます。
日本の若者に警鐘を鳴らしてくださった野上弥生子女史に敬意を!
参加者の皆さまの感想
独立精神
結婚に対してまじめ
女性らしい
面白い!
解像度の高い作品
ピエール・ブルデューっぽい
100年後の社会学
『アンナ・カレーニナ』に似ている
昼ドラ要素にキュン♥
恋愛体質
母親の視点で読めた
女性に厳しいのでは?
コロンタイズム
真知子と米子の間に友情は成立しているのか?
シスターフッドでも読める
選書の理由:一行目を読んで決めました!
と最初の一行目で私の心を鷲掴みしていった『真知子』
偶然にも私自身の挙式が決まってからの読書会でしたので、これは神様が私に与えてくれた課題本だわ、と即決しましたよ
冒頭から女性の結婚問題についてズバリ書いていくぞ、という意気込みが率直に伝わってきます。
もちろん結婚問題のみならず、三角関係やら社会主義運動などさまざまな切り口で読み解ける名著『真知子』ですが、今回はやはり、関との恋愛関係に絞ってレポートをまとめていきたいと思います。
寒村出身の革命運動家の関青年とは、親友の米子を通じて知り合った
中肉のかっこうのいい身体つき。だけれどもよそよそしい冷淡な態度が鼻につき、第一印象は良くはない
しかしブルジョア社会に辟易していた真知子は、階級戦線の闘士として活動する関の姿に魅かれていく
山は何と言っても……関の背徳
こうしてあらためて読み直していくと、真知子と関のちぐはぐな会話が目につきます。
関と真知子の関係は、米子が関の子を孕んでいたという”ダイナマイト”によって粉々に寸断されました。
階級に抗う青年たちは、「意地悪になれない」が故に女性を傷つけていく。
自由・平等という正義を盾に世の中へケンカを売るなら、いわゆる"意地悪"を貫徹する覚悟と責任を引き受けなければならないはずです。
自由と平等を唱えるのであれば、女性への搾取についても当然正すべきでは?
という野上女史からの問いかけがみえてきます。
明治~昭和にかけて『赤い恋』の一大ムーブメント:コロンタイズム
さまざまな意見が挙がる中で私がびっくりしたものが、初参加の方がおっしゃった「コロンタイズム」という思想をもとにした解釈でした。
初めて聞く思想でしたが、野上女史はそれを曲解している日本の若者に警鐘を鳴らしたかったのだという意見にも頷けました。
コロンタイ女史はマルクス主義的女性解放論者であり、男女の平等を訴え、妊娠中絶法の確立など母子保護や女性解放のために尽力した人物です。
男性による女性搾取の解消こそが真の社会主義国家であるとして女性の自立を促し、その要求は性の開放にまで及びました。
それが「性的な欲求の充足は、一杯の水を得ることと同じくらい単純でなければならない」といった表現になったのでしょう。
取り違えやすい危うい表現ですが、案の定、伝言ゲームよろしく日本の左翼青年に届いた頃には曲解されて”バズった”ようです。
つまり、搾取に甘んじていた女性たちへ向けて、力強く男性と対等であろうという理論を逆手に取り、
「一杯の水のように軽くこうぜ!今どきそうだろぉ?」と女性を追い詰めていったのでした。
(いやだから、男が言うな!って!)
コロンタイさんは生まれる時代が早すぎたのかもしれません。
もしくは、開放の前に拒絶の精神を立脚させるべきだったと思います。
いずれにしてもコロンタイ女史の思惑とは裏腹に違う方向へと言葉が暴走していったのでしょう。
水一杯理論は「意地悪になれない」階級戦線の闘士にとって、もってこいの言い訳となったのでした。
歪みが『真知子』のテーマ
男とは、女とは、結婚とは、家柄とは、、、
そこに潜む歪みが『真知子』のテーマでもあるのではないでしょうか。
真を知る子。。。( ゚д゚)ハッ!
明治から昭和初期に流入した諸外国の様々な思想が、どのように受け入れられたり、拒絶されたりしながら、何が後世に引き継がれていったのか。。。
日本の未来を憂い、警鐘を鳴らした野上弥生子
その作品が、なぜ絶版なのか???
あらためて『真知子』の再版を望みます!
(2024年3月24日日曜日開催)
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