第47回読書会レポート:大野晋『日本語の起源 新版』(感想・レビュー)
(レポートの性質上ネタバレを含みます)
2024年最初の課題本は、
大野晋先生の『日本語の起源 新版』にしました。
お陰様で満員御礼でスタート!
でも蓋を開けてみると無断欠席の方が二人も~ (ノД`)シクシク。
もちろんドタキャンはOKなのですが、
マナーとしてご一報いただきたいものです。
相互に気持ちのいい空間作りへのご協力をお願いします。
とはいえ大野先生のご著書はさすがに一筋縄ではいかず、盛り上がりすぎて時間オーバーしてしまいました汗。
無意識のうちに日本人のDNAを揺さぶられたのか?
人数が減ったおかげでなんとか収まり、結果オーライでしたけどね(^_-)
参加者の皆さんの感想
・大野先生が上から目線で嫌だった!
・一語一語うんちくがすごい
・いい切ってるけど本当かな?
・フィールドワーク
・難しい・考古学
・精神世界・概念
・稲作
・海を渡る技術
国語学会のバチバチ感がそこはかとなく読み取れる?笑
大野先生は国語学の大家でいらっしゃいます。
国語学とは、日本語の文法や音韻、語彙、方言、歴史などなど、日本国民の言語を研究対象とする学問です。
理系のように答えがはっきりとしないこともあり、実は主張による派閥争いがバチバチで、日本文学専攻ご出身の方からは「国語学の先生は怖かった」という思い出話がでるほど、難しくて硬い学問です。
参加者さんからも「上から目線の言い回しが目についた」という感想が聞かれました苦笑。
そんなバチバチの国語学会で異彩を放つ「タミル語起源説」を提起した大野先生。
大胆な発想を緻密な検証によってこれでもかと突き詰めていく様は鬼気迫るものがあり、
「日本とは何なのか」に生涯を捧げた先生の気迫を感じます。
大野先生に救われました~(*´ェ`*) 私はタミル語起源説を信じます!
大野先生の渾身のタミル語説は私を救ってくださいました。
ここは私を救った文章を引用しながら進めていきましょう。
そうですよね!!
日本語でタカには尊い響きがありますよね~~!
この感覚、日本人なら肌でわかりますよね♪
私の名は貴子なので、
これには大変気分がよくなりました。
しかし数年前に、路頭に迷って中国語の授業を受けていたときに、講師の方から申し訳なさそうに遠回しに次のように言われたことがあるのです。
貴子は中国ではあまりいい名前ではない。
身体的なサービスを提供する悦びを男性に与える女性を暗に表すのよ、と。
ガーンΣ(・∀・;)なんだそれは!
そんなはずはない!
なにかの間違いだ!
ショックすぎるΩ\ζ°)チーン
そこから私は自分を、名前を、恥じるようになっていったのです。
でも、大野先生は違いました。
本書で以下のように書かれています。
こちらの説のほうが、日本人ならすんなり受け入れられるはずです。
ということはやはり、漢字はあくまでも日本語の音を記録する便利なツールとして後から取り入れられただけであり、
音はそれまで使用していた日本語のまま、近しい意味の漢字をなんとなく充てて使用しだした、と当然そうなるわけです。
さらに続きを引用します。
このように当時の状況を考えると、やはり文字よりも先に物とその名前が日本に入ってきていて、後からやってきた漢字は便宜上ただあてただけであると。
だからこそ貴子という漢字の使い方や意味合いが日本と中国とでは肌感覚に差が生じる一方、
逆にタミル語では音の響きと感覚が日本語と一致するのだ、という前提は全く違和感がありません。
大野先生によって解明されたこの有史以前の大きな流れは、現代でも無理なく筋が通っているのです。
古代は海運のほうが発達していたという前提:日本はターミナル
考古学研究では、古代の文化伝播は舟によると考えるのが定説だそうです。
古代では、切り拓かれた道路がない地上のほうがよほど危険であったという。
なるほど現代人には見落としがちな視点です。
ということは、本当に想像を遥かに超えた遠距離の交流があったと考えても言い過ぎではないと思いますし、実際にその痕跡もあるのです。
ここを受けて、初参加の方から「当時は国境という概念もなかったはずでは?」という意見があがり、本当にそうだなと唸りました。
今の私達の常識とされる世界観ではとうてい予見できないことがまだまだ沢山あったはずです。
大野先生はこの視点を取り入れた上で、日本は縄文時代にオーストロネシア語族の言語が使われていただろうことも認めています。
その後南インドから、文字は持たないものの稲作や金属器や機織りの技術を持った文明人が渡来し日本を席巻した。
さらにその後には中国の影響が強まってきて、そこから漢字を学び文字の時代に入り、それを万葉仮名として応用し、仮名文字という文字体系を作り上げたのだと。
こうして大野先生は「日本とは何なのか」という終着駅にたどり着いたのでした。
ズバリこの本のメインディッシュは、巻末の「日本語とタミル語の対応語一覧」だ!
とにかく大野先生は本文では懇切丁寧に検証して論じていらっしゃいますが、そんなことよりも、とにかく巻末の一覧表をみれば、一目瞭然、誰しもぐうの音もでないのではないでしょうか。
考古学的見地なども取り入れ慎重に証拠を積み上げた上で、規則正しく整然と巻末に収められている約300語に及ぶ日本語とタミル語の対応語一覧表は圧巻です。
この一覧表を見れば、たまたま偶然というには、あまりにも一致しすぎている、いやこれはもう同じじゃないか~い! となってしまいますね。
タミル語起源説反対派の人は、まずはこの一覧表を瓦解してからにしてほしいな~思います。
タミル語説はまったく突飛な考えではないといえるのではないでしょうか。
この研究がさらなる発展を遂げていくことを願わずにはいられません。
ところであなたは、
もうここは嫌だ!大海へ漕ぎ出してみよう!
と思ったこと、一度でもありますか?
(2024年1月21日日曜日開催)
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