うふふ。な妄想を|舞台衣裳家・堂本教子「素敵な妄想」WS開催レポート
本記事は、2022年9月23日〜25日に開催されたサンプル・ワークショプ2022「起こす」の開催レポートです。
(執筆:星洸佳 編集:松井周の標本室)
はじめに
みなさんは最近妄想していますか?
私の話になりますが、物心ついた頃は妄想ばかりしていました。スパンコールの付いたドレスを着て、プラスチックの指輪をはめて、魔法のステッキを持って、かぼちゃパンツを履いた王子様が空を飛んで迎えに来てくれると信じていたあの日。幼き私は妄想にうつつを抜かして、プリンセスにも魔法使いにもなれないまま、一人前のおとなになりました。おとなになっても妄想していたい!とあがく私がレポートを書くのは、舞台衣裳家の堂本教子さんによるワークショップです。
「素敵な妄想」というワークショップタイトルとともに参加者の皆さんの勝手な妄想をお伝えできればと思います。
堂本さんと舞台芸術との出会い
堂本さんは、京都の学校で陶芸を学ばれていたときに、大駱駝艦の舞台を見て、舞台芸術の世界に触れられました。
そこから、大駱駝艦の舞台美術のお手伝いや、スーパー歌舞伎にて衣裳のお手伝いをしながら技術を学び、現在はコンテンポラリーダンス、舞踏、オペラ等、踊りを中心に様々な衣裳製作を担当されています。
舞台衣裳とは、第二の皮膚
これまでの堂本さんが手掛けた作品は、変わった「素材」を使った衣裳が多く、紙、発泡スチロール、防虫網をグルーガンで接着して生地にする等様々…!
普段生活していて思いつかないような素材がとてもきれいで惚れ惚れしました。
かばんを着たり、下駄を頭につけたり、仏壇を背負ったり…
生地を直接見に行くより、ホームセンターに行って
これをかぶったらどうかな?背負ったらどうかな?と勝手な妄想を行うとのこと。
身近なものを衣裳にしていくユーモアが、堂本さんの衣裳に沢山籠められているなぁと思いました。
堂本さんにとっての舞台衣裳製作とは、第二の皮膚を作ること※。
素材から生み出される皮膚感を大切に制作していると言っていたことが印象的でした。
(※第二の皮膚の考え方はマーシャル・マクルーハンのメディア論を発端とします。)
ワークショップは、コロナならではのアレをモチーフに!
いよいよ衣裳を考えていくワークに移ります。
今回はコロナ禍での開催ということで「マスク」をモチーフに衣裳を考えていくことになりました。マスクはこの2年で急に、していないと恥ずかしいような、まるでパンツのような感覚の「衣服」になりました。平安時代の烏帽子(えぼし)や、現在の下着のような、なくてはならないものになったのです。では、もしあの人がマスクをするとしたらどんなマスクだろう…?マスクを衣裳として捉え、妄想を膨らませていきます。
ワークショップ① だれにマスクを作りたい?
まず、参加者ひとりひとりが、だれ(人物でも生物でも、実在でもフィクションでも、なんでもOK)に「マスク」を作りたいのか妄想を膨らませます。
自分のおばあちゃん
頭に花が咲く人(花が葉っぱに埋もれて見えない人)
ユニコーン
近所の怖かった人が穏やかになるようなマスク
サンバを習っている友人
キルスティン・ダンストがハリウッド版の口裂け女を演じるときにつけるマスク
サボテン
ニコラ・テスラ(彼の発明したマスクをつけてみたい)
女ヤンキーのボス
ハヌマーン神
火星に移住した時に火星人に配る用のマスク
等、個性豊かなラインナップとなりました。
ワークショップ② グループでマスクのイメージボードを作ろう。
作りたい対象が似た者どうしで集まり、マスクのイメージボードを作ります。
だれかひとりを対象に決めて作っても、みんなのモチーフを合体しても、ストーリーを作ってもOK!妄想は自由なのです。
各グループ妄想を膨らませて作った素敵なマスクをご紹介します。
・サボテン/頭に花が咲く人チーム
・おばあちゃん/近所の怖かった人チーム
・ユニコーン/火星人/ニコラ・テスラ/ハヌマーン神チーム
・女ヤンキーのボス/口裂け女/サンバチーム
個性豊かな面々でしたが、グループ内で良くまとまった!と堂本さんから拍手を頂きました。
ここからさらに、完成したマスクをつけて踊る、シーンを作る、デザインを言葉にする、動きにする、音にする…等、妄想が広がってきそうだ…!と感想が飛び交っていました。
終わりに
ひとりでする勝手な妄想も楽しいですが、
グループワークを通して、自分だけでは思いつかなかった妄想がポンポン生まれてくる過程が面白かったです。これこそ、素敵な妄想ができたワークショップでした。
舞台の衣裳じゃなくても、毎日着るお洋服に妄想をちょこっとプラスしたいと思い、魔法使いをイメージして購入したシャツをこっそりジャケットの下に忍ばせて、マスクの下でうふふ。となりながら、朝の満員電車に乗り込むのでした。
堂本さん、ありがとうございました!
サポートは僕自身の活動や、「松井 周の標本室」の運営にあてられます。ありがとうございます。