LGBTQ+が安心して行ける神社はあるか(2月20日〜2月26日の日記)
■2月20日
引き続き仙台。朝市に行き、ホタテやお刺身などを食べる。オット氏はビールも飲んでいた。仙台の人はやさしく、話しやすい人たちばかりでなんだか心あらわれる。
新幹線に乗る前に牛タンも食べ、いざ帰京といったところで、些細なことで私は怒り爆発してしまう。ただの雑談から「自分は大事にされていないのかもしれない」という思いが溢れてコントロールできなくなる。いつものパターンでもある。新幹線に乗りこみ、辟易したオット氏に「眠ってみれば?」と言われて目をつむったらパニックが収まった。
一件、友達の予定を断る。夢に向かって邁進中の友達と、母親になった喜びを押し付けてくる友達に会うのは、今の私にとってしんどい。
■2月21日
通院日。ここ一ヶ月のことや、昨日新幹線でブチギレてしまったことなどを話す。主治医笑っている。「よく自分のことを理解できるようになってきているんじゃない?」と笑顔で言われる。主治医がなかなか次の予約日の話をしないものだから「私ってもう来なくてもいいってこと?」と事の真髄に迫る質問をしてみる。「いいよ」と軽くひとこと。
え、もう来なくていいということは、境界性パーソナリティ障害の症状が改善しているということ? 私はもう大丈夫ということ? などと具体的な質問をするたび主治医は「うん」という。主治医自身からははっきり「もう来なくても大丈夫」と言わない。そういう態度が消化不良で、この人はなんだんだろうという気持ちになりつつ、薬がなくなったタイミングで来院するという話でまとまる。
定期通院しなくてもよくなった。これは事実だが、主治医の態度が煮え切れず、なんだからふんわりしたかんじ。私は本当によくなっているの?
夜、最近はころっと寝てしまう。
■2月22日
いよいよ花粉が苦しくなってきたので病院で薬をもらう。不思議な薬の出し方をする病院だと別の医者から指摘されたり、オット氏が盲腸の誤診を受けたりした、あまり信頼できない病院だが、近所でそこしかやっていなかったので仕方なく。お昼は冷凍しておいたパスタを温めて食べた。
■2月23日
厄祓いに行ったときに聞いた神主の説法が苦しく眠れない。厄年だからといって厄祓しなくてもいいのではと悩んだが、今年校正の仕事を始めたいし、何かあったときに厄祓いしたから大丈夫という言い訳にするために厄祓いをした。
「みなさんには必ずお父さんとお母さんがひとりずついます」というきつい言葉から始まったその説法は、さらにその上にはおじいちゃんとおばあちゃんが四人いて、ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんは八人いる。そうやって命は繋がってきたと考えると尊い、親を祖父母を大切にしようといった話。命は必ずつながっているよという話。
ここは単立系の神社だから、政府の息がかかる神社本庁とは離れているはずだから、そういった伝統的な家族感を押し付けてくるはずないだろう。そうたかをくくっていたのが大きな間違いだった。私が気分悪くなっているとなりで、「うんうん」と納得しながら話を聞く隣の友達や、初宮参りをしに来た家族連れの微笑んだ顔を見ると、自分がこの世界にたった一人で誰にも理解されない嫌悪感を抱えていることが、寂しく、悲しくて、このわだかまりが取れる日なんてもう来ないのかもしれないなと絶望した。ないものにされることには日常的に慣れているが、ふとしたときに伝統的な家族感の価値観に引きずり込まれるこの世の中は、あまりにもつらい。きっと同性同士のカップルの元に生まれた子どものことも、現状の婚姻制度を使って“結婚”をした私のようなノンバイナリーな人間のことも、生殖や性愛を必要としないで生きる人のことも、神主は想像していないんだろう。つらい。ものすごくつらい。
■2月24日
ラジオで感銘を受けたジャーナリスト北丸雄二さんの本を熱心に読む。校正の勉強そっちのけで、最近はあまり集中力もない。
■2月25日
仕事上でかかわった恩師に会いに赤羽まで行く。原因不明の病である日突然倒れ、退職を余儀なくされたその人は、歩くスピードは亀みたいに遅く、100キロ以上ある太った身体を重そうにまとっていた。頭ははっきりしているのに、身体に自由がきかないという状況はどれほどつらいことなのか、私には知る由もない。ただ、彼から漂う悲壮感がやりきれなさを物語っている。
身体が理由で、大好きなことから離れざるを得ない状況になったときの無念さを考えると、健康寿命を保持したまま長生きをしたいと思った。しかし今日またタバコを吸ってしまった。
■2月26日
日曜日、家で原稿書きなどを適当に。夕方、塩や砂糖入れに入れる、珪藻土素材のスティックを買いに行く。ガチガチに固まってしまった砂糖を使う時はいつもスプーンでこそげ落としていたのだが、珪藻土が水分を吸ってくれるようだ。
買い物の帰り、近所のミスドに寄ったらバイト初心者であろうかわいい女の子に、かわいい接客をされた。初々しく一生懸命なその姿がまぶしくて、なんだかうれしくなった。年をとったのかもしれない。
今度一人暮らしするタイミングがあったら猫を飼いますね!!