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【THIS IS MY CLUB】相澤陽介(北海道コンサドーレ札幌 クリエイティブディレクター / White Mountaineering デザイナー)

新型コロナウイルスの影響による約4ヶ月の中断期間を経て、ようやく私たちの日常にサッカーが戻ってきた。Jリーグ再開のタイミングに合わせて、「DAZN Jリーグ推進委員会」では、「THIS IS MY CLUB –FOR RESTART WITH LOVE-」と称して、スポーツ・サッカー専門の18メディアがJリーグ全56クラブのスタッフや選手へインタビューし、リーグの再開やクラブへの思いを紹介する企画を行っている。

SHUKYU Magazineは、北海道コンサドーレ札幌のクリエイティブディレクターで、ファッションブランド「White Mountaineering」のデザイナーである相澤陽介氏に話を聞いた。本誌にもこれまで二度(BODY ISSUEJ.LEAGUE ISSUE)登場している彼は、今どんなことを考えているのだろうか。(この取材は6月22日に行われた)

テキスト:大神崇(SHUKYU)
写真提供:北海道コンサドーレ札幌

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新たな環境での挑戦

ー現在の率直な気持ちを教えてください。

相澤:仕事はもちろん、趣味の一つであるサッカー観戦もストップしてしまったので、Jリーグの再開は本当に心待ちにしていました。昨日も夜中にDAZNでヨーロッパの試合を観ていたので寝不足です。

ー本業であるファッションのお仕事も、本来であればパリのファッションウィークに参加している時期だと思いますが、新型コロナウイルスの影響でリアルな場でのショーは中止されました。

相澤:ファッション業界では、7月9日からパリでバーチャルのファッションウィークが始まります。今まさに、そこで流す映像を制作しているところです。ファッションの世界は、基本的にプロダクトが命でIT技術とのリンクは難しいと言われてきましたが、それが必要とされる今、どのブランドも試行錯誤しています。

ファッションやスポーツ、音楽も新しいコンテンツを構築しなければいけないフェーズに来ています。難しい部分はもちろんありますが、同時にチャンスだとも思っています。ブランドの規模に関係なくフラットになった状況で、メインストリームとして存在する大きなメゾンブランドに対してどう挑んでいこう、というのが今の気持ちですね。そういう意味で、リヴァプールでプレーする南野選手には肩入れしてしまいます。ものすごく大きなところに日本人として挑んでいく感覚は、共感するところがあります。

ー今回は新しい挑戦になりそうですね。

相澤:楽しみな反面、実際にやってみるとものすごく大変です。普段、パリのファッションウィークでやっているランウェイと比べても、予算がかかってしまいました。ただ、今回のように限られた環境でショーを行う場合、身近なものだけで作っても印象には残りません。ユーティリティプレーヤーになってしまうとつまらないので、自分にしかないストロングポイントをどうアピールするかが勝負だと思っています。

日程ポスターグラフィック

クリエイティブディレクターとしての仕事

ーコンサドーレのクリエイティブディレクターに就任して2年目ですが、この1年を振り返っていただけますか。

相澤:あっという間でしたね。準備期間も含めたら3年目という感じですが、運営を含めたサッカークラブの全体像がはっきりと見えていないので、まだまだ実現できていないことの方が多いです。すぐに結果が出るものではないとはわかっていましたが、知らなければいけないことは増えている気がします。

今までは、ファン目線で外野から「ああすればいい、こうすればいい」と簡単に意見を言えましたが、実際に関わってみて、そんなに簡単ではないことに気がつきました。ただ、外部から関わっている人間としての視点も忘れてはいけないと思っています。あと、ただクールにやるのではなく熱くやりたいと思っていたので、クラブを理解するために選手と交流を深めたり、一歩引いた状態で物事を見ないように心がけています。自分のプロフィールにコンサドーレでやっていることを胸を張って言えるようになりたいですね。

ー関わっていく中で、変化は感じていますか。

相澤:いろんな人の声を聞く中で、コンサドーレの見られ方は変わってきていると思います。先日、他のクラブに所属した選手から「コンサドーレが格好良く見えるから入りたいと言っている若手選手が多いよ」という話を聞いたときは嬉しかったですね。もちろん、ミシャさんや運営も含めたチーム全体が良いからではありますが、そこにプラスアルファで自分の価値も付けられればと思っています。

Jリーグとファッションは、昔からリンクしています。カズさん(三浦知良選手)を筆頭に、Jリーガーはファッションが好きですよね。部活の延長線上ではなく、ファッション性を持ったチームでプレーすることは、選手のモチベーションになり、サポーターの獲得にもつながります。

ークリエイションする際に、サポーターなど受け手のリアクションがモチベーションにつながることはありますか。

相澤:もちろんあります。例えば、2019シーズンに青森山田高校から加入した檀崎竜孔選手には、高校時代からのファンがたくさんいて、彼をきっかけにコンサドーレのサポーターになった人もいます。まだポスターで彼を起用したことはありませんが、使うことになった際には、ただ格好良いだけでなく、彼の人間性が現れるような瞬間を使うことで、サポーターにメッセージが届けばと思っています。

選手名鑑に載っている選手の正面の顔写真だけでは、選手が実際にどんなテンションでいるのか伝わりづらいですよね。なので、アウトプットする際には選手がどういう立ち位置にいるのか、サポーターが共感できるようなものを作っていきたいです。サポーターの方から直接メッセージが来ることもあります。そういった声をもらえることは嬉しいですし、期待に応えていきたいです。

ー現在取り組んでいることを教えてください。

相澤:今一番やらなければいけないのは、グッズの収益をさらに伸ばすことです。コンサドーレはクラブ自体の売上がそこまで大きくないですし、グッズ収益に関してもまだ明確化できていません。そこは僕がやらなければいけない部分だと思っています。ただ、僕個人のマンパワーでできることの限界にもこの1年で気づきました。なので、今はどんな仕組みで動かしていけばいいかを模索中です。ある程度それが回るようになってくると、今までのJリーグにはない取り組みになると思います。参考にしているのは、プレミアリーグの中小規模クラブですね。

第3弾-3

コンサドーレへの思い

ー相澤さんが感じるコンサドーレの魅力を教えてください。

相澤:サポーター、選手、クラブの距離が近いところです。選手がクラブのことを思ったり、クラブがサポーターのことを思ったり、サポーターがクラブのことを思ったり、Jリーグが一番重要視しなくてはならないローカリズムを構成する3つがきちんと線で繋がっているクラブだと思います。クラブと選手がリンクしない、運営側とサポーターがリンクしないことは、Jリーグのクラブにおいてよくあることだと思いますが、コンサドーレは本当の意味で“クラブチーム感”があります。

コンサドーレを応援することは、北海道のサポーターにとって本当の意味でライフワークになっていると思います。なので、自分自身も中途半端に関わることはできないし、関わる以上はライフワークとしてやらなければいけないと思っています。

ークラブに関わるようになって、Jリーグ自体の見方に変化はありましたか。

相澤:スポーツ全般に言えることだと思いますが、特にサッカーは世界共通なので、自分が応援しているチームが勝ち進むと、もしかしたら世界のトップチームと戦う可能性もありますよね。野々村さんが「自分たちの見たことのない景色」とよく口にするのは、「そこまで先をイメージしていい」ということだと思っています。そういう意味で、Jリーグは夢を見せてくれる存在です。

たぶん、僕はコンサドーレの中で一番ルヴァンカップの決勝(2019年)を観ていると思います。10分おきの解説ができるくらいです(笑)。コンサドーレにとって、あの決勝はすごく大きい出来事でした。関わっている期間が短いので生意気なことは言えませんが、あの時のサポーターの熱量は普段札幌ドームに集まる熱量とは全く違うものでした。J2時代やお客さんが集まらなかった時代を乗り越えて、タイトルを取れるかもしれないというところまで来たという熱量を間近で感じて、忘れられない経験になりました。

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新しい観戦スタイル

ーJリーグをもっと面白くするために、相澤さんの中で考えていることはありますか。

相澤:憶測のレベルに過ぎませんが、先日デジタル作品を作っているアーティストの知人といろんな視点で試合観戦ができたら面白くなるんじゃないか、という話をしました。従来の試合映像は、メディアを通して一つの完成形として私たちの元へ届けられます。もしそれが体験レベルのエンターテインメントになれば、すごく面白いですよね。

1993年のJリーグ開幕当初から、僕らのサッカーの楽しみ方に大きな変化は起きていません。ルヴァンカップの決勝を何度も観ていると、「もっといろんな角度から見てみたい」という気持ちが芽生えてきました。日本のテクノロジーを使って、新しい観戦方法の先駆けにJリーグがなるといいですよね。ある選手の目線だけで作られた90分の映像があれば、すごく面白い画になると思いますし、一週間の楽しみが増えます。個人的にはサイドバックの視点が気になります。ちょっとマニアックすぎるかな(笑)。今後は、サッカーがただの鑑賞物から、もっと中に入り込んだものに変化していくと思います。

ーリモートマッチ(無観客試合)に関してはどう思いますか。

相澤:再開後のブンデスリーガでは、ホームゲームの勝率が半分に下がりましたよね。リモートだと、ホームアウェイに関係なく画面越しに応援を届けることができます。ありがたいことにコンサドーレのリモートマッチは2試合ともアウェイゲームなので、自分たちの応援が画面越しに伝わる可能性を信じることができます。ホームスタジアムで肩を組みながら歌っていた応援を、画面越しに伝えることができるかもしれません。あらゆる業界において世界中がフラットになった今、その中で何ができるかは各々のイマジネーションに委ねられています。

ー今シーズンのコンサドーレに期待することをお聞かせください。

相澤:僕個人の印象ですが、彼らはこの日程の中でも、変わらずタイトルを取る意気込みで準備しています。ミシャさんを筆頭に、北海道コンサドーレ札幌というクラブが北海道の夢と希望を背負っていることを理解しているので、ただなんとなくJリーグ再開を迎えているような感じはしません。例え良い結果が出なくても、今シーズンにかける思いはすごく強く感じます。それが見えるとサポーターも自然と付いてきますし、スポンサーや北海道の企業もコンサドーレと共にいるという意識が強くなると思います。もし今シーズン優勝して、仮の優勝と呼ばれてしまうシーズンかもしれません。そうなったとしてもいろんな積み重ねがこのチームの面白みになっていくと思っています。

昨年のルヴァンカップ決勝で負けたことも運命だと思っています。コンサドーレの理想像はリヴァプールかな。なかなか優勝できないけど、すごく愛されていて強い。そして、優勝した時に喜びを爆発できればいいですね。

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