体験談紹介④

今回、トランスジェンダー男性のいつきさんからご寄稿頂きましたので、掲載いたします。
署名チームでは、#就活セクシズム にまつわる問題を、一人でも多くの方に知って頂きたいと考えております。体験談は、募集フォームよりお寄せ下さい。


通称名いつきと申します。私は女性から男性に性別を移行している途中のトランスジェンダー男性です。戸籍上は女性です。現在は2021年3月に大学を卒業予定です。

自分は、人と関わるのが好きです。人の問題解決を助けるのが好きです。新しいことを学ぶこと、学問に触れることが好きです。

・・・なんですが、心が折れそうです。
なぜかというと、トランスジェンダーであることを告げた上で雇用してくれた先で、人と関わる仕事ができなくなったからです。

経緯としてはこうです。
面接時に自分は(女性の髪型でいうところの)ミディアムショートの髪型で受けました。その時に今後医療にかかって性別移行していきたいトランスジェンダーであることを告げました。そして合格を受けて、バイトとして入社した後、私がメンズの短髪として整えると、自分が能力として他の従業員と比べて劣っているということもあり、見た目のこともマイナスと捉えられ、人前には出せない、という話になりました。
自分がそれは構造的差別ですよね?という指摘をしても、「それが世間のビジネスの”マナー”なので、就業先としては利益のことを考えて判断せざるをえない」という話になりました。
つまり、私は私の性別として尊重されるのではなく、面接時には髪の短い女性として通るからOKという判断だったのです。

内定は承諾した後でしたので、ここでまず働くしかない・・・と覚悟を決めていたのですが、どうしても心が辛くて、今年の1月以来、転職を検討し始めました。
トランスジェンダーである自分が問題なく働けつつ、自分が働きたいと思う職場を探すため就活をしています。
でも、就活をして企業の求人を見る度、性別移行をちゃんとしていない自分が働けるだろうか・・・という不安が拭えません。

なぜかというと、そこにはビジネスマナーの規範があるからです。
実は大学の就活セミナーに殆ど出れていません。
大学でのビジネスマナーセミナーで、女性は化粧をしてパンプスでスカート、男性は足を開いて座って青か紺色のネクタイ、清潔感を与えるためにこざっぱりした短髪で、という表記をみて、それがスタンダードだと教えられる度に、性別移行がちゃんとできていない自分はやはり世間にいらないんだな、と思いを強くしました。
そんな自分が大学の就活センターを利用しても、きっと”ちゃんと”スーツを着てきなさい、と言われてしまうんだろうとずっと思っていました。

だから、昨年の就活シーズンでは、コロナ禍ということもあり、就活のマッチングアプリを利用しました。
備考欄に「性別移行を検討しているトランスジェンダーです」ということを書いていました。
それでもこんなことになり、とても残念です。

自分らしい見た目で、いくつか求人を受けました。今のところ不採用です。
不採用を告げられた際、自分の能力のなさを実感して悔しく思いますが、やはり自分自身がちゃんと性別移行できていないことがとても負担に思いました。
不採用の理由は大抵詳しく告げられません。
自分の不採用の理由に、”見た目がちゃんとしていない”ことの可能性がいつでも入ってしまいます。

自分は、自分のために、ビジネスマナーによるジェンダーの圧力がなくなってほしいです。
でも、もっというと、後輩がこのような目にあってほしくないし、同じ年代の人が「地方だと仕方がない」、「もっと都市部や大企業にいくしかない」、となってしまうのも嫌です。

だから、就活セクシズム自体がなくなってほしいです。
全国の苦しんでいる人達がこれ以上増えないために。


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