ESと地獄の類似点を100文字で述べよ#ニコニコ内定塾#2017年就活編#12h#4/23

「あなたが学生時代に頑張ったことを500字以内で述べなさい」
「私が学生時代頑張ったことは‥」
渋谷ドトールの2階に、春の暖かい光が差し込んでいる。
さっきまで書いていた他社のESを呼び出し、コントロール+シフトで貼り付けると、「字数制限オーバーです」と赤いポップアップが表示された。
岩渕は、深く息を吸ってチェーン店にありがちな天井を見上げ、ため息をつく。
最近、うまく考えられない。なぜかESを書こうと思っても途中でやる気がなくなってしまう。
newspicksの特集を読んだり、友達がフェイスブックでシェアしている、有名な人の就活論を読んでもなぜか自分事として捉えられない。
頭ではわかっている。
自分が得られる内定数はエントリー数×内定率で計算ができる。
内定率は、ちゃんとESを書く、面接対策をするといった事で上げられるかもしれないけど、実際はどうなるかわからない変数だ。
そうだとしたら、自分が内定を取るためには、まず自分でコントロールできるエントリー数を上げるべきだ。
とりあえず、良さそうと思ったらESは出しておく。
それに、通りやすいESの作り方の流れもわかっている。
まずは、その企業の人事だったらと考える。そのためには、その企業の人事が持っている情報をどれだけカバーできるかだ。だから、IR情報や業界研究をして、なるだけその企業の人事と同じ水準で考えられるようにする。
そして、その企業の人事が「こいつはとってもいいと思ったんですよ。なぜなら〜」の理由の部分を埋めていく。
その方法は二つある。一つ目は、その企業の本流として活躍できるか?二つ目は、その企業の本流ではないけど、人材の多様性として必要と思われるか?だ。
例えば、僕が割と単一プロダクトで儲けているメーカーの人事だとしよう。
その企業は儲ける仕組みが出来上がっているので、本流、つまり八割の人間は上司の言ったことをちゃんと行う、オペレーションができる人材が欲しいと思うだろう。それが一つ目のコース。
もう一つのコースは、そうは言ってもこれからもその儲ける仕組みが維持できるか分からない。だから、既存の儲ける仕組みではない、その企業で新しい儲ける仕組みを作れるような、チャレンジ精神があって、今の企業にいないスペシャリティを獲得できそうな人材が必要だ。そう言った色物人材のコース。
ESを出す企業にとって、そのどちらのコースが向いているか、を自分で判断したら、あとはその根拠となりそうな事実を提供する。
「自分は体育会でしっかりやって来たので、言われたことをしっかりと行う責任感があります」
「自分はベンチャーで新規事業を行って来たので、新しいことにチャレンジするマインドがあります」
とか。
もちろん、数字を使ったり、論理構成をしっかりしたりして、より具体的に、本物っぽく書く。
そうすれば、人事側からしたら、内定を出した学生が例え会社で使えなくても社内に対して言い訳ができる。
「あいつは体育会でしっかりやってたって聞いたんで採ってみたんですけどねぇ」
「あいつはベンチャーで新規事業を自分でバリバリやってたって聞いたんで、採ったんですけど‥やっぱ学生レベルの新規事業なんてお遊びでしたねぇ」
ハハっと笑いながら、まるで自分が被害者のように事業部に対して振る舞える。
だから、頭ではやるべきことはわかっているんだ。
けど、やる気がついてこない。
特に今日みたいに天気がいい日は。
世の大人は、自分で考えて、自分で決めろという。
偉そうに。
何か、掴んでいる気がしない。力が入らない。実感がない。
まるで、自分が一滴の水となって、大きな大海に落とされたようだ。
他の多くの一滴と混じって、砕けて、もう元の自分が分からなくなる。
それに、まだ大手のES締め切りは来ていない。
いつまで続くんだ、このだらっと続くぬるま湯の地獄は。