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心理職の就職図鑑


Q:インタビュアー【バッシー 就職図鑑】
A:インタビュイー【Hさん、心理職】


Q「本日は心理職のHさんにお越しいただきました。心理職という仕事についてや就職活動の流れについてインタビューさせていただきます。本日はよろしくお願いします.」

Q「まず,どんな仕事をしているのですか?」


 心理職です。働く領域としては医療・保健、福祉、教育、司法、産業などがありますが、私は医療分野で働いています。資格は臨床心理士と公認心理師を持っています。
 具体的には、私が働いているのは、がんなどの病気の心身の苦痛を和らげる「緩和ケア」という医療を提供する病院に勤務しています。患者さんや家族と話すことを通して、考えを整理したり、気持ちを落ち着ける、これまでとこれからの生き方に思いを馳せる、などの手伝いをしています。

Q「1日の流れを教えてください」


9:00 朝礼
9:05 病棟申し送りに同席
9:30 外来同席、病棟内のラウンド、患者または家族と面談、など
12:00 昼休憩
13:00 院内カンファレンス
13:30 外来同席、病棟内のラウンド、患者または家族と面談、病院職員へのメンタルヘルス面談、関連施設の利用者面談、など
18:00 終業

Q「初任給やボーナス、将来的に所得はどのよう推移をたどりますか?」


 正社員で月給制ですが、時給に換算すると当院での心理職の基本給は最低賃金に近い水準です。これに資格手当・家族手当・皆勤手当・職務手当・通勤手当などが支給されます。
 ボーナスは年2回、夏1.3ヶ月、冬1.7ヶ月分です。定期昇給はありますが年間数千円程度です。将来的にも所得の大幅な増額は見込めません。
 給与に関しては、勤務先によるところが多いと思います。私が勤務している病院は内科系の病院のため、心理職が行う業務に保険点数の加算がありません。一方、精神科病院などは加算がつく(正確には、加算がある業務を行うことができる対象者がいる)ので、多少給与も良いようです。

Q「福利厚生についてはどうですか?」


 資格手当・家族手当・皆勤手当・職務手当・通勤手当などが支給されます。
 女性が多い職場ということもあり、産休・育休の取得率は高いです。早期で復職する人もいますが、大半は1年間の産休・育休の後に復職します。介護休暇・看護休暇なども取得可能です。
 職員が当院を受診した場合、受診費用の半額が半年に1回程度の頻度でまとめて返還されます。
 また、福利厚生とは少し違いますが、受診希望の場合は受付に連絡後、順番が来たら内線で呼び出してもらって受診ができるため、業務の合間に診察を受けることができるため、勤務先で対応可能な病気の場合は、受診のための休みを取る必要がないため非常に便利です。
 更に、私自身が提供する立場のため、自分には非該当ですが、職場のメンタルヘルスの一環として、在職中の職員に関しては心理士によるカウンセリングを無料で受けることができます。

Q「この仕事における良い面とそうでない面をおしえてください」


A:良い面
 良い面は「やりがい」です。勤務先では私のしたいことに対して自由に挑戦させてもらえるため、新しい取り組みを試すこともでき、心理士として様々な可能性を探ることができています。
 老若男女幅広い患者さんと接するため、職務を離れた人生としても様々なことを勉強させてもらえています。多くの価値観に触れ、多くの人生に触れることは、私の人生を実り豊かなものにしてくれるだろうという期待があります。
 勤務先は、正社員が基本ではありますが、希望すれば準社員への変更・準社員から再び正社員に変更することも簡単な点はメリットが大きいと思います。個人的には、将来的に勤務先との契約を維持しつつ別の領域での経験も積みたいと思っているので、正社員・準社員間の壁が薄いことは自身のステップアップのためには有難い仕組みです。
 また、業務とは直接関係がありませんが、病院という場所柄もあり周囲は医師や看護師など専門家がいるため、簡単な健康相談なら休憩時間などに世間話程度に出来るのは有難い限りです。

A:悪い面
 悪い面は、給料が安い、です。心理士として病院に寄与している部分は大きいと思っていますが、給与としてこちらに還元されていないように感じています。「頑張れば給与に反映する」とは言われますが、外来と病棟両方での患者・家族の心のケア、職員の心のケア、院内研修の開催、地域向け勉強会の実施、関連施設での心理業務など、幅広く対応している現状で、これ以上の頑張りを期待されても、という思いが少しあります。
 また、勤務先は心理士が1人だけのため、職務について気軽に相談できる相手がいないという点に心細さがあります。心理職が1人だけの現場で働けいている心理士は多いようですので、これは私に限らず多くの心理士が感じていることだろうと思います。

Q「社内外の研修等や自己研鑽としてやっている、やらなくてはいけやいことなどは何かありますでしょうか?」


 社内では毎月1回程度、医療に限らず様々な領域の外部講師を招いての勉強会が開かれています。また、学研のeラーニングを活用して勉強することもできます。
 社外研修としては、臨床心理士の資格を失効しないためには5年間で定められた研修ポイントを取得する必要があり、そのための研修会やワークショップなどに出席する必要があります。研修ポイントは講師や論文発表などでも付与されますが、多くの心理士は研修会等を中心にポイントを取得していっているのではないでしょうか。なお、当院では、研修にかかる費用について一部助成をしてもらえるので助かっています。
 研修ポイントの必要性に限らず、日々新しい知識や技術を習得するため、積極的に勉強会に参加し、気になる文献などを自発的に読み進めていく必要性があります。

Q「休日は自分の時間としてとれるか?どんなことしていますか?」


 私の勤務先に関して言えば、休日の呼び出しなどは一切ありません。完全に自分のために時間を使うことができます。
休日の過ごし方としては、自宅で家族と一緒に過ごす、研修会に参加する、友人と遊びに行く、子どもを家族に預けて1人で過ごす時間を作る、などしています。泳ぐことが趣味なので、新型コロナ以前はよく1人で泳ぎに行っていました(今は、病院勤務のため少しでもリスクを減らす必要がありプールや友人との会食など一切できていませんが……)。
 私の場合は平日2日の半休と、日曜祝日が休みのため、平日でなければ出来ない細々とした用事などを済ませることができます。そのため、今の勤務形態は非常にありがたいです。

Q「その仕事につくため学生時代にするべきことや必要なことを教えてください」

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