木工職人三代目

滋賀県大津市で木桶工房をしています。noteでは日々手を使いながら考えている事を言葉にしていきたいと考えています。

木工職人三代目

滋賀県大津市で木桶工房をしています。noteでは日々手を使いながら考えている事を言葉にしていきたいと考えています。

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  • 工芸思想:職人が手から手へ繋いで来た哲学

    今まで言語化されて来なかった職人の手から手へ繋いで来た思想とおぼしきものを少しづつ言葉にしていきたいと考えています。

最近の記事

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かんなくずのランプシェード

    • TedxKyoto2014 スピーチ原稿

      私は桶職人です。 ここにひとつ、桶があります。 桶は側板と(この丸い部分ですね)と底板そしてタガ 基本的な桶はこの三つの要素によって成り立っています。 側板をタガが締め付け、底板の張りによって形を成し、 水が入ると余計に木が膨張してしっかりと密着し水を漏らさなくなります。 ではここでタガを外してみましょう! ※木桶のタガを外してバラバラにするというパフォーマンスをする。(時間にして30秒程?)桶がバラバになり木片と底板とタガになる (バラバラになったタ

      • 美術と工芸、作家と職人

        (facebookノートからの転記、未完) 美術と工芸、作家と職人 私的な話になるが自分の今を確認するためにこれを記す。 私は祖父から私で三代続く桶屋の職人の家に生まれた。祖父は京都の老舗たる源に10歳の頃より丁稚として勤め45年ほど奉公したのち独立京都白川に中川木工芸を開いた。60歳で自分で定年を決め、あとを私の父である中川清司に譲り自身はその後、鉋を握ることなく隠居生活をして72歳で人生を閉じた。 その工房は今も父、中川清司が引き継いでいる。中川清司は桶職人としての

        • 制作ノート 転記

          制作ノート 転記 FBノートサービスに終了に伴い移転する。(202104) ホームページの閉鎖に伴い消えてしまう制作ノートをここに転記する。 改めて読み返すとなぜアートを中断して木工に集中したのか、そして戻って来たのかよくわかる。 ここに転記された言葉は、膨大に手書きで書かれたメモのなかで、僅かに活字?テキスト入力されたものである。もう忘れ去られた手書きのメモたちだがまたひょこり顔を出すかもしれない。 その時気が向けばテキスト入力しよう!! 制作ノート JAPANES

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        • 工芸思想:職人が手から手へ繋いで来た哲学
          1本

        記事

          工芸性について 追記

          工芸性について追記 先日、朝日焼の松林さんが言った工芸性と言う言葉ですが、あれから「工芸性」と言う言葉を英語で「工芸性」をわかりやすく表現するにはどんな言葉になるかを議論しています。と言っても私は英語が超不得意なんで、的外れのチャチャを入れているだけなんですが、、、 まず出て来たのは craftmanship 確かに想いは伝わります。でもこれではクラフトマンに限った言葉になるのではないか?と考えました。 Crafts_sense craftsment craftsmean

          工芸性について 追記

          工芸の工芸性とは何か、

          私が参加している工芸工房の集まるグループので工房についてよくディスカッションをします。 そこで語られたなかで、(確か朝日焼の松林氏の発言) 工芸の工芸性という言葉がでてきました。これはいい表現だなぁと思いました。 工芸の持つ魅力を工芸として語ると殻に閉じこもると考えていたからです。 しかし、工芸の持つ工芸性と言う言葉であれば、工業の持つ工芸性とかデザインの工芸性、アートの工芸性、あるいは生活の工芸性とか人間の持つ工芸性など様々な所に散らばっている工芸性と言う事を語れるからです

          工芸の工芸性とは何か、

          原稿②

          自己紹介・工房紹介  はじめまして中川木工芸 比良工房を主宰しております中川周士と申します。よろしくお願いします。 まず初めに中川木工芸とは木桶や樽の製作技法である結い物を中心に指物、挽物、刳り物などの木工技術を用いておひつやすし桶などの生活用品を製作しています。 中川木工芸はおよそ90年前、私の祖父亀一が丁稚奉公から始まります。丁稚奉公とは昔の職人修行の中で広く用いられていたシステムで子供のころから奉公先の工房に住み込み生活を共にすることで早くから技術を身に付けより長く職

          工芸思想

          私も今年で50歳になりました。 半世紀も生きていることになります。 伝統工芸の世界はその50年でももの凄く変化していると考えています。 90年ほど前 柳宗悦らが憂いた消え行く手仕事によるものづくり 民藝運動 それは日本やアジアが近代化し、 工業製品が普及どんどんと手仕事で作られていた民具、民藝品などが消えていった。 その流れに少しでも杭を打ち込もうとしたのが民藝運動だったのではないか? しかし工業化の流れは加速し、私たちの身の回りのものはあらゆるところで工

          前近代的的な木桶製作技術が未来を作る

          私は木桶職人ですが、指物も作ります。 一般的に木桶は丸いもの(最近は丸くないものも作ってますが)指物は四角なものです。 このふたつは形だけの違いだけではなく、製作する考え方が全く違います。 指物は完成品から、部品へ 完成した時の寸法、ホゾ組など完璧に決めてからものづくりを始めます。 全体の設計図があって、それに合わせて部品を正確に必要枚数作らなくてはなりません。 一方木桶は部品から完成品 もちろんこんなものを作るという完成形はありますが、同じ桶を作っても

          前近代的的な木桶製作技術が未来を作る

          講演原稿 「木桶の過去、未来、現在」

          自己紹介・工房紹介  はじめまして中川木工芸 比良工房を主宰しております中川周士と申します。よろしくお願いします。 まず初めに中川木工芸とは木桶や樽の製作技法である結い物を中心に指物、挽物、刳り物などの木工技術を用いておひつやすし桶などの生活用品を製作しています。 中川木工芸はおよそ90年前、私の祖父亀一が丁稚奉公から始まります。丁稚奉公とは昔の職人修行の中で広く用いられていたシステムで子供のころから奉公先の工房に住み込み生活を共にすることで早くから技術を身に付けより長く職

          講演原稿 「木桶の過去、未来、現在」

          #make_my_studio

          私は木工職人で、スタッフも6人居る工房を運営しているので二階建ての立派な工房を持っているんですが、自宅のキッチン横の小さなスペースを眺めていて、ふと、ここに小さなスタジオを作ってみようと思い立ちました! ガラスサッシ横の角の90センチほどのスペースです。都合よく床は土間コンクリート、コンセントまであります。壁は石膏ボードなのは残念ですが、なかなかのスペースになりそうです。 ここはスタッフが使うこともない自分だけのスペースです。(本工房はスタッフで共有しながら使っています)

          依り代

          木桶を丸太から作る時、割りガマという道具で木を割って作ります。木は自然の素材であるので曲がってたり、節(枝の丸太の内側にある部分)があったりします。真っ直ぐに割れる所は木桶の材料に、曲がって割れたりするところは木桶には使えない、昔は焚き物になっていました。 しかしその曲がりは木の成長の中で何十年、何百年の時間をかけて出来上がったものです。そこには自然界の変化、気候の変化、突然の落雷や台風で、折れたり曲がっ所を治して成長して来た丸太の生命力など、人為的にはなかなか作ることが出

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          もう一つの工芸未来派

          もう一つの工芸未来派

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          銀座和光で展覧会を開催しています。

          銀座和光で展覧会を開催しています。

          工芸思想 職人が手から手へ繋いで来た言語ではない哲学

          ① 職人の仕事は観て盗め、体で覚えろ! 私は家業である木桶職人の家の三代目として生まれました。 私が木桶づくりの仕事の修業を始めたころ、父や祖父から仕事の手ほどきを受けた記憶はほとんどありませんでした。 「仕事は見て盗め、体で覚えろ!」が基本でした。 父や祖父の仕事をしている姿を見て同じような動きが出来るようになる様に毎日、毎日同じことの繰り返し、繰り返し仕事をする中で自然と身に付いていくものだと考えていました。 そこでは頭で考えたりすることは不要なものとされていました。

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