牛魔王
学生の時、短期間ですが、北海道の酪農家の家にホームステイしたことがあります。牛の世話をしましたよ。
牛というのはおとなしい動物で、ほとんどの牛は私に無関心でした。ただ一頭、私が近づくたびに威嚇してくる牛がいました。牛は人間よりも大きいです。威嚇してくると本当に怖いです。私は心の中で「牛魔王」と呼んで恐れていました。
私はこう考えました。きっとあの牛は牧場のボスで、見慣れない私を警戒して、群れを守っているのだろう。
そう話したら、牧場の人に笑われました。
実際は逆なのだそうです。
牛といえど、群れの中には厳格な順位があるのだそうです。私を威嚇してくる牛は、実は一番順位の低い牛なんだそうです。一番下だから、新しく入ってきた私を威嚇して、自分の方が上だと主張しているのだそうです。
人間もそうですね。新入りにゲスく威張ってくるのは、だいたい、そのコミュニティーで一番下に見られている人です。
イラスト by freehand