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ブランディングの科学 ーこれまでのマーケティング理論は、大間違いだった!?

大学院講義振り返り 第9回
マーケティング 第3回

 あと半年で大学院も卒業予定なので、棚卸しを兼ねてこれまでに学んだことを少しずつアウトプットしております。

 需要があるのかないのか、いまだわからないまま3周目に突入です。

著者紹介
バイロン・シャープ

https://www.campaignjapan.com/article/バイロン・シャープ氏が語る-covid-19への最も賢明な対応が-広告出稿停止-だった理由/464295

南オーストラリア大学アレンバーグ・バス研究所のマーケティングサイエンス教授兼ディレクター。前著『ブランディングの科学』は2013年、アドエイジ誌の読者が選ぶマーケティング・ブック・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。
これまでに100報を超える学術論文を発表。
専門誌5誌の編集委員を務めている。
近年は、ジェリー・ウインド教授とともにウォートンビジネススクールで広告の法則について講義を行い、2009年と2013年には、広告の科学的法則を特集したジャーナル・オブ・アドバタイジング・リサーチ誌の特別号の共同編集者を同氏とともに務めた。(↓出典)

この本は、
ここまで紹介してきたマーケティング理論について一気に「ちゃぶ台返し」をする一冊!

https://ameblo.jp/monmotyan/entry-11800913307.html

まず、顧客の購買行動から顧客を
・ロイヤル顧客 
・ブランドスイッチャー 
・ワンタイムバイヤー

に分類します。

自社製品のシェアがライバルの半分
自社製品のロイヤル顧客の割合もライバルの半分
ブランドスイッチャーが売上の3分の2を占めている場合
「同等品質なのに、顧客はライバルより低品質と思っている」
と多くの人は分析して、
「品質の高さを訴求して、ロイヤル顧客を増やそう」
と考え、ライバルとの比較広告を出したりします。

しかし、

これでは売れない 顧客の行動を誤解している

とシャープは言います。

売上=顧客数×購買頻度

英国の洗剤 
パーシル(シェア1位 22%)とサーフ(シェア5位 8%)の比較


出典:https://www.costco.co.jp/For-Business/Persil-Advanced-Gel-Deep-Clean-4L/p/11392
出典:https://www.amazon.com.au/Surf-Laundry-Liquid-Tropical-scent1/dp/B07FQKZWT8

市場シェアが大きなパーシルは、顧客数(市場浸透率)も購買頻度も高いという結果になっています。

顧客数が少ないと購買頻度も低いパターンはさまざまな分野で観察されます。

これを 

ダブル・ジョバディの法則(二重処罰)

といいます。

ブランド成功のカギは、何はさておき、顧客数を増やすことです。

「既存顧客を大切にせよ。新規顧客獲得は既存顧客維持の5倍の費用がかかる」というライクヘルドの考え方(著書「顧客ロイヤリティのマネジメント」)をシャープは「間違いだ」と指摘します。

大雑把に、米国の車の売上は新規顧客50%、既存顧客50%で、
頑張って既存客の離反をゼロにすると、既存客の売上は倍となり、
新規客とあわせて全社売上は1.5倍に増加します。
(シェア2%の場合、3%になる)

だが、顧客離反率を下げるのはきわめて難しいです。
※米国で顧客離反率が25%以下のブランドは1社もない
※市場シェアが大きいと顧客離反率は低い

しかし、
市場全体を見るとまったく違う景色が見えます。
全購入者の半分が他社に乗り替えます。
        ↓
最大50%の市場シェアの拡大が可能で、シェア2%の場合

可能性は50倍に!

成長するカギは、新規顧客獲得

コトラーは「マスマーケティングは時代遅れだ」と主張
            ↓
消費者の購買行動を研究すると、むしろマスマーケティングは重要

コーク(コカ・コーラ)購入者を分析すると過半数は年0〜2本飲む人です。
コークの購入者のほとんどはライトユーザーであるということです。
パレート法則では「上位20%の購買客が売上の80%を占める」といわれますが、実際には売上の50%しか占めません。

図の購買頻度は「負の二項分布(negative binomial distribution : NBD)」という分布で、あらゆる商品の購買頻度は、このNBDディリクレモデル
表現できます。

さらに消費者を長期間調査すると、ヘビーユーザーがライトユーザーになったり、逆にライトユーザーがヘビーユーザーになることも多いということです。

あらゆるブランドで、平均状態に回帰する

購買行動適正化の法則

が起こっています。

ライトユーザーからノンユーザーまでを広く攻めれば、成功の可能性が高まるのです。

「差別化して特定セグメントの顧客層をターゲットに狙え」という考えに対しても、シャープは「間違いだ!」と言います。

飲料ブランドはどこも、最も売れているコークと7割の顧客基盤を共有しています。
どんな製品カテゴリーでも、顧客基盤の多くを最大シェアのブランドと共有していて、購買重複の法則と呼ばれます。

「ブランド重複は絶対ダメ」と思いがちですが、実はまったく問題ありません。

似たような自社商品を、同じ顧客にどんどん売れ!

ということです。

出典:https://ymall.jp/store/drinkshop/4283/
出典:https://motor-fan.jp/stylewagon/article/22198/

アップルとハーレーダビッドソンは熱狂的顧客が多いと思われているが、実際は違います!

パソコンの反復購買率
デル(シェア1位) 71%  HP 52%  アップル 55%
※健闘しているが他社パソコンと互換性がないことで説明できる

ハーレーライダーは全体の10%だが、売上は全体の3.5%
※実際には40%が不満足で、車庫に入れっぱなし
反復購買率は33%で顧客ロイヤリティ指数としては平均値

実は売上で最重要なのは、

ブランドのことをあまり深く考えずに買い、売上に大きく貢献してくれる人たち

なのです。

差別化はブランドで必要不可欠と思われているが、実際に調査すると、消費者は企業が仕掛ける差別化にほとんど気づいていません。

現実には大成功したアップルでさえ、
ユーザーの77%は、「他ブランドと異なる」「ユニーク」とは認識しておらず
差別化には成功していません。

注力すべきは、消費者の購買を促す仕組みづくり=ブランディングです。

差別化は長くは続かないが、独自性があるブランディングは一度構築すれば長続きします。

ブランド・ロイヤリティを育てるには、消費者にブランドをすぐわかるように目立たせることです。

出典:https://www.mcdonalds.co.jp
出典:https://www.nike.com/jp/

ブランディングで顧客を獲得するために重要なことは、

・メンタル・アベイラビリティ

(購入するときにブランドが思い出されやすいこと、ブランド連想されやすいこと、プレファランスと同義)

・フィジカル・アベイラビリティ

(消費者がブランドを見つけて買いやすいこと、「確率思考の戦略論」にある配荷と同義)

マーケティングは常に進化しています。

・サブスクリプション・モデル
顧客と直接つながって顧客を可視化して長期的な関係構築を目指す
・カスタマーサクセス
離脱最少化を目指す

ポイント
差別化よりも、多くの人にリーチし、目立って好かれることが大事

論点
1.シャープはこれまでのマーケティングの考え方とまったく逆のことを言っているがどちらが正しいのか?
2.既存客の維持と新規客の獲得のバランスはどうとればいいか?
3.進化し続けるマーケティングはどうなっていくのか?

ぜひ皆さんのご意見をコメントにお書きください。
どうぞよろしくお願いします。

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