『欲望する「ことば」』

マーケティング定番書籍】その2
『欲望する「ことば」』

 著者:嶋浩一郎 松井剛
 出版社:集英社(集英社新書)
 第1刷:2017年12月20日

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1. 本書を読んだ背景

2011年2月、一般社団法人メディア事業開発会議(mediverse)のプランニング講座で本書の著者に一人、嶋浩一郎さん(当時 博報堂ケトル社長)の講義を受けました。
それ以前から私がサポートさせていただいていたミュージックソムリエ協会が運営している「CDショップ大賞」は、「本屋大賞」をモデルにしていて、その「本屋大賞」を立ち上げられたのが嶋さんだったわけです。
また私は、日本消費者行動研究学会の学術会員なんですが、近年のカンファレンスでもう一人の著者、一橋大学教授の松井剛さんが精力的に発表されており、そのテーマが私の専門分野(文化マーケティング)と一致したりします。
そして、本書の発売イベント(著者お二人の対談)が、嶋さん運営の「本屋B&B」で開催され、私も参加した次第です。

2. どんな人に向いているのか?

リサーチャーに限らず、マーケター、それもコトバを重視する職種(もちろんクリエイティブを含みます)、もしくはそのような感性をお持ちの方でしょうか。
そして、どんな業種・職種であれ、世の中の変化の兆候を少しでも早く察知し言語化したい人です。

3. 本書のポイント

3-1. アカデミアの松井さんが学術の視座から、広告代理店側の嶋さんが実務の視座から、一章ごとに解説という構成はとてもわかりやすいです。

3-2. マーケティングリサーチの世界で“バスワード”のようになっている感のある「インサイト」。その「インサイト」をワン・ワードで表現すると、本書のテーマである「社会記号」(人々の欲望の暗黙知 by 嶋さん)とも表現でき、それを「発見」し「言語化」しているのは雑誌の編集者。ということを(私を含めた)マーケター、リサーチャーの皆さんはまず認めた方がいいですよ(笑
要は(私が言いたいのは)、調査とかの堅苦しい"鎧"を一旦、脱いでみたら? ということです。

3-3. 「社会記号」の普及・浸透はマスコミによるところが大きいのですが、どうしても"横並びのサラリーマン意識"による影響を受けることです(私の個人的感覚では『日経MJ』一面で大きく特集される内容は、既に2.5%のイノベータから13.5%のアーリーアダプタに移行した後の事象、みたいな・・)。

4. 感想

最終の第六章の嶋さんと松井さんの対談で、嶋さんが従来は若者中心だったゲームセンターに高齢者のお客が増えている現象から、背景ニーズを探った事例を紹介されています。
「最初にそう考えた人はすごいマーケターなのですよ。ニーズがあるから具体的な企画が出てきてヒットするわけですが、そもそも来店の目的をお客さんがことばで明確に説明してくれるわけじゃない」(182-183ページより)

これは偶然だとは思うのですが、冒頭に書きました2011年2月のmediverseのプランニング講座で、嶋さんからの課題で私の提出したシートがこちら(↓)です。

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さらに、嶋さんからいただいた寸評とアドバイスです(文字が小さくて恐縮です・・)。

mediverseワークショップ嶋さんコメント

2011年当時(私はマーケティングコンサル会社のプランナー)、地元のJR東大宮駅前にたむろするシニア、ゲームセンターの入り口によく佇んでした吉本隆明に似た高齢者の方。
私が提案したのは、喫茶店や雀荘でしたが、その後、ゲームセンターで高齢者という現象が顕在化し、マーケティング展開につなった事例があった、ということを知ったのは私にとって僥倖でした。

最後に、嶋さんのこの一言は私にとって大いなる励ましです。

「グーグルのチーフ・エコノミストは「二一世紀のもっともセクシーな職業は欲望と欲望を結びつける統計学者だ」と言いました。しかし、私はこう思います。「潜在的な欲望を言語化できるひと」、つまり社会記号を見つけることができる人こそセクシーなのではないかと。

以上です

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水琴窟



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