Make with Internetー世界最先端C2M工場ーアリババの犀牛智造について徹底解析
9月16日、アリババは2017年から極秘で進んだプロジェクトーC2M工場ー犀牛智造を発表しました。
C2M(Customer to Manufactory)という言葉最近よく見かけるようになりまして、需要を元に製造、スピーディ、小口、多種類の製造の特徴を有して、それらの特徴を実現するため、ビッグデータを活用して需要の分析や予測、AI、IOT、MESなどの技術を活用して柔軟かつスマートな製造を行われると理論上一般的に認識されていますが、具体的にどう実践されるか実例がまだ少ないです。犀牛智造が公開された情報の中に具体的数値や実現する手法などのディテールも含めているので、とても貴重な勉強資料となります。
散らばった情報を整理して、犀牛智造の特徴や能力を紹介して、アリババの狙いと犀牛智造は製造業、小売業にどんな影響を与えて、どんな未来を期待できるかを分析させていただければと思います。
新製造と名乗る製造のインフラ
犀牛智造最初にチャレンジしたのは服の生産です。OEMメーカーとして、淘宝で出店している中小のファッションブランドから代行生産のオーダーを受けて対応しています。下記の「Fano Studios」という店は犀牛智造を利用してた一社です。
Fano studiosの淘宝の店舗ページ
ご覧の通り、この店舗はほぼ1、2週間隔で新商品をリリースして、ものすごい商品数を持ちながら、ほとんどの商品の販売数は数十から数百にしかないです。このような店舗にとって犀牛智造は最も理想なパートナーです。
犀牛智造の中身は2つ製品で構成されています。一つはサプラインチェインの管理プラットフォーム、もう一つは犀牛智造工場というスマート工場。
サプラインチェインの管理プラットフォームは淘宝のシステムとシームレスで連携しています。Fanoの場合、自社の淘宝サイト上のクリック率、購入率、在庫などのデータを基づいてリピート仕入れのアドバイスや自動化ができます。また淘宝が蓄積したビッグデータを基づいて流行の予測機能や、3Dシミュレーターを活用した新商品の企画、デザインを行えます。さらに必要な原料の注文、服の生産のオーダー管理までワンストップでサプラインチェインの管理を行える。
そして、出されたオーダーが犀牛智造の工場が対応します。従来注文可能な最小口数は業界の平均数1000着から100着に、最短納期は2週間から1週間に短縮することが可能となります。犀牛智造を頼めば、Fano studios見たいな中小のファッションブランドは在庫リスクを最低限に抑えられ、Zaraのような大手ブランド並の品質とコストで服の調達ができるようになります。
利用されるクライアントに以前持ってない能力を”付与”してあげて、グレードアップさせて、新時代の製造のインフラを提供することは犀牛智造の狙いです。
柔軟なスマート製造とは
こちらは犀牛智造の内部一角の風景です。想像してた高度な自動化された工場のように、ロボットアームが充満されて、人影をあまり見かけないイメージと少し違って、結構人がいます。服の生産は従来から労働密集型で、いきなり無人にするのが難しいし、前述のように、犀牛智造は大量生産でコストを最低限に抑えることより、小口、スピーディ、多様な商品の同時生産するニーズをどう答えることは犀牛智造が注目するポイントです。
犀牛智造のいろいろの能力の中に一番感心するところは柔軟なスマート製造能力です。この表現はちょっと抽象的かもしれないが、プログラミング可能な生産ラインに言い換えればより理解しやすいかもしれません。
従来のスマート工場は生産の自動化を実現するため、予め順送りの生産のプロセスを設計して、その設計に従って物理の設備を配置して生産ラインを構築します。効率よく単一製品の大量生産に向いていますが、違う製品の生産に切り替えるのは大変になります。
犀牛智造は生産の設備などの物理要素を積み木のようにパーツ化にして、ソフトウェア上でプロセスを定義して、必要なパーツを組み合わせして、同じ空間内で見えない無数の生産ラインが定義され、同時に稼働できます。この能力を持つ犀牛智造は今までのスマート工場と一線を画すものとなります。この能力を以下の技術要素に依存しています。
1.全ての物を(布一枚まで)RFIDタグによりID化される
2.全ての物や人の状態や位置を検知できる
3.必要な物を必要とされる人の元に自動で運搬するシステム
従来のコンベア、AGE(自動運搬車)以外、より効率よく物を運搬するため、犀牛智造は独自の「クモの巣吊り型運搬システム」を発明し、特許を取得しました。
ジーパンが北京ダックのように吊られて移動している
4.AIにより学習能力あるMESシステム
5.プロセスの可視化とプログラミング能力
タッチパネルで生産工程を定義する
それらの技術要素は有機的な連携により、犀牛智造は柔軟なスマート製造の一つの実例として出来上がっています。そして生産に関わる全ての要素、人、進行状況をリアルタイムでことごとく記録され、そのログ情報をAIに学習させて、効率の向上を日々進化し続けています。
犀牛智造の経緯と展望
2016年アリババの前会長馬雲は公演で5つ新しいコンセプトを発表しました(新小売、新製造、新金融、新テクノロジー、新エネルギ)。そして、新製造について”5分間で2000件違う商品を生産する”という目標を提出しました。その翌年、犀牛智造が誕生し、新製造はコンセプトから実のプロジェクトとして着地、そして3年後の今、犀牛智造はこの目標を達成できているか不明だが、重要なマイルストンをクリアしただろうと思われ、こういう形で公開されました。
アリババは今までECと金融、2つの軸でサービスの細分化を重なって、膨大で複雑なエコシステムを作り上げましたが(※1)、どちらも飽和状態となり、それ以上シェアの拡大が難しくなっています。既存サービスの規模拡大より最適化するニーズが高まって、そして別の新しい分野の突破口を見つけるため、この10年間、アリババは"重資産"、”インフラ”への投資にすごく力を入れてきました。
例えば、ITのインフラであるAli Cloud、物流のインフラである菜鳥物流、テクノロジー育成機構の達磨院、金融のインフラであるアント与信、网商銀行・・・アリババは自社のサービスの最適化にも欠かせない、しかも社会全体が共通で需要とされる情報の基礎能力を提供するサービスに注力して、いろんな成果を上げてきました。
C2Mのコンセプトが注目されてきた今、アリババはユーザ(C)と工場(M)を直接結びつくプラットフォーム「淘宝特価」をリリースした後(※2)、自ら製造業に切り込むのは自然な流れだと思います。
犀牛智造のターゲットユーザはFano Studiosみたいな成長中の中小ファッションブランドであります。彼らのマーケティング手法はいち早く流行な要素を捉え、頻繁に新商品を企画して、絶えずにSNSやライブ配信で新商品の披露をやり続けます。インプレションを稼いながらユーザーとのコミュニケーションの場をたくさん作って、コアなファンをどんどん増やしていく狙いです。またたくさんの新商品がリリースできたら、その中ヒット商品が現れる確率も高くなります。
このような手法でビジネスをしているFano studiosにとって、少数かつ多種類のオーダーをスピーディで対応できて、安定した品質を保った上で、合理な価格で生産代行を行える工場が求められています。しかし現実にこういった要求は工場の立場から見ると矛盾して不合理です。全ての要求を完璧に対応するのは、現在の技術と生産方式ではほぼ不可能で、どこかを妥協しなければいけないです。こういった需要と供給のミスマッチを解消するのは犀牛智造の狙いです。
犀牛智造の工場は現在1号を公開されまして、2号も建設中という噂がありますが、これから自分達のシェアをどんどん拡大していくのは本来の目的ではないと思います。今作った1号の工場は試験的なもので、このモデル工場は市場のニーズをきちんと答えられた上で自身でも利益を出すことができたら試験が成功する徴として、その成果を共有して、1000個の既存工場の改造に取り込むと犀牛智造のCEOがインタビューで表明しました。
業界への影響
もし犀牛智造のCEOが語ったように、3年後1000個の工場が改造されて、今の犀牛智造の1000個のコピーができたとしたら、ファッション業界はどう変わるかを想像してみましょう。
個人ブランドをつくるハードルがかつてない低くなり、工場の数の10倍以上の新しいブランドが生まれるだろうと思います。例えば、一人デザイン専門の大学生が卒業しまして、もう一人のTiktokでライブ配信をやっている友達と合流して、両親から10万円の資金援助をもらって、淘宝に店を出して起業します。犀牛智造のシステムを使って流行や市場の動向を分析して、ジャンル、ブランドイメージ、価格帯、ターゲット層を決めて、また犀牛智造のシステム上でデザインを行い、必要な原料も購入し、最後に犀牛智造の1000個のコピーの中一社を選んで、生産のオーダーを出して、後は出来上がりを待つだけ。字面通り”Made in Internet”だ。注文口数を最小限に絞られ、在庫のリスクを最小限に抑えられて、このような悲劇が免れます。そしてこれらの個人ブランドはFano studiosと同様にオンラインでユーザと密着して、それぞれにプライベートのサイクル内でトラフィックと売り上げを獲得しています。
もし3~5年後本当にこのような流れになって来たら、一番衝撃を受けるのはファストファッションの大手ーZaraやユニクロ達ではないかと思います。無数の個人や中小ブランドは犀牛智造が提供された製造のインフラの力を借りて、品質やコスト面は大手ファストブランドと大差がないと思います。それに流行への反応はむしろより早いし、それぞれで数の多い個性がある商品を提供できて、そして一番強いのはやはりSNSを通してユーザとの密なつながりです。そうなったら、コアなユーザを除き、今まで何となく大手ファストブランドで服を買っている若者は徐々にこういう個人や中小ブランドに流れでしまうではないかと思います。
もちろん、これは個人的根拠もない推測ですし、そういった個人や中小ブランドからの脅威がまだまだ先のことだと思われますが、アパレル業界の大量廃棄の問題が環境保護の意識が高まる昨今、より厳しくみられるでしょう。そして、C2Mのコンセプトも技術要素も成熟してきて、犀牛智造が新しい製造の兆しを示してくれた今、大手ブランドが今一度従来のやり方を根本的に見直すタイミングではないかと思います。
※1:アリババグループのエコシステムについて、こちらの連載で紹介していますので、興味がある方ぜひ合わせて読んでいただけたらと思います。
※2:淘宝特価について、別途新小売の連載で紹介する予定です。
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