小説『戦場のイエスタデイ』を書いた訳
Amazonから、電子書籍で『戦場のイエスタデイ』という小説を出しました。ウクライナで起こっている戦争を見て、以前、ユーゴスラヴィアの内戦を取材した時のことを思い出したからです。「少し前まで一つの国の中で一緒に暮らしていた、言語的にも文化的にも非常に近い人々が殺し合う」という点で、非常に似た状況だからです。
この本の冒頭に、以下のような序文を書きました。
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ウクライナ危機に際して
二〇二二年二月二四日、ロシア軍が国境を越えウクライナに侵攻して攻撃を開始、民間人にも大勢の死傷者を出し、世界中から非難を浴びた。
徴兵され、侵攻作戦に投入されたロシアの兵士たちには二十歳前後の若者も多い。ウクライナ側が公開したロシア軍捕虜の映像には、「自分は訓練だと聞いてここに連れて来られた。だまされた」と故郷の母親に電話している兵士のものもあった。
一方ウクライナでは、十八歳から六十歳までの男性は政府によって出国が禁止され、祖国防衛の任務に就(つ)くよう求められている。
外国在住のウクライナ人男性たちも「家族と自分の故郷を守るために帰国して戦闘に参加する」とインタビューに答えている姿が日本のテレビでも報じられた。
そうした姿を見ていて、かつてユーゴスラヴィア内戦を取材に行った際、現地で出会った人たちのことを思い出した。
旧ユーゴにはセルビア人、クロアチア人、スロヴェニア人、ムスリム(イスラム教徒)など、さまざまな民族がいたが、各共和国の独立運動が起きる前は、民族の違いなどほとんど気にせず暮らしていて、違う民族同士で結婚したカップルも多かった。
それはロシアとウクライナでも同様だ。ソ連崩壊前後にロシアとウクライナに取材に行ったが、彼らも当時は仲良く暮らしていたのだ。
では、そんな〝兄弟民族〟と呼んでもよさそうな人たちが、なぜ殺し合うはめになったのか?
それをもう一度考えるために、この小説を書いた。
この物語は、ユーゴ内戦の取材で、僕自身が見たり経験したりしたことをべースにしてはいるが、フィクションを加えた部分もあることをお断りしておきたい。
この作品が読者の皆さんにとって、戦争と平和について考えるきっかけになってくれれば、と願います。
世界に平和を。
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