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最後の福祉国家 序章1
■はじめに
これから、私が「生活モデル」と呼んでいる支援モデルについて説明してゆこうと思います。おそらく数ヶ月にわたることになるかと思いますが、お暇な方はお付き合いいただければ幸いです。
ここ数年、私の研究者としての歩みは、言ってみれば「やるやる詐欺」みたいなもので、私の考えを本にすると宣言しては、手が止まるということを繰り返してきました。その過程で、多くの方にご迷惑をおかけしたり、失望させたりしてきたように思います。その罪滅ぼしとして、私自身のもう一つ意味のある仕事をしなければならないという思いをひとまず形にするものとして、少し講義・講演風の文体で、文章を書き連ねることにしました。
おそらく多くの方にとって、「生活モデル」という言葉自体馴染みがあるものではないと思います。ひとまず対人支援の一つの型といってよいのですが、一つの明確な特徴があります。それは、支援の究極的な目標を具体的な形で設定しないところにあります。もう少し正確にいいますと、支援の目標が具体的な形を取り得ない概念として設定されているということです。例えば、対人支援の目標として、幸福、ウェルビーイング、QOL、成長、尊厳などを設定する場合がこれです。この場合、目標が概念の性質上具体的な形をとり得ませんので、今支援としてすべきことを、目標から逆算して導くことが原理的にできないわけです。このような支援は、課題を設定して解決することが得意な医師のような人びとが概して苦手としてきたものでもあります。
従来から、このような目標のない条件下での対人支援はいろいろと行われてきました。その典型が「よりそい」と呼ばれるような行為です。これを単に「付き合う」とか「伴走」という人もありますが、いずれにしても、やっていることの中核は、当事者と一緒にいる(横にいる)ということです。福祉の現場を知る人にとっては、このような行為が価値があるということを実感としてご存知だと思います。ただ、この「よりそい」がなぜ重要なのかを説明することは難しい。このため、従来から政策などの直接的な対象となることもありませんでした。
いずれ詳述しますが、「よりそい」は「生活モデル」の中核の一つです。その意味では、「生活モデル」の解説は、「よりそい」支援の言語化、とりわけ政策言語化を含んでいます。このようなことに興味のある方は、以後連載にお付き合いいただければ幸いです。
----付録----
ここからは個人的な内容になります。ほとんど需要はないと思いますが、私のパーソナルヒストリーにご興味のある方は引き続きご覧いただければ幸いです。私は幼少期に母にピアノを強要(?)された経験があり、その結果として、音楽とは切っても切れない人生になりました。最近のことになりますが、私が5才のときに母と離婚した父が他界したり、母が脳梗塞で倒れたりと、自分自身の人生を見つめ直す時間を過ごすことになりました。そうしますとなぜかいろいろな曲ができるのです。業というものはつくづく恐ろしいものです。以後、講義にあわせて少しじずつ自分語りもしようかと思っています。曲については、基本的に陰鬱な内容ばかりで大変恐縮ですが、よろしければご一聴いただければ幸いです。
あの場所へ/ to that place
東日本大震災に際して、私には大きな後悔があります。それは、災害支援の枠組みが完全に時代遅れのもので、個人の生活の破壊への対応がもっぱら金銭補償しかなかったことでした。生活の再建には、カネだけではどうにもならない部分があります。もっといえばここにこそ生活モデルが必要でした。私にとっての心残りは、私の成果が3.11に間に合わなかったこと、また、個人的な不明と怠惰のせいでその後の災害に活かすこともできていないことにあります。この曲は、私にとっては遅まきながら逆襲の決意を込めた曲です。
YouTube版(動画・歌詞字幕付き)
SoundCloud版(音声のみですが音はこちらの方が少しよいです)
あの場所へ/ to that place
すべてが押し流されたあの日
家族も仕事も失い
住む処すらも追われました
そのあとやってきた
黒い服を着た男たちは
大金を持ってきた
5年は遊んで暮らせる金を
私たちはそれを受け取った
かつて私たちの夢を育んだあの場所は
深い草に埋もれ 川のせせらぎとともに
動物たちが鳴き暮らしています
夫は変わった パチンコで溶かした
クラウンを買った ベンツに買い直した
それを見ていた私は彼を
止めることができませんでした
かつて私たちの夢を育んだあの場所は
深い草に埋もれ 川のせせらぎとともに
動物たちが鳴き暮らしています
夫は壊れた 他人を羨んだ
私を置いて旅立った
それを見ていた私は彼を
止めることができませんでした
かつて私たちの夢を育んだあの場所は
深い草に埋もれ 川のせせらぎとともに
動物たちが鳴き暮らしています
lyrics: 1.o (私のことです)
music written by 1.o (powered by Udio)